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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
289/520

我らで一羽ずつ食って良いか? (仕留めた鴨は?)

 …… 

 

 鴨撃ちに来たカンイチ一行。が、湿地に入ったにもかかわらず、その肥えたオオタルミカモの姿を見ることができなかった。

 せっかくここまで来たのだと沼の周りを散策。イザーク、カンイチ、フジが食用になりそうな草、セリやら、クレソン等を摘みながら沼のほとりを歩く。ガハルトやミスリールは新たな飛来がないかと遠くを眺め、クマ達は臭いから痕跡を辿る。

 

 その時、

 ”ぐぼん!” ”ぱしゃり!” ”ばちゃ!”

 沼に動きが。

 視線を向けると、丸々と肥えたオオタルミカモが10数羽。50mほどのところに浮かんできた。そしてすぐさま潜水し身を隠す。

 『ぬ!』

 「む? 奴ら、水に潜って隠れていたのか!」

 「息継ぎに出て来たという事じゃな!」

 その後も、順番か、出ては潜りを繰り返すオオタルミカモ。いずれも岸からは遠い。

 「狙えるかの? ミスリール?」

 「やってみる……。けど、どうやって取りに行くんだい師匠? この沼の中?」

 標準器を覗くミスリール

 「クマが行くで」

 「カ、カンイチさん、駄目ですって! 変な魔物がいるかも……」

 どんよりと濁る沼の水。

 危険だと。クマたちの安全をまず先に案ずるイザーク君。すっかり狼使いだ。

 「む……」

 そう、ここは異世界。地球での鴨撃ちとは違う。

 「さすがにロープも足りないし、足りたとしてもロープの重さでこの距離じゃ当たらないな」

 「ならば……わしが合図したら矢を。飛べばいいのじゃが……」

 「うん? ……了解! 師匠!」


 フジとハナを連れて、身を低くし、オオタルミカモを驚かさないように先行するカンイチ。

 カンイチの作戦はこうだ。ミスリールやガハルト達が矢や投石でカモを驚かせ、逃げ飛ぶところを仕留めようという訳だ。運よくカンイチ達の頭上を旋回し山へと向かえば好機だが、直接山の方に逃げればすべてはおジャン。

 この行為は大騒ぎ、狩場荒らしになるので他の狩猟の人がいないか確認済みだ。

 狩人や冒険者はいない。やはり、夜の猟のようだ。岸辺近くか葦やらの植物の間にでもいるのだろう。

 

 カンイチが棒の先に白い布を巻いた旗を振る。開始の合図だ!

 ミスリールたちの方から、水中のオオタルミカモ追い立てる音が。

 ”どぼん!” ”ぼおん!”

 音と共に大きな水柱が。ガハルトが大きな石でも投じたのか。

 

 ”ばさばさばさばさ……”

 

 それに驚き、水中のオオタルミカモが浮上しすぐさま飛び立つ。姿形から予想できない俊敏さだ。魔法でも使っているような。

 カンイチの目論見通りとはいかず、数羽が飛び立ったものの、後はすぐさま水中に潜ってしまった。その飛び立った数羽がカンイチの頭上を通過。

 

 ”ずどぉん!” ”どぉん!”

 

 無数に放たれた散弾が頭上のカモを捉える。本来であれば射程外だろう距離の鴨もいたが、アーティファクト故か鴨に散弾を届ける。

 その時!

 

 ””””ばさばさばさばさ!””””

 

 カンイチの放った銃声に驚き、潜水し、やり過ごそうとした多くのオオタルミカモたちが一斉に飛び立つ。ミスリールの方に……。そりゃぁ、音の発生源の方には来ない。

 

 「こりゃぁ……失敗じゃのぉ」

 山へと群れで飛び去るオオタルミカモを見送るカンイチ。

 

 『まぁ、四羽獲れた。我らで一羽ずつ食って良いか? お爺?』

 そこにカモを二羽ずつ咥えているフジとハナ……カンイチが散弾銃で仕留めた奴だ。

 「うむ。構わんじゃろうさ。さ、戻ろうかの……」

 ……


 肩を落とし、すごすごとガハルト達の元へと戻るカンイチ。

 「おう! カンイチ!」

 「すまなんだ。どうやら失敗のようじゃ。四羽じゃ」

 「うん? カンイチの方で四羽? こっちで五羽獲れたぞ。初日にしては十分だろうさ?」

 カンイチの獲物は未だ、フジ達が咥えている。フジ預かりとなっている。

 「ほ、本当か!?」

 ぱっと顔を上げるカンイチ。

 「うん、師匠。運よく一矢で三羽刺さったのも。デカいから?」

 ぶんぶんと自慢のアーバレストを振るミスリール。その傍らには矢に射抜かれたオオタルミカモ。

 「ほ、そりゃぁすごいのぉ!」

 どうやら、あの瞬間に威嚇用の矢以外に三矢放ったらしい。

 「ああ。音だす方法考えねばな」

 「それにしても、大石らしきものもなし。どうやって音だしたんじゃ? ガハルト?」

 ここは湿地。周りを見回しても大きな石やら岩は見当たらない。

 「おう? ああ、大きな亀がいてな。そいつがクマらに襲いかかかって来てな。丁度いいから放った」

 「ええ。やたら首が長い変な亀でしたよ。蛇みたいに。甲羅の大きさは鍋くらいだったでしょうか。クマとシロがその蛇みたいな頭を食いちぎって食っちゃいましたけどぉ……」

 「そ、そうかよ。ううぅむ。しかし、あまり荒らすと鴨が寄り付かなくなるかもしれんのぉ……」

 この狩場は自分たちだけが使ってるわけじゃないと少々反省する

 「他にも群はいるだろうよ? 気にしすぎだろう? カンイチ? 規則もなし。構わんだろうよ?」

 とは、ガハルト。

 『うん? であれば我の殺気で飛ばすか?』

 「効果ありそうですね……フジ様。ショックで鴨、死んじゃうかも?」

 とオオタルミカモの身を案じるイザーク。

 「……それこそフジの殺気は無しじゃろ? ここら一帯、何もいなくなってしまうじゃろうに?」 

 『加減くらいするわ! ま、食ってみてだな。匂いは良いぞ。この鴨。実に美味そうだ……』

 「うん? 生で齧るのかの? フジよ」

 『馬鹿を言え! お爺ぃ! 今夜は『マッケローニ』だ! クマ等にはここで食わせてやってくれ。羽を毟ってな!』

 「了解じゃ。少し戻って休憩にしよう。が、フジよ。カモは熟成した方が美味いぞ? こっちはどうだか知らんがな」

 『ふむ? その辺りもデュラームに確認だな。このままでも美味そうではあるがな。クマらは肝も食うから新鮮なうちが良いだろう?』

 「ふむ。そうじゃな」

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