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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
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どれがフェンリル様だ? (交渉)

 ……

 

 会談を受け入れたカンイチ一行。馬車を止め騎士たちと向き合う。

 

 「それで、どう言った御用向きか? 騎士殿。伯爵の身柄返還という話なら門を抜けるまでは受けぬ。我らの安全が確保されるまではな」

 会談の席には騎士が三名。といっても二人は護衛のようだ。

 こちらは、ガハルトと、ダイインドゥ。背後にそれとなくカンイチ。

 傍らには拘束されている伯爵。その短い手足、皆無な体力のせいで逃亡はしないだろうが念のため、腰縄の先端は剛力のディアンが持つ。他の連中は敷物を敷いてお茶休憩だ。

 

 「先ずは誤解を解きたい。正式な使者は別。もっとも、今となっては使者云々などどうでもよくなってしまったがね。おっと、申しおくれた。俺はコンラット。シター・シャモイ国第二騎士団団長を拝命している。この二人は供のものだ」

 「俺は冒険者のガハルトだ。で、こちらが仲間のダイインドゥだ。俺達で交渉にあたる。で?」

 「我らは、今回の使者の護衛でこの町まで送り届けて来たのだが……。そこな、豚が己の独断で動いてくれてな。アールカエフ様とフェンリルを取り込んで全て己の手柄にしたかったのだろう。王命を無視した愚かな行為」

 「兵を並べ、恫喝してきたのは事実。それ以外ないと思うが? 謂わば戦時」

 「……うむ。たった数人。が、正に戦時だよなぁ」

 たった数人。その中にハイエルフ、魔獣フェンリルが含まれる。軍隊にも引けを取らない戦力だ。

 「ふぅ。……もしも、まだ我が国を通過される気があるのであれば、どうぞこのままお通りください」

 「ほう?」

 「元より我が国は敵対、貴殿らの進行を妨げる気はございませぬ……。この愚か者のせいで交渉すらままならない状況になってしまったがな」

 と、大人しく座り込んでいる伯爵に目をやる。未だフジの脅しが効いているのだろう

 「貴殿を……いや、国を信じろと?」

 「そこは、信じてくれ……としか言えんがな。できれば機嫌を直して頂いてうちの使者とも会ってくれればなお良いのだが?」

 「さてな。で、この伯爵様はどうする?」

 「うん? 貴殿らの身の安全の保障、矢避けで連れて回してもらっても構わんぞ?」

 「んーー! むぅむむ!」

 目を見開き猛烈に抗議をしているだろう伯爵。猿轡のお陰で何を言っているのかはわからないが、罵詈雑言大方そんな内容だろう

 「……ご免こうむるが? 飯も食わせねばなるまい?」

 「それではこちらで引きとらせてもらおうか。王の前に連れて行かねばならん。これでも伯爵様だからな。貴殿らの移動について帝都からも人が来ていてな。どうなるか……。こちらも俺を信用してくれとしか言えん。罰にしても俺からは何とも言えんしな。それも帝国の御都合と王の御心次第だ」

 「重い罪は問えんかの?」

 「先も言ったろ。俺からは何とも。確約は出来ん。この者の貴族の矜持、一応は国を思って起こした事だしなぁ。王のご意思に反したことには変わらないがなぁ。どこまで許されるかだな。帝国の方が厳しい事を言って来るかもわからん。帝国としては貴殿らにはこのまま北進してもらって帝国領内のどこぞに落ち着いてもらえば万々歳だろうしな」

 「むぅむぅむむ! ……むぐぅ!」

 「うるさい。お前のせいで交渉ができなくなったんだ。覚悟しとけ」

 「では一旦、国境門まで退き協議したいのだが? その後、約定通り伯爵様はお返ししよう」

 「それはありがたい。我らも同道しよう」

 ……


 再び、国境門に向かい撤退を開始するカンイチ一行。伯爵を盾にしながら。

 そこに、3騎の騎馬が従う。軍はその場で待機。

 騎士団長のコンラットは下馬し、ガハルトの横に並びに話しかける

 「で、ガハルト殿。ダンジョンを覗きに行くと聞いたが?」

 「うむ。この機会に色々見て回ろうとな。ダンジョンも財宝目指し本気で潜るつもりだ」

 「それはアールカエフ様も? あまりエルフ族は潜らんだろう? それにハイエルフともなれば……」

 コンラットの言う通り、閉鎖空間であるダンジョンに好んで潜るエルフ族は少ない。

 未だ、無名の若いエルフであればともかく。名の知れたハイエルフのアールカエフがダンジョンに潜るだなんて俄かには信じられない。

 「もちろんだ。コアを砕くと張り切っておられるぞ。ふふふ」

 当の本人はハクの背で器用に昼寝中だ。

 傍らのカンイチは冷や冷やものだ。撤退中なので是非とも馬車の中に入ってもらいたいところだが。

 アールカエフの口を借りるなら、精霊様が見張ってるし、矢は届かない。と。

 その様子を笑いながら見守るドワーフ母娘

 「コアをか? そいつは困るなぁ。で、どれがフェンリル様だ?」

 「くっくっく。さてな。飽きて森に帰った……、人の行いに呆れて帰った……。もういないと言ったら信じるか? コンラット殿」

 「……頭数減っていないもの。報告の通りだしなぁ。4頭って。その数が減っていれば、まだ納得もしようがなぁ」

 「くっくっく。ま、知ったところでどうにもなるまいよ。勝負を挑んでみるか?」

 「は? 冗談だろ? 実際そうなんだがなぁ。手を出せん。が、人に使役されてると聞くしなぁ。その狼使いは?」

 チラと、イザークに視線を向けるコンラット。カンイチも近くにいるが、一番小さく、幼いように見えるからコンラットの眼中には居ないようだ。

 「さてな。だが使役と言うより友のようなものだ。普通の魔獣使いとは違う……な」

 「ほう?」

 「使役者を無理に捕まえて言う事を聞かそうとしても無駄って事だ。魔獣殿にも意思があるしな。自由にしている。それこそ牙をむけば止められん。友を脅し貶めるのだ。しっかりと報復はされるがな」

 「それは、それは。そいつが事実なら認識を改めねばいかんなぁ。さしずめ人の領域に遊びに来てるということか?」

 「ふむ。そういった認識でいいと思うぞ。くっくっく。ま、貴殿を見込んだから言うのだ。なにせ相手がなぁ。帝国の方にも伝手があろう? 余計なちょっかいを出してくれなければこちらは何もしない。それこそ、俺を信じろとしか言えんがなぁ」

 「ふっ。そうか。で、ダンジョンの次は?」

 「さてなぁ。とにかくダンジョンに潜らん事にはな。数週間で飽きるか、1年いるか、10年いるか……」

 「で、何処に根を下ろすんだ?」 

 「それこそ、さて、だな。そいつもダンジョンの結果次第だな。死んじまうかもわからんだろうに?」

 「おいおい。……まぁ、油断大敵だわな。深い処は富も名誉も転がっているが、それ以上に”死”もなぁ」

 「ああ! 楽しみだな!」

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