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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
282/520

それほど美味いのか? (飲み屋にて)

 …… 


 「ふぅ。ワインも料理も美味しかったぁ! また来ようね! カンイチ!」

 『うむ。あのワイン煮は良い』

 「そうじゃな」

 ご機嫌で店を出るカンイチ一行。

 

 『で、お爺。出せる肉はあるのか?』

 「お? おう。そうじゃ、途中仕留めた猪やら鹿はあるの」

 『……何を言っておるのだ。お爺……魔猪や赤トカゲの事だ。ここの料理人の腕を見込んでな』

 「あ、ああ。出せるぞ。が、わしらだけでというのものぉ」

 『……別に構わんだろう……』

 「おい……でも、猪やらも解体に出したいのぉ。結構な数もいるで面倒だ」

 「そう? なら、デュラームさんに依頼すれば?」

 「そうじゃな。少し歩こうか。アール」

 「うん! ちゅーする?」

 「……」

 

 「しかし、この町も賑やかいの。内陸に入ってるからかの? それに備えもあるで?」

 「そうね。まだ屋台も沢山出てるしね! 少し飲んでいこうよ! フジ殿は串焼き?」

 『うむ。あの店が良い。3本買ってくれ』

 広場に向かってゆっくりと歩く。フジを連れているので絡まれることはない。絡まれたとしてアールカエフがフードを下ろせば脱兎のごとく逃げていくだろう。

 一軒の屋台に入る。

 串焼きを摘まみながら軽く一杯。フジも足元で串焼きを堪能している

 『うんむ。珍しいな。鶏の肝の串焼きか。この旨味。もう1……いや2本頼んでくれ。お爺』

 「うむ。美味い。オヤジさん、肝焼いたやつ、3本」

 「おう!」

 「僕も! それにしても、冒険者みたいのが多いねぇ。冒険者の町ってこの先の【マロタス】だったろ?」

 「うん? 姉さん知らないのかい? 今の時期、オオタルミカモという渡り鳥が東の湿地に来る時期でな。そいつを獲ろうと冒険者の連中が集まってるんだ。ここでたんと餌食うんで脂も良く乗ってなぁ。帝国の宮廷料理には欠かせん食材だ。あちこちの貴族が金貨積んで買い求めるんだわ」

 お代わりのワインを置きながら、屋台の親父がこたえる

 「へぇ! オオタルミカモって、あの大きな丸まっこいカモだろ? ここで獲れるんだ!」

 「うん? アール知ってるのか?」

 「うん。羽毟って皮パリパリにじっくりローストにするんだよ? おデブで大きくて食べやすくて美味しいよ。一口噛むと美味しい脂が、びゅ! たっぷりと砕いた胡椒付けて食べるんだ」

 「そうそう。脂が美味いんだよなぁ。今の時期ならちょっとお高いが、レストラン『マッケローニ』や、『ヴァルテリナ』なら食えるんじゃねぇかな?」

 と串焼きを焼きながらオヤジ。今にも涎が垂れそうだ

 「うん? 今年はあまり獲れてねぇみたいだぞ? オヤジ」

 「買取価格もずいぶんと上がってたなぁ」

 と、並びで飲んでいた他の客が声を上げる。オオタルミカモの狩猟、今の時期の風物詩なのだろう

 「ウチでもシーズン中、1、2回は出せるんだがなぁ。常連の冒険者が置いて行ってくれてなぁ。そうかぁ……今年は少ないかぁ。じゃぁ無理っぽいなぁ。っと、へい、おまち!」

 カンイチ達の取り皿に肝焼きが置かれる。

 もそりと顔を上げ、椅子に座るカンイチの股間から見上げるフジ 

 『それほど美味いのか? これはひとつ、獲りに行くか?』

 「うむ。もう少し情報集めたらの? 湿地、空飛ぶカモじゃろ」

 怪しまれないようにフジの首筋をモフモフと撫でながらの”念話”だ。

 『お爺の例のアーティファクト。あれであれば間に合おう?』

 まさにそういった狩猟用の銃、散弾銃だ。

 目を細めるフジ。首の快感と、それほど美味いというカモへの期待だろうか

 「うむ。ワシも食ってみたいで。先ずは情報じゃ」

 フジの皿に串を外した肝焼きを乗せてやる

 「おう? 良く懐いてるなぁ。兄ちゃん。”狼使い”はそうじゃなきゃなぁ」

 「……”使い”かもわからんぞ……。わし、フジに良いように使われてるじゃろう……」

 と、ぼそり。 

 「ぷぷぷ。かもね!」

 「オヤジさん、そこの、果実酒一杯くれ」

 串焼きをせわしなくひっくり返すオヤジに声をかける。当のフジは満足そうに毛繕いをしている。

 「あいよ!」

 ……

 

 ……

 

 「おはよう。カンイチ!」

 「おう! おはようさん。昨夜はご苦労じゃったな! ガハルト!」

 「いや、丁度いいところで帰ってこれた。あの店は仕舞が早くてな。親方連中は他所の店に。その時にな。親方一家はまだ帰って来てはいないぞ」

 「……そうかの……ま、親方も楽しみにしていたで、良かろうさ」

 褌をすすぎ、干し場にピンチ(洗濯ばさみ)で留めるカンイチ。今日も蒼天に白の褌がたなびく。

 「朝飯はどうするんじゃ? 各自、町でええか?」

 「そうだな。どうせ、情報収集で町に出るからなぁ。それでいいだろう。洗濯も溜まっちまったな。出すか……」

 ガハルトは基本洗濯は”洗濯屋”にお任せだ。移動中にしても大抵、2~3日で小さい農村やら、宿場町で洗濯に出せる。村人にとってもいい小遣い稼ぎになる。

 「あ、そうじゃ、ガハルト。オオタルミカモについて情報集めてくれ」

 オオタルミカモと聞いて、空を見上げていたガハルト。カンイチへと向き直る。

 今にも食い付きそうな形相だ。

 「お! オオタルミカモか! あれ、じっくり焼いて食うと美味いんだよなぁ! うん? この辺りで獲れるのか?」

 「おう! そうみたいだ。今が狩り時じゃと。免許やら許可がいるのか知れんがの。その辺りもの」

 「ふ~ん。そんなもんないと思うがな。まぁ良かろう。承った。イザークと冒険者ギルドに行って調べてみよう」

 「頼むのぉ」

 ……


 「おはよう。今日は何する? カンイチ。デート? それともデート?」

 「うむ……そうじゃなぁ。デートもええが、寒さ対策の服やら日用品も買わねばなるまい? それと、暖房の魔道具どうすんじゃ?」

 「ん? 図面は親方に渡してるよ? それが出来次第だね。鍜治場借りて作るんじゃない? そいつに魔石を組んで動くようにするのが僕の仕事さ!」

 「おう。任せた。とりあえず朝市に行こう。腹減ったじゃろ?」

 「ぅむむぅ。もう、ペコペコだよぉ。カンイチぃ~~」

 「フジも行くかのぉ?」

 『うむ。もちろんだ。ハナも連れて行こうぞ』

 「ダブルデートだね! いいね! いいねぇ!」

 「そうせようか」

 「ご飯食べて、掘り出し物捜そう!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦闘シーンやザマァも良いけど、やっぱり、カンイっつぁんのストーリーは、こういう日常風景が楽しく読めますね。
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