表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
フィヤマの日々
33/520

魔法

 ……


 畑をぶらり。クマたちを存分に走らせ、南門へと戻ってきた。

 「おう! どうだった? カンイチ。害獣の様子は?」

 詰所から飛び出して迎えてくれたのはハンス。

 「ええ。兎、随分と巣作ってますね。穴だらけでした。結構獲れましたよ。なぁ」

  ”ぉふ!” ”うわふ!”

 ハンターたちの首を撫でる。

 「だろう? 捕まえるのも大変だし、手間賃も安いしなぁ。依頼出ても誰も受けないわ」

 「なるほどの。誰も手を出さぬのなら丁度いいのぉ。クマたちの餌場にぴったりじゃ。良い散歩にもなるしの。そうそう、この辺りの猪、ちいとも逃げぬの……猪、逃げないですね」

 今更ながらに言い直すカンイチ。ハンスも他の隊員の目も温い。

 「普通でいいぞ、普通で。バレてるし」

 「こほん。年相応の……」

 「くっくっく、まぁ、好きにしろ。ああ。ここらの猪は人を舐めてるからなぁ。俺ら武装した者が出ていくと逃げるが、農民や一般人なら向かって来るほどだ」

 「それも狩って良いんですか?」

 「ああ。かまわん、かまわん。かえって助かるわ。肉屋でも高く買ってくれるぞ。鹿も熊もな。魔物の目撃例は今んとこねぇが、あったらそいつも頼むわ。はっはっはっはっは」

 「ええ。勝てそうでしたら」

 

 クマたちの餌の目途がついてほっと胸をなでおろす。こっちに来てから、己もだがクマたちも食う量が増えた。まとまった金が入ったとはいえ目標もある。自給でき、しかも只ならばいうことない。

 折角だからと、色々と情報収集を。

 

 兎などは耳を門、ギルドに出すと小金こがねがもらえるとか、肉は直接肉屋に持って行った方が良いとか、皮の鞣すところを聞いたり。傷薬等ギルドで買うと高いからと”冒険者”御用達の店を聞いたり。

 どの情報も此処にリスト・ギルド長が居ればきっと眉をひそめたに違いないものばかりだ。

 

 鍛冶屋の場所も聞いた。山刀は銃剣にしては少々長い。それに切るための刃物だ。銃剣は突きに重きを置く。金のあるうちに予備も含めて購入するつもりだ。

 

 「では、また!」

 「おう!」

 ……

 

 先にクマたちを裏に繋ぎ、宿舎に入る前に”収納”から兎を出し、入口に回る。お裾分けだ。

 店番じゃないが、女将さんがデンと鎮座していた。

 「おかえり、カンイチ。そうそう酒届いてるよ。結構飲むのねぇ」

 「ただいま戻りました。嫌いじゃないですが空樽が欲しくて。何か実のなる木でも植えようと思いまして」

 「あら。それなら、家だって空樽出るのにぃ。散財させちゃったわねぇ」

 「ははは……どのみち飲みますから」

 そういえばそうだ。先に声をかけるべきだったな。ま、酒は人生の良き友。良いだろうさ。と自分に言い聞かせる。

 「そうそう、野兎10羽ですがお裾分けで。菜っ葉もいただいたので。ここって結構人います? 足りなかったかな?」

 「はっはっは。気にすることないさ。ありがとさん!」

 その夜は兎のローストが出た。こんがり、きつね色。オーブンでじっくりと焼かれた肉汁たっぷりの逸品だった。

 

 部屋に戻り、早速購入した蒸留酒を頂く。

 「うむう。小さい樽と思ったが……。外で見るのと部屋にあるのとではだいぶ違うのぉ。すごく邪魔じゃな。ま、仕方なかろう。蛇口みたいのがあると楽なのじゃが……」

 そういいながらも、樽を軽軽と持ち上げるカンイチ。

 「うむ。ここはお湯が欲しい所じゃが……。そうだ、確かこの世界には魔法があるんじゃ! 魔法じゃ!」

 神様のお言葉を思い出す。

 「ところで魔法って何じゃ? 孫らの、でーぶい、でーじゃと、何やら呟いて……手を翳したりしておったなぁ」

 目をつむり、何やら、ごにょごにょとつぶやくカンイチ。

 「……をお恵みくだされ。熱いお湯を……お湯を下され……お湯を出してくだされ……お湯よ! 出よぉ! ほれ!」

 ……気持ちはわからなくもない……

 もちろん何も起こらない。

 

 「ま、そんなので、湯が出る訳は無しか。素直にコンロみたいなの買う必要があるの」

 諦めたようだ……

 水で割ってちびりちびりと舐めるように蒸留酒を楽しむカンイチ。

 「やっぱりお湯が欲しいの……。水割じゃ物足りんわい」

 目を閉じ、集中。再び挑戦する様だ

 「良し……水から挑戦してみるか。水素と酸素じゃったか? 爆発せんとできんかったか? はて?」

 うんうん悩むカンイチ

 残った蒸留酒をあおり、こそこそと床に潜り込む。

 考えることをやめたようだ

 「この辺りも明日、女将さんにでも聞いてみよう」

 と。そのまま目を閉じる……

 ……

 

 「うぅん? お湯だって? そんなの、厨房に貰いにいきな。うん? 火が落ちてたら? そりゃぁ、諦めだねぇ。はっはっは!」

 カンイチの要望に笑って答える女将。身も蓋もないのだが……。食事をとっていた受付嬢達も女将の答えに少々呆れ顔だ。

 「女将さん、ダメでしょうよ。それじゃぁ。カンイチ君、ポットくらいの少しの量でよかったら、”魔導コンロ”売ってるわよ。魔道具だからちょっとお高いけど」

 「うんうん。自分で”魔力”込められたら大分お得よ。何せ、”魔力”はお高いからね」

 「そうそう。ここ、寮だから木炭とかのコンロは禁止されてるからね」

 と、受付嬢からの情報に

 「”魔導コンロ”か……」

 つぶやくカンイチ。

 

 ――魔力を使うようじゃな。魔力はなんぞじゃ? 燃料かのぉ? お高いようじゃ。自分でこめる? できれば只かのぉ。さて、この辺りも確認がいるのぉ。魔導? 魔法の一種かなにかかのぉ?

 今日は就寝前のお楽しみ。お湯割りの為、その辺りに取り組むことを決めるカンイチ。

 

 「そうねぇ、道具屋の『アール魔道具店』さんとこならお安いと思うわよ」

 「かも。自分で作ってらっしゃるから」 

 「ありがとうございます。今日行ってみます」

 「いいのよ~~」

 「そうそう。昨日、兎ご馳走さまぁ~~」

 どうやら彼女たちもご相伴にあずかれたらしい。

 魔道具屋の情報やも仕入れられた。クマたちを連れて早速、町に買い物に出発だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ