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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
308/520

ちっ! (アールカエフの交渉)

 ……


 「うん? ここ、さっき通らなんだか? アールよ?」

 あれから裏通りをどれほど歩いたか。似たような路地だが、今回の角。明らかに一回通った場所に出た。依然、アールカエフは迷っている様子はない。

 逃げられると言っていた。追跡をしているのか。理解できないカンイチはアールカエフの後に続くのみ。

 

 「ん? まったく、往生際の悪い……。気配を消そうとしても無駄ぁ! 無駄ぁ! ぉうん? 諦めたか? 一応用心してね。カンイチ」

 追跡の足がピタリと止まる。

 「うむ?」

 アールカエフに言われ、”収納”から散弾銃を引っ張り出すカンイチ。何時でも撃てるように安全装置も解除。細々した路地を抜けると、テニスコートくらいの広場にでた。

 午前中でもあれば裏路地のマーケットでも立ってるだろう場所だ。

 その中央にどこかで見たエルフが三人

 そして、不快感を隠そうとせずに、緑色の髪のエルフが前にでる

 

 「このようなところまで。私に用事でしょうか? スィーレン様? それでどんな御用でしょう?」

 それでもゆっくりと丁寧に言葉を紡ぐハイエルフのファロフィアナ

 「ふぅ~~ん。随分と勝手な言い分じゃない? ファロフィアナ君。普段は僕の後をコソコソつけてきてるくせに? 自分がやられると怒るのかい? 困ったものだ! ねぇ、ティーター君!」

 突然に話を振られびくりと体を硬直させる銀髪のエルフのティーター。上役の顔を窺いながら、

 「は、はぁ、何と申しましょうか……。それが私たちの、し、仕事ですので」

 「ダリオン君だってそう思うだろう? まぁ、その辺りの話はいいや。で、僕がわざわざ、コソコソと逃げ回るファロフィアナ君を追いかけていたのにはひとつ、お願いがあってね!」

 と、わざとらしく金髪のエルフ、ダリオンに話しかけるアールカエフ。ダリオンもまたティーター同様、上役の顔色を窺う。

 

 「……ふぅ。で、スーィレン様。そのお願いとはどんなことでしょう?」

 「うん! 先日保護した子供達の身分証を用意してもらいたい。君なら余裕でしょう?」

 「は? 何で私が? 関係ないでしょうに? お断りします!」

 と、交渉の余地なしと断るファロフィアナ。

 「僕がお願いしてるんだよ? 駄目かい?」

 「何で私が? スィーレン様に一つ貸し……というのであれば話に乗ってもいいですが?」

 「貸し? そう。君は僕に借りがあるのよ? それをチャラにしてあげようって訳。判るかな?」

 「いえ、さっぱり。まったくと言っていい程、心当たりはありませんけど?」

 「先日のゾット君を僕たちにけしかけたの君だろう。んで、殺したのも。僕には全部お見通しさ! それって十分な敵対行動って言えるんじゃない?」

 「……」

 先ほどまで優位に話していたファロフィアナが口をぴたりつぐむ。

 全て見透かされていたと。

 「ファ、ファロフィアナ様?」

 「何の証拠があって! いくら、スーィレン様でも!」

 一歩前に踏み出すも、アールカエフに睨まれそれ以上前に出られないダリオン。

 「うん? ダリオン君。僕と君たちの間に”証拠”やら”理屈”は今更、必要かね? 敵認定だし? 君達をぶっ殺すのになんの躊躇も無いよ? 僕は。……敵は排除だね。排除」

 排除……その言葉と同時にアールカエフから精霊の力の高まりを感じる。アールカエフは既に臨戦態勢だ。

 カンイチもまたその圧を感じ、腰付で散弾銃をエルフ達に向ける。

 「ぐっ!」

 「ス、スィーレン様、お、お待ちください!」

 「ティーター君。僕はまだ何もしないよ? まだね。そうねぇ、良いでしょう! 証拠? 説明? だっけ? 僕の精霊様があちこちに面白いものを探していてね。騒ぎの当事者のゾット君を見失う訳ないでしょうに? カンイチ目当てだった事もわかってるさ。それに、精霊魔法を行使したら、この町中の誰が、どの精霊様を使って何をやらせたかってことまで僕にはわかるんだよ? まぁ、信じる、信じないかはキミたちの勝手。好きにするといい。どのみち僕の旦那様に手を出したんだ。その時点で敵だろ? 万死に値するね。言っておくけどぉ、もう逃げられないよ? 精霊魔法も使えないと思うよ? ああ、逃げようと”風に乗る”使ったら、ご要望通り風に乗せて、遥か上空、お星さまの近くまでご招待してあげるよ? 地面にたたきつけられてお終いだろうけど?」

 「ファ、ファロフィアナ様、本当でしょうか?」

 「……」

 「ダリオン君。今更真実なんてどうでもいいことよ? 簡単さ! お前たち! 死にたく無けりゃ、僕の言うことを聞け! ……と、いう話だよ? で、どうするファロフィアナ君? リンドウたちの身分証作ってくれるかね?」

 「……さすが、スーィレン様。……私の負けです。身分証、用意いたしますよ……」

 「ファロフィアナ様!?」

 「うん! 頼むよ! ファロフィアナ君! これで、奇麗サッパリ、ゾット何某の件は水に流してあげよう! 僕たちこれから帝国に行くのだし? 君にはまだまだ世話になるからね! うんうん! 仲よくしよう! そうそう、カンイチと僕との養子って事で。よろしく!」

 

 「チッ――!」

 嫌悪を隠そうとせずに舌打ちをするファロフィアナ。すっかり仮面は剥がれている。

 「うんうん。その表情かおの方が僕は好きだよ? 普段のどうでもいい感満載の愛想笑いの君よりもね!」

 「ふん!」

 「ファロフィアナ様……」

 「……じゃぁ、もう、コソコソするのは止めますね、スーィレン様。一人、付けさせていただく。騒ぎの回避のために。ティーター!」

 「は、はい。スーィレン様、本日より、よろしくお願いします」

 ふふんと、胸を張るファロフィアナ。

 「うん? うん! いいね! 都合がいい! 歓迎しよう! ティーター君! タダいるだけじゃぁ、暇だろう? リンドウたちの教育係お願いね。読み書き計算くらい? 帝国が子守してくれるんだ。これで安心してダンジョンに潜れるね! ね! フジ殿!」

 意趣返しのつもりが……。嫌がるどころか、ティーターの加入大歓迎のアールカエフの様子を見て焦るファロフィアナ。しかも、教師? 子守?

 「へ? ……子守?」

 子守? そんなつもりはまったく考えに無かった。こちらの人員スパイを公式に認めさせて少々、いい気になっていたようだ。

 『うむ。リンドウらは我の養い仔でもある! ティーターといったか? しっかり頼むぞ! ついでに、ハクたちの面倒もな!』

 フジだって頭の回転はいい。さっそくとアールカエフの言葉に乗る。

 「は、はい! フ、フジ様」

 フジ――フェンリルまで出てきたら今更、引っ込められない。

 「チッ――! このクソ婆ぁ!」

 ファロフィアナからすれば、このセリフが精いっぱいの反抗か。

 「まだまだ甘いよ! ファロフィアナ君! はっはっはっはっは!」

 「チッ――! チッ――!」

 路地に勝ち誇るアールカエフの高笑いとファロフィアナの舌打ちが響く

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