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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
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随分と汚い猪だね。こりゃ (毛長猪納品)

 …… 


 「ほぉう。ここにも素晴らしい設備があるんじゃなぁ」

 

 支配人に案内され地下にある解体場にやってきたカンイチ一行。この系列のレストランは冒険者ギルド、いや何処にも負けない素晴らしい解体施設を有している。

 元の始まりがレストランだったのか、解体場だったのか。それとも、冒険者ギルドの手数料に嫌気をさしたものが始めたのか……。冒険者ギルドより高額で買い取り、系列店内で都合したり、オークション等の出品も行っている大きな組織だ。

 組合員やらギルド証の発行等はしていないが誰でも利用でき、手数料の安さが魅力。組織が欲しい、必要な肉等については常設、季節依頼として店舗の通用口に公示されている。その場合、買取金額に依頼料が乗せられる。この辺りは他のレストランと同様だが買取価格が良いので利用者も多い。

 カンイチ達のように大物や、珍しい獲物を狩るもののみならず、普通の狩人やら、腕自慢の農夫らも利用している。

 

 「して、獲物は何でしょうか! カンイチ様!」

 期待に目を輝かせる支配人。さぁ! さぁ! と、得意のくるくる回る踊りで促す。興奮でか、踊りで酸素が足りないのか顔も紅潮している。

 その妙な圧に負け、後ずさるカンイチ。救いの視線をアールカエフに向けるも楽しそうに笑っている。

 キキョウは真似して、くるり、くるり。

 「う、う~ん。毛長猪なんじゃが……アレは泥まみれで随分と汚いのじゃが……。どうする?」

 ここは諦め、支配人の奇行を受け入れることにしたカンイチ。話を進めることに。

 解体場とはいえ、こうピカピカ綺麗に保たれていると少々出しづらい獲物だ。

 「ほほぉぅ! 毛長猪でございますや? さすがでございますなぁ! まったく問題ありません! 今年は少々収獲量が少なくて当店にも卸して頂けますと……」

 「その辺りも後で話をの」

 「ではこちらの台へ!」

 解体の職人たちの指示する解体場所。毛長猪用なのだろうか。大きなシンクのような形状だ。シャワーやら水が大量に使えるようになっている。洗車場のようだ。確かに泥まみれ。糞尿なども混ざっているだろう。毛も長い。とにかくきれいにしない事には始まらない。

 巨体を浮かしたり運んだりするための堅牢なクレーンも設置されている充実ぶりだ。

 この組織にはカンイチの”収納”と、フジの存在は通知されているので、支配人に促されるまま気兼ねなく出す。

 「カンイチ様、このバンドの上に」

 恐らくはクレーンにつなぐであろう、編み込まれたベルトの上に出すようにとの指示が。狙い、猪を出す。

 ”ずずぅん”

 「お、おお!?」

 何も無い空間から現れる巨大な猪。誰からともなく感嘆の声が漏れる。

 先ずは、クマが仕留めた一頭。嚙み千切られた傷から血が流れだす。”収納”のお陰でまだ体温が残っている。

 「お? おお! 死に立てのホヤホヤ? こ、これはすごいぞ!」

 直ぐに駆け寄り、弾力を確かめる

 「血も十分に抜けているな!」

 クマが食い破った頸部を覗き込む。

 「おお! 大きい! 久々の大物だ!」

 解体職人たちが上物の毛長猪に歓声を上げる

 「わ、わぁ! 大きい! 大きい!」

 「い、猪? これが毛長猪? で、でけぇ! スゲェ! スゲェ! 美味そう!」

 と、はしゃぐ子供達。

 「……。随分と汚い猪だね。こりゃ……。くっさ!」

 とは鼻をつまんだアールカエフ。……すべて台無しである。

 「……おい!」

 ……

 「素晴らしい……。近年ない大きさ。しかもこの鮮度! お預かりいたします。それで、カンイチ様、皮や牙等の副産物についてはいかがされましょう? 毛長猪の革の敷物はどこの場所でも名品とされておりますよ! もちろん! 当店でも高価買取いたします!」

 興奮冷めやらぬ支配人。回転速度もさらに上がる。その隣でキキョウも楽しそうに回る。

 『む! 肝は此方に回してくれ。できれば新鮮なうちにな! 我らで食う』

 フジの言葉に、ピタリと停止する支配人。

 「は、ははぁ! フジ様!? 肝でございますね! 承りました。寄生虫等の心配もありますれば、一回、冷凍施設で凍結処理をした方が良いと思いますが?」

 『ふぅむ。我らには影響がないと思うがな。それに今更だろう? そのままで良い。でだ、解体もそうだが、干し肉の加工まで依頼したい。なぁに時が足らねば干すのはこっちでやろう。半乾きでも構わん』

 「は、はぁ? 干し肉でございますか? 毛長猪で? なんとも贅沢な!」

 『その猪は美味いのであろう? 腹の身もできるか?』

 「フジよ、干し肉は後じゃ。で、ティーネロ支配人。毛長猪はまだあるのじゃが?」

 「は、はい? ま、まだお持ちと?! す、素晴らしい。……それでは……」

 「今のところは出したソイツを入れて5頭じゃ。大きさも大体同じ。それでじゃ……」

 

 それを聞いて鼻息の荒い支配人を落ち着かせながら、ダンジョンに行くことやら、保存食の――”収納”持ちで保存食というのも変だが――ベーコンや、干し肉の購入の打診を行う。

 かわりに毛長猪を今回の五頭の内、二頭卸すことに。副産物の革については敷物に加工したものを三頭分ダンジョン国に届けてもらうことに。それ以外のモノは全て買取としてもらう。

 革の敷物はダンジョンのある町には大抵系列店があるからそこで話をしてもらえば、後日、届くようにしてくれると。

 そして、最後に暫くは毛長猪の狩りに勤しむことを告げる。支配人が喜びの舞を踊ったのは言うまでもない。

 毛長猪用の解体台は別室にもあり、五頭全ての猪を預けることができた。


 「もう話は済んだかい? じゃ、上行ってご飯にしよう! 僕、もうお腹ペコペコだよ!」

 「俺も! 俺も! 腹減った!」

 と、挙手し、空腹を訴えるリンドウ。

 「ご飯♪ ご飯~~♪」

 キキョウは嬉しそうに支配人張りに回転する。獣人故か、三半規管が発達してるのか目が回らないようだ。

 「そうじゃなぁ。あ! 連れが来る予定じゃで案内お願いする」

 「ははっ――! 承りました! ささ、ご案内いたしましょう! 我がレストランの自慢の料理! お楽しみくださいませぇ!」

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