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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
313/520

もう、人じゃないね。こりゃ (狩りを終えて)

 …… 


 「……しかし、相変わらず反則だな、カンイチの鶴嘴は……」

 只今、順に収納に仕舞っているところだ。先にクマが仕留めた個体、そしてガハルトときて、カンイチの仕留めた最後の一頭。その周りにメンバーが集まる。毛長猪の大きな頭。その眉間に刺さった鶴嘴をズッポと引き抜き”収納”へと仕舞う。

 「ガハルトに言われたくはないわい! 鉄の棒で大猪を殴り殺すなんてあり得んわい!」

 「……俺から言わせてもらうと、どっちも十分、化物ですよ……」

 と、その狩りの様子を見ていたイザークがボソリ。彼の言う通り人の技じゃぁない。いくら”スキル”というものがある世界といえど。

 「うんうん。師匠もガハルトさんもね。しかし……こんなぶ厚い猪の頭蓋に鶴嘴刺したり、鉄棒でボコボコに殴り砕いたりって……もう、人じゃないね。こりゃ」

 「ガハルトはともかく……わしのスキルは農業じゃし?」

 と、とぼけるカンイチ。

 「その、農業っていうのも納得できんがな!」

 「まぁのぉ。その辺りは認めざるを得んわ。わしだってまさか鶴嘴で狩りができるなんて思わなんだし。で、三頭仕留めたがどうすんじゃ? この後は?」

 「折角ここまで来たんだ。もう少し行ってみようか! 美味そうな猪だしな! 肉の量も多くとれるだろうよ?」

 「じゃろうな。じゃ、怪我しないようにの。皆の衆!」

 「応! 行くぞ! クマ! 次のを頼む!」

 ”ぅおん!”

 ……

 

 その後、更に二頭の毛長猪を仕留める。他にも普通の猪二頭、キジに似た山鳥を八羽手にすることができた。

 「どうじゃった? ガハルトよ?」

 「ふぅむ、少々物足りない……が、この肉の量は嬉しいな。食料在庫の為にもう少し滞在を伸ばしてでも狩って行こうか」

 「いいと思いますよ。ダンジョンでもクマ達にたくさん食べさせたいし。干し肉作っても良いですね」

 ”ぅおふ!” ”わふ!” ”わぉん!”

 クマ達も賛同の吠えを上げる。尻尾も期待でブンブンと振られる。

 『ううん? 干し肉か……。イザークの作る、あのほんのり甘い味付けの物は美味いからな。最近は蛇の干し肉も作れぬし……うむ! 大量に仕込むとしようか! イザークよ!』

 「おいおい、フジよ……」

 「香辛料は何処で出も手に入るものですし? 香草の貯えも結構あるから作れますけど?」

 『なぁに、次から我も狩りに参加しよう。で、レストランで解体してもらえばよかろう? ふむ。レストランに干し肉の依頼を出すのも面白かろう? 店ならではの違った風味の物が楽しめるかもしれぬな。なぁに、干すのは此方でやっても構わん! 決まりだな! お爺ぃ!』

 と、フジが声を上げる

 「俺は構わんぞ! カンイチ!」

 と、ガハルト。

 「オレもぉ~~。鳥撃もできるしね」

 ミスリールもアーバレストを構えながら賛成。

 「そうですね。クマ達用の硬い干し肉も作りたいし」

 すっかり蛇スープと干し肉職人と化したイザーク君。今や店をだせる腕前だ。

 ”ぅおん!”

 クマも千切れんばかりに尻尾を振る。

 『よく言った! あの硬いものはリンドウ達にも良かろう!』

 ここにいる『狩り組』の意見は概ね一致したようだ。

 カンイチだって賛成だ。肉が手に入るのはありがたい。

 なにせ、大きな狼型の従魔が4頭。そして、大きな虎人と大食いの肉食エルフがいるのだから。

 「それじゃぁ、暫く狩るか……」

 ……

 

 ……


 狩りの翌日。昼食を摂りに出て来たカンイチ。アールカエフ、リンドウ、キキョウを連れて。先頭を歩くのはもちろんフジ。ぐんぐんと群を引っ張って行く。例の毛長猪をレストラン・ヴォイエーロに持ち込むために。

 「う~~ん! 楽しみだね! 毛長猪かぁ! 美味しいって聞くし?」

 「あ! 俺! 聞いたことあるぞ! アール母ちゃん! メッチャ危険なんだぞ! 偉そうにしてた冒険者のヘイグってのがぶっ飛ばされて、頭踏まれて死んじゃったんだぞ!」

 「そうなのかい? 頭踏まれる? ぽっこり穴、空いたかな? でも安心したまい? リンドウ君。もうすでに狩って”収納”の中だよ?」

 「うんむ」

 「す、すげぇ! 本当か! カンイチ兄!」

 「おう! 昨日、狩ってきたで。ガハルトが鉄棒で殴り殺したでの……」

 ふと思い出せば、鉄の棒を喜々と振るガハルトの顔が浮かぶ。

 「すげぇ! ガハルト小父さん!」

 ま、そうじゃがのぉ。と、複雑な表情のカンイチ。このリンドウもああなるのかと……

 「じゃぁ、キキョウ、沢山食べていいの?」

 「うん。たんとお食べ。リンドウもね。もちろん、僕もたんと食べるけど?」

 「わぁい!」

 ……

 

 「これは、これは、アールカエフ様、フジ様、カンイチ様! 数多くある食事処から当店を選んでいただき感謝いたします! 本日はお天気も良く、温かい気候。良く冷やしたワインなぞもおススメとなっておりまして! オオタルミカモの入荷もございますよ! 今年の収獲量は大変少なく貴重なものとなっておりますよ! 是非ともこの機会に! それに最近騒ぎになっております、毛長猪の貴重な部位も! 先日やっと一頭獲れましてな 「はいはい。支配人。そのテンションどうにかなりませんか? 話し長すぎ。では早速、お席の方にご案内させていただきますね』 ……おうぐぅ」

 前回同様、舞うようにクルクルと踊りながら現れたティーネロ支配人。

 入口の少ないスペースを有効に、効果的に使い舞を披露する。その舞の途中途中、熱くカンイチ達に挨拶、そして本日のおすすめを披露していく。

 が、隣に控えた副支配人の女性にすっぱり処理される。茫然自失に立ちつくす支配人。

 カンイチやら、リンドウたちはびっくりしているがアールカエフはこういったノリは好きなようだ。『まぁまぁ?』と、声をかける。フジは人の機微など我関せず。

 

 「変なオッサン!」

 と、リンドウ。

 「だろう? リンドウ。で、今日はそのティーネロ支配人に用があるのだよ? 時間いいかい? もちろん昼食もいただくよ? 折角のおすすめだ! オオタルミカモ、一羽キープしておいてね!」

 アールカエフから直々に用があると言われ、ぱぁと明るくなる支配人。それに、

 「もしや、卸して頂けるのでしょうか!?」

 そう、希少な肉の卸が期待できる。

 「うん? その辺りも?」

 「それではこちらに! 奥の席は空けておくように!」

 「はい。かしこまりました」

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