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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
301/520

のぉ……こいつ等は何じゃ? (ゴロツキ共)

 …… 


 レストランで食事の後、道端に佇む幼い物乞いの子供達に出会う。

 ふと、曾孫を思い出し、可哀そうにと思いその手のひらの上に金貨一枚を置く。

 その時、何かを察してか、ピクリとフジの耳が動く。

 

 『お爺……』

 カンイチを呼ぶフジ。その視線は向かいの食堂の方に。

 「はぁ! 金貨ってよぉ!」

 「ヒューーーー! 随分と金持ってるんだな! 俺らにも分けてくれよぉ! 少しでいいからさぁ」

 「良くみりゃぁガキじゃねぇかよ」

 「たいそうな狼連れて、冒険者か? おい?」

 その食堂から出てきたのは男が5人。一人はリーダー格の30後半だろうか。残りは成人したてか、20に届くか。服装は特に変わった物でなく一般人のそれだ。一見、ゴロツキには見えないのだが

 通行人や周りの商店なども係わらないようにと引っ込む。

 

 「お! でかした! ボロ共。金貨とはなぁ!」

 手の上の金貨を躊躇なく取り上げる。30男。当然だというように。笑いながら

 「へっへっへっへっへ」

 「あっ……」

 言いたいこともあるのだろうが、言葉を切る物乞いの兄妹の兄。その目は30男の金貨を握るこぶしを追う

 何時もの事なのだろう。

 ぎろりと男たちを睨みつけるカンイチ。

 孤児に物乞いをさせてその上がりをピンハネするゴロツキ共。

 本来であればカンイチ達が消えてから”回収”に来るのだが、相手は孤児にぽんと金貨を放る金を持った甘ちゃんの、しかも成人したてのガキだ。であれば、ちょいと脅せば金を出すだろうと出て来たのだ。

 立派な恐喝だが奴らにすれば日常茶飯事なのだろう。

 

 「よぉ、兄ちゃん。ちょっとこっちに来いよぉ!」

 「へぇ、狼使いかぁ? 町中で従魔の騒ぎはご法度だぞぉ! くっくっく!」

 「ああ、従魔が住人を傷つけたとあってはなぁ! 『冒険者ギルド』だって黙っちゃぁいねぇぞ!」

 従魔が人を傷つける。それ自体、罪とされ衛兵案件だ。

 わざわざゴロツキ共が『ギルド』を持ち出したのは、ギルドがメンツのために組織的に動くためだ。組合員資格の停止や、罰金(公とは別に)、そして下手をすれば制裁リンチと。

 すでにギルドを脱退してるカンイチにとっては脅しにはならないが。

 それよりもゴロツキたちの所業にふつふつと怒りが湧いているカンイチ。

 

 「おい、小僧! 言う事聞かねぇか! こっち来やがれぇ!」

 30男の伸ばされる手。その手がカンイチの左肩を掴む。

 ニタニタと笑う、この中では一番の年長者であろう男。

 先程、子供の手から金貨を取り上げた手。その手で肩を掴まれる。何とも耐え難い感情がカンイチに湧きあがる! 怒りの感情と混ざりあいカンイチの神経、筋肉を駆け巡る。

 この30男の行動がカンイチを動かす!

 

 肩に置かれた相手の手首を右手で”がしり”と掴む。ぎしぎしと締め上げられる手首

 「あい? ぃい、いてぇ! いて! 痛いぃ! は、放しやがれぇ!」

 みるみる顔が青くなりながら、声を上げたのは30男だ。

 怒りで膨張した筋肉が30男の手首を容赦なく、万力のように締め上げる。さらにその手首を捻り、地にねじ伏せ、完全に動きを封じる。

 「へぎぃ! い、いでぇ! ぐげ!」

 足のみをバタバタとばたつかせる30男。その額には苦痛による脂汗か

 残りの若い連中が前に出るも、フジが間にするりと身を入れる。それ以上の前進を許さない。

 「お、おい! ガキ!」

 「こ、この!」

 一人が懐のナイフを抜こうと手を入れるも、

 「おい! よせ!」

 「ナイフは不味い!」

 と、抜く前に仲間に制止させられる。

 いくら後ろ盾がいようとも所詮末端のゴロツキ共だ。町の中で人でも殺してしまったら後ろ盾にも見捨てられ斬首は免れない。それに、そもそも抜いてはその先は命のやり取りしか残っていない。

 

 「どぅどぅ、カンイチ、フジ殿。落ち着いて」

 「のぉ……こいつ等は何じゃ? これこそ盗賊じゃないのか? アールよ?」

 「まぁ、そうともいう。こんな小さな子供にタカってね。色んな悪党がいるけどぉ。その中でも特別な屑だね。屑。まぁ、考えようには、かえって出てきてくれてよかったかもよ? ノコノコと。駆除するのに? うん。僕も許せないかも?」

 『我も許せぬな……仔は守り、慈しむものであろうに?』

 魔物でもそれくらいの感情はあるのにだ。

 更なる怒りが握る力を増す。

 ”べっきん!”

 当たりに響く不快な音。

 「へ? は? い、痛い!? いてぇ! いてぇよぉ! いてぇぇーーーー!」

 30男の絶叫!

 カンイチにより握り潰された右手首。今尚、握り続ける。みるみる握られている先の手のひらやら指は紫色に変色していく。

 「で、お前さん、この子達との関係は? 人族だで親……という訳でもあるまいよ?」

 「いでぇ! いでぇ! は、放してぇ! 放してぇ! お願いぃ! お願い! て、手ぇ取れちゃう! 取れちゃうよぉ!」

 組敷かれたまま泣きわめく30男

 さらに、強く握られる手首。恐らく余程腕のいい魔法使いか、霊薬ポーションでもない限り、折れる前の状態に戻ることは無いだろう。

 関節は完全に砕け、その機能は消失し、血を送る管も。医者に行けば切断案件だろう

 

 「お、お、おまえら! お、俺達に、さ、逆らうのかぁ!」

 「ゾットの兄貴が黙っちゃいねぇぞ!」

 「こ、この町から、ぶ、無事に出られるとは、お、思うなよぉ!」

 フジの一睨みで騒ぎ立てるだけで一向に仲間の救出に動けない手下ども。

 

 「ふぅん。そのゾットの兄貴? だかというのが屑の親分かい? そう。で、どうするんだい? カンイチ。この後始末? ぶっ殺す? 面倒だし?」

 「……。……わしがこの子らを引き取る。……ダメかの? アールよ」

 「は? ……。ふぅうぅ……。やっぱり? まぁ、そうなるよねぇ。仕方ないかぁ」

 やれやれ。といった表情のアールカエフ。

 

 「な、何を勝手に!」

 「おい!」

 騒ぎ立てるゴロツキ共。

 「ふん。文句があれば言いに来ればええ。そのゾットとやらに言っておけい!」

 ぎゅっと、握る手に更に力を込めるカンイチ。

 「ぃぎゃぁぁあああ! いで、いでぁ、は、放してぇ! 放してぇ!」

 「ふん!」

 握っていた手を放し、30男の腹を蹴り、仲間のゴロツキ共の下に蹴飛ばす。

 「うげぇ! げぇ! げぇ! い、いてぇ! いてぇよぉぅ」

 腹を押さえ、えずく30男

 「ふん。良い歳こいて。チンピラめが!」

 「え? えひぃぃえぇぇぇぇーーーー!」

 言葉にならない絶叫を上げる30男。己の破壊された右手首を見てしまったのだ。

 その30男を左右から抱え上げ逃げていくゴロツキ共。そして御丁寧に

 「ゾ、ゾットさんが黙っちゃぁいねぇぞぉ!」

 「お、覚えていやがれ!」

 お決まりの捨て台詞を残して。

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― 新着の感想 ―
[一言] 爺ちゃんもミツルになりましたね(^-^) あ、300話越えお疲れ様です。 こっちもあちらも短編も頑張ってください。
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