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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
288/520

いよいよあのカモが食えるのか! (鴨撃ち)

 …… 


 「本当にええのか? アールよ?」

 「何が?」

 「いや、の。同じエルフ族だし? 話しとか?」

 ファロフィアナとの取り調べという対談を終え、ホテルを出て来たカンイチ。

 相手の話ぶりから、同郷、友人では。であれば久しぶりにゆっくり話しでもすればよかろうと。

 カンイチの心配をよそに当のアールカエフは関心なし。

 

 「別にぃ? あのよく知らないし? 帝国の駒だろう? ……それに、僕の力が落ちてようものなら、襲い掛かって来たぞ? あれ」

 「は? いや、確かにな。現れたときは……」

 ファロフィアナが現れた時。若干、殺気を感じたのは事実。それで反射的に散弾銃を出したカンイチ。フジもまた反応した。

 『うむ。お爺。見た目に惑わされぬようにな。終始、笑ってはいなかったぞ。あのエルフは』

 「そ! フジ殿の言う通り。ま、僕はあんな小娘には負けないけどぉ!」

 「……世知辛いのぉ」

 「でもまぁ、お国からのちょっかいは無くなるんでない? 良かったって事にしておこう! エルフが僕と会ったんだ。人以上に感じることもあるだろうさ?」

 それでは余計にとの思いが。カンイチは思えてならない。それを感じてかアールカエフは言葉を続ける。

 「大丈夫でしょ? こっちから手は出さないし? 僕たちは帝国が欲しい訳じゃないし? フジ殿もいるし? 無理する理由がないよ? そうねぇ私怨は別にして?」

 「そうか……の。私怨? 心当たりがあるのかの? アールよ?」

 「さてねぇ。長年生きてるとどこかでお互いの道が交差しているかもしれない。僕には覚えがないけどもね」

 「そうか……」

 『そんな事より、飯だ。飯! 我は腹が減ったぞ』

 「ん、ああ。屋台巡りでええかの? 先にハナに食わせるか」

 「そうしよう! 一杯店あるし。楽しみだね!」

 『うむ! ではあすこの串焼きからだな!』

 私怨か。背後のファロフィアナがいる宿を見上げるカンイチ。

 ……


 「おーーい! カンイチ! 鴨獲るのに特に権利や規制やらはないそうだぞ」

 「ええ。ただ、そういった権利を主張するタカりの類もいるそうで。注意勧告されてましたね。ま、ウチはガハルトさんいるし? 問題ないと思いますけどぉ。やっぱり獲れる量が少ないそうですよ。オオタルミカモ、結構高額でしたよ」

 冒険者ギルドや役所に情報収集に行っていたガハルトとイザークが戻る。

 

 「でだ、当然行くだろう? カンイチ? アレはマジで美味いぞ!」

 今にも涎がでそうなガハルト。まさに飢えた野獣だ。イザークは食したことが無いのでそこまでの反応はなし。”鉄”の冒険者なら即刻、売って現金にする値段だ。食べるなんてとてもとても。

 

 「じゃな。フジも乗り気だで。是非とも射手のミスリールにも来てもらいたいの」

 「うん? 構わないよ師匠?」

 「恐らく湿地じゃぞ?」

 「げ。湿地かぁ。ま、潟スキーあるからいいけどぉ」

 ドワーフ連中は重い。湿地や、水は苦手だ。

 「よぉし! 昼食ってから繰り出すか!」

 「そいつは構わんが……他の魔物やら、動物やらは?」

 「蛇の類は今の時期はいないそうだ。偶にエボゥタオイという人型の魔物が徘徊してるという。湿地のあちこちにいて泳ぎも達者。魚のように皮膚はキラキラ光り、ぬるり。生臭いそうだ。魚人の一種かもわからんな」 

 「人を襲うって……。内臓引っ張り出して喰うそうですよぉ……」

 と、己の腹を撫でながら補足するイザーク君。

 「魚人?」

 「ああ、魚の特徴のある人? っていったところか? 俺ら、人と交易してる友好的な種族もあれば、今回のエボ……なんたらのように襲ってくるのもいる」

 「う~ん。……であれば、これからじゃぁ暗くなろう? 明日の朝一で様子見に出るか……ここいらの連中はどうやってカモ獲ってるかわからんがの。わしらなら、より遠くから仕留められると思うで。どうじゃ、ガハルト?」

 「ふむ……ま、慎重なカンイチらしいな。じゃぁ、そうしよう。楽しみだな。カンイチ! イザーク!」

 「どうも狩猟は夜のようですよ。カンイチさん。そりゃぁ、楽しみですよ? ガハルトさん。とても美味いって聞きますし? それに……すげぇ高いしぃ? 」

 イザークも同意の声を上げる。

 「くっくっく。買うのではなく俺らで獲るのだし。楽しめばよかろうが! イザーク。まぁ、”鉄”で魔猪やら食ってるやつはそうそういないだろうがなぁ」

 「そりゃぁ、売りますって! ……。そうですね! 楽しみにしてますよ!」

 「じゃな。イザーク君。ん、そうじゃ、今晩は、飲み会どうなるんじゃ? 行かねばレストラン、『マッケローニ』じゃ」

 「わかった!」

 ……


 ……

 

 早朝、門を出て狩場になっている【剣の山脈】の裾野に広がる【ウグイ大湿原】を目指す。

 【ウグイ大湿原】は大きな二本の川、その支流が網目のように走り、大小多くの沼を有す。多くの植物や動物が生息しており、水鳥などの繁殖地にもなっている。と、日本ならここで説明は終わるが、ここは異世界。山脈から魔物が降りてくるのはもちろん、大型の昆虫、爬虫類、両生類、魚類型の魔物も跋扈する。それを狙う大型の鳥類の姿もよく見られる。ゴブリンや、コボルト、オーガやらの敵勢種族。先に話がでたエボゥタオイ等の魚人族も混ざる。決して油断の出来ない地だ。

 

 今回のメンバーは、カンイチ、ガハルト、イザーク、ミスリール。それと、フジ率いるクマ、ハナ、シロ。

 ダイインドゥは鍜治場に。ディアンとアールカエフは街に買い物に。

 やはりドワーフ夫婦は湿地は避ける。ダイインドゥなど万が一湿地に嵌ったら救出が困難だ。アールカエフは汚れるのと虫が嫌だと。

 

 狩場に向かう途中、夜の狩に出ていたであろう冒険者達とすれ違う。その表情はくっきりと明暗が分かれている。オオタルミカモを仕留めた者たちは酒場での打ち上げを思い、獲れなかった者達は歩きづらい湿地とは別に余計に足が重い。

 大抵のものが大弓を背負っているので、遠距離から矢で仕留めるのだろう。

 

 「ふぅん……本当に数が少ないな。獲れたチームは2割くらいか?」

 「解らんぞ? マジックバッグ持ちだっておろう? うん。それにしても……。よう似合ってるのぉ。イザーク君」

 「そうです? へへへ。結構気にってますよ。これ」

 そう、彼の肩には、マハセの持っていた肩掛け型のマジックバッグが掛けられている。

 ひと昔前の中学生のようで微笑まく思うカンイチ。

 

 『いよいよあのオオタルミカモが食えるのか! 楽しみだな! お爺!』

 ”ぅおふ!” ”ぅわん!” ”をふ!”

 クマ達も同意のごとく吠える

 「そうじゃな。沢山獲れるとええのぉ」

 

 【剣の山脈】に沿う街道に出て、横切り更に西に。

 暫く進むと、足元も徐々に水気を帯びてくる。見えない沼に嵌ってもつまらない。先人らの足跡をたどりながら進むカンイチ達。

 「うげぇ、やっぱり、湿地かぁ……」

 重そうに足を上下させるミスリール。

 「もうちょい我慢じゃ。ミスリール。姿を見ない事にはの」

 「……おう」


 さらに西進! 

 「こりゃぁ、デカい沼だのぉ」

 カンイチの目の前に広がるのは広大な沼。周辺は葦やら萱やらの背の高い草が繁茂し、多くの水草やらミズゴケが隙間を埋める

 情報のように今のところ毒蛇やら、カエルの類は見かけない。変温動物の彼らにとって活動するには気温が低すぎるのだろう。

 「こりゃぁ、大変だな。何処にいるんだ?」

 辺りを見渡すガハルト。が、例のオオタルミカモの姿はない。

 「見当たりませんねぇ……」

 『いないではないか! お爺!』

 「そういわれてもの。こればかりはわしにもどうにもならんて。夜は岸辺に来て眠るんじゃろうか?」

 「さてな。で、どうする?」

 「ま、ここまで来たんじゃ。ぐるり見て回ろうかの」

 {おう!}

 ……

 

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