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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
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うん? 牧場? (今回のお宿)

 …… 


 鍛冶師のロストク。彼はスメルトの『鍛冶師ギルド』のギルド長だった。

 ロストク・ギルド長も宴の準備と急ぎ出かけて行った。足取りも軽く。親方衆を周り、宴に誘うのだろう。その後ろ姿を見送り、

 「親方、宿代とかも……」

 「ああ。ワシらに任せておけばいいで」

 「気にすんな。カンイチ!」

 と、何時ものドワーフ夫婦。

 「一応、金子渡しておくでな」

 ”収納”から金貨の詰まった革袋をだし、ダイインドゥに託す。

 その重みを確認し、

 「すまんのぉ。酒宴も増えようというものじゃな!」

 「今日の宴も楽しみだな! アンタ!」

 「おうよ!」

 「……程々にのぉ。親方」

 「おうさ!」

 ご機嫌のダイインドゥにはこれ以上の声をかけることは出来なかった。

 

 挨拶を済ませ宿舎に向かうことに。

 『鍛冶師ギルド』の職員に案内されて移動。周りの景色が段々と大きな家が目立つ区画に。

 カンイチにも明らかに大きな屋敷が目につく。ここは城塞都市。城壁に囲まれた限られた狭い土地故、庭はほとんどないが、広めの二階建ての建物が規則正しく並んでいる。

 

 「……もしや、この辺りは貴族街かの? 職員さん? 多少狭くともここ以外で願えないかの」

 『貴族』、『貴族街』という言葉に過敏に反応するカンイチ。

 「はい?」

 「ほれ、ウチには変わった狼がおるだろう……いるでしょう。どうしても貴族らの興味を惹きますから。余計な騒ぎに……」

 今更ながらに言葉を直すカンイチ。ドワーフ相手なら問題ないが、人族相手だと変に思われると気づいた時には直している。が、鍛冶師ギルドの職員。それこそ爺さん言葉は親方衆相手に極く普通なので気にも留めないのだが。

 

 「……そうですね。考えが至りませんでした。すいません」

 

 ”ガラガラガラガラ……”

 

 石畳を征く幌馬車。その後部には小さな犬小屋の貨車を牽引し、大きな狼が4頭。いずれも綱で繋がれているが目立つ。ハクはそうでもないが、軍馬であり、大きなリツもどうしても目を引く。

 

 「いや、いい所に案内しようとしてくれたのでしょう? ありがとうございます」

 貴族街の検問の前でUターン。帳面を捲る職員

 

 「すると……北の宿は狭いか。……西の牧場は住めないなぁ……皆さん、バラバラでもいいでしょうか? なかなか貴族の建物以外ですと狭くて。ほら、貴族の屋敷にしても他の土地に比べて小さいでしょう? 庭も無いですし」

 「そうですね。うん? 牧場? ……そこがええのぉ」

 「建物が古くて。お客様には……」

 「構わんで。それより……」

 「ぅん?」

 何かを察したように身を乗り出すガハルト……

 「その牧場で畑って出来るかのぉ?」

 「……おいおい。カンイチよ?」

 やはりかと。

 「牧場といっても狭いですよ? 馬を軽く走らせる程度の。壁内ですし? ご覧の通り、この町は狭いですからねぇ」

 

 確かに山の斜面を上手く利用した要塞だ。建物も3階建てのものが多く縦の空間を生かしている。隣接しているそれは戦時には内壁にもなる。

 

 「そうか……の」

 肩を落とすカンイチ。

 「ふぅ……」

 こちらは、ほっと胸を撫でおろすガハルト。

 ダンジョンまでもう目と鼻の先だ。ここまで来て旅がお終いは無かろうと。その様子をハクの背から楽しそうに眺めるアールカエフ。

 「必死ですねぇ。ガハルトさん……」

 「そこは見て見ぬふりだよ? イザック君! ふふふ」

 

 街はずれ。元は大きな宿屋の客の馬を預かる施設だったようだが、街道の整備の折りに潰れたという。その建物は今や鍛冶師ギルドの事務所であり、牧場は偶に訪れる来客者の馬を預かるのに使われている。

 稼働率からいえば”売る”の一択だろうが鍛冶師ギルドは比較的、景気が良い。かれこれ100年そのままだ。

 「確かに畑をやるに、少々狭いのぉ」

 敷地を見回してボソリ。

 「カンイチ様?」

 「いや、こっちの話じゃ。……です。後はこっちで適当にやりますから。親方達は街に宿借りてもいいぞ?」

 「いんや。ここで十分じゃろ? 静かで良かろうに」

 「ま、数日は宴だろうからなぁ。寝るだけだしな」

 「うんうん」

 と、ドワーフ一家。

 「俺はどこでも構わんさ。ここは井戸もあるしな」

 こちらはガハルト。元々、寝る隙間があればいい男だ。が、巨漢だからその隙間の確保が難しいのだが。

 「俺もここが良いな。なぁ、クマ!」

 ”ぅおん!”

 もうすっかり”狼使い”と化したイザークも賛同の声をあげる。町中であれば【従魔の友】のような高級店以外は狭い檻にクマたちは入れないといけない。それにはあまりにも不憫だと

 「それにここならハクたちも一緒ですし」

 「うんむ。ありがとうの。イザーク君」

 ……

 

 この牧場を管理する、老夫婦の管理人が紹介され、この牧場を宿にすることに決定。

 「では後程、お迎えに上がりますね」

 「世話をおかけした。ありがとう」

 「おう! よろしく頼むの! シュツットガルトの爺様にもよろしく伝えておくれ」

 「はい」

 職員さんを見送った後、

 「じゃぁ、野営馬車出すよぉ! カンイチ!」

 「うんむ。幌馬車の陰になるように並べようかのぉ。ミスリール、ハクとリツを頼むで」

 「おう!」

 壁内なのでフル装備。幌馬車と木の影を利用し、野営用の馬車を出し並べていく。井戸端に風呂用の樽も並べられていく。そして鉄板が張られている便所も……

 「本当にこさえたんか……親方……」

 確か、今までの野営は木の衝立だったような? と首を傾げるカンイチ

 「師匠、まだ箱だけだよ? 中に入れるスライムどっかに居ないかなぁ」

 「スライムかのぉ……」

 異世界といえばスライム! が、未だ、その姿を見たことのないカンイチ。名は何度か聞いているが。

 「……で、アールよ。偶に聞くスライムとは何モノじゃ?」

 「は!? し、知らないの? カンイチ! 今まで……宿舎は水洗だったな……まじかぁ」

 「そ、そんなに有名なモノかの?」

 「そうだねぇ。ぶよぶよとした? プニプニした? ねばぁ~~~って感じ?」

 「?」

 「ま、その内判るさ! はっはっは!」

 ……

 

 「じゃ、わしらは先に出るでの」

 「親方! ガハルト君! 頼むよ!」

 「おう!」

 野営地設置も終了。ガハルト達と管理人夫妻に挨拶をし一足早く牧場を出るカンイチとアールカエフ。フジの手綱をひいて。

 「美味しいものがあるといいね!」

 「うむ」

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