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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
322/520

ええのかよ? 親方? (逃げた人々)

 …… 


 青い人食いの魔物、トゥローを退けたカンイチ一行。

 放置された荷車と馬車を確認。荷車の中や馬車の下を念入りに調べたが残念ながら生存者は見つけられなかった。アールカエフ曰く、生き残りはとっとと逃げ出したという。

 

 路上に残されたトゥローに食い荒らされた残骸数人分と、まだ奇麗な遺体を街道端に埋めてやる。死んだ馬はかわいそうだが放置。獣が処理してくれるだろう。

 その頃になるとフジに先導され馬車がやってきた。

 

 『ふむ。怪我も無いようで良かったなお爺。腹も減ったが、もう少し進むとしよう』

 「うん? フジ? あのトゥローだかがまだいると?」

 『ん? 近くには感じぬ。が、アレだって人型、数体で群れを作ってることくらい予測できよう? 人型は弱いから群れで動く』

 「……そうかよ」

 あれだけの魔物を”弱い”と切り捨てるフジ。この魔獣殿も大概だ。

 

 「カンイチさん! ランド・トゥローですか! あれ?」

 と、興奮し、駆けてくるイザーク。辺りを見渡すもそれらしいものは無い。

 「ん、ああ、じゃと。もう”収納”さ入れてしもうたがな。一体はガハルトさんにボコボコにされて、もう一体はアールに首落されたがの……」

 「そうです? ……流石ですね……」

 「で、トゥローは食えるのか? イザーク君?」

 その気は無いのだが試しに聞いてみる。ところ変われば、この世界の常識というのもある

 帝国に売ることは決まっているが。

 「ええぇ?! 普通、人型の魔物は食べませんよ。姿もアレですし。ゴブリンなんかは臭くて食えないとも聞きますし? ……親方、必要な素材ってあります?」

 と首を振りながら応えるイザーク。

 「革屋やら、薬屋の仕事じゃな。鍛冶屋にゃ、必要なもんはないの」

 と、答えるダイインドゥ。

 「薬屋かの?」

 「ああ、肝臓やら睾丸やら脳味噌やら。油取ったり精力剤にしたりの。皮も鞣して鎧にするとか? ま、革屋の仕事じゃな」

 「ほ~~ん。皮……着るのかよ……。なら、売っても問題無いの。じゃ、行こうかの」

 「うむ。出立せようか」

 

 ”がらがらがらがらがらがら……”

 

 暫く進むと前方に意気消沈のボロボロの集団が。誰もが肩を落し10人もいようか。

 先のトゥローに襲われて逃げ出した連中だろう。護衛の連中らしきものも善戦したのだろうが皮の鎧もズタボロだ。

 後ろからやってきた馬車に気づき手を振る連中。

 「どぅどぅ!」

 手綱を引き、馬車を止める。むっとした表情のダイインドゥ。

 「うん? ワシらに何の用じゃ?」

 「ランド・トゥローは! あ、青い個体の! ランド。トゥローは!」

 商店主と思われる男がダイインドゥに詰め寄り、声を張り上げる。挨拶も無しに。

 「は、何を言っておるんじゃ? お前さんは?」

 と、とぼけるダイインドゥ。

 「旦那、落ちついて、で、後方でトゥロー……どうなって?」

 と、ボロボロの護衛の冒険者が前に。

 「うん? どうとは? うぅん? どうしたというんじゃ?」

 「い、いや……」

 そりゃぁ、助っ人置いて逃げて来たなんて言えまい。

 「わしらには関係ないことじゃて、急ぐので失礼する。トゥローに襲われたか。そりゃ運が無かったの?」

 と言いながらも、命があったのだ。自分らが通らねば今頃は腹の中だろうと。幸運だったと。

 

 「ま、まってくれ! い、一緒に戻ってはくれないか?」

 「は? 何を言っておるのじゃ? おヌシは」

 ”じろり”

 助っ人を置いてきた行為に侮蔑やら軽蔑の色がどうしても目に出る。

 馬車の前から動こうとしない商店主。

 「退かんと轢くぞ? ワシらには関係ないし。関わりたくもない。それに義理だってなし」

 「わ、私の荷車が……」

 「しらん! 勝手に行くとええだろが!」

 どうしても声が大きくなるダイインドゥ。

 「ト、トゥローが……トゥローが……」

 「私達は急いでいます。おどきなさい」

 と、幌馬車からダリオンが前に。

 「え、エルフ……殿!? し、失礼しました……」

 慌てて雇い主の袖を引く冒険者。

 「エルフ? 帝国の……あ、ああ……」

 彼女の制服に描かれる紋章を見て商人達も諦める。

 しかも、エルフ族だ。折角助かった命。無駄に散らすこともない。

 集団を置いて先に行くカンイチ一行

 「じゃぁ、ワシらは行くで。気を付けていくんじゃぞ」

 「……」

 

 ”がらがらがらがら……”

 

 「ええのかよ? 親方?」

 と、成り行きを見守っていたカンイチがダイインドゥに声をかける。彼らに手を貸さないでよいのかと。

 「うむ。構わんわい! 助っ人を置いて逃げる奴なんての。そういう時こそ協力して事に当たるんじゃ。逃げるにしても、闘うにしてもの! 町を出るもんはそういうもんじゃ。置いて逃げるなんて以ての外じゃ! 普通の奴らじゃったら擦りつけられ、巻き添え食って死んでおるわ!」

 珍しく怒りを面に出すダイインドゥ。ハッサン以来か。

 たしかにあの化物二体。普通の商会のキャラバンだったら? 襲われていた連中と同じ道を辿るだろう。

 その前に早くに気が付けばフジのいう通り、避け、引き返すだろうが。

 「そうそう。そんなヤツら、気にすることは無いって! カンイチ! 今日の酒も美味いぞ!」

 「母ちゃん……」

 「まぁ、生きてれば色々あるさぁ! カンイチ! さて! ご飯は? お腹減ったよぉ~~。ねぇ、キキョウ?」

 「うん! おにくぅ!」

 「そうじゃな……」

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