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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
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その頃のフィヤマ 1

 「おい! 聞いたか! リスト!」

 

 ノックもせずに執務室に駆け込んできた大男。フィヤマ警備責任者のハンスその人だ。

 リストとは竹馬の友、所謂、幼馴染だ。

 

 「おいおい。ノックぐらいしろよ! ハンス! ……あの老害が引退したって話だろう?」

 眉間を寄せ、苦言を呈するリスト。

 「おぅ? さすが、ギルド長様ともなればお耳も早いな……」

 「ハンス殿! 久し振りだなぁ!」

 「うん? ジップたちもいたのか。邪魔したか?」

 

 ソファーにはジップとアイリーン、アトス。もう一人のメンバーである自由人ガルヴィンは不参加のようだ。この町、フィヤマの稼ぎ頭に返り咲いた金ランクのチーム【稲妻の剣】の面々だ。各々手を上げ乱入者に挨拶をする。

 そう、リストとしては来客中だった。

 

 「いや、構わんさ。俺達もその話をギルド長から聞いていたとこなんだわ」

 「……うむ」

 「そうか。ならいいな。でだ! あのメルカルヴァ宰相閣下が役を解かれ、おまけに当主も替わるそうだな。貴族院の席も失うらしいぞ? 随分とすっきりするのだが……」

 突然の宰相引退発表。ザマぁないな! という雰囲気から一転。どうにも引っかかる。ここにきて突然の隠居、追放と言ってもいいほどの。

 

 ハンスの思い当たる原因となるのは腹心バラグライド侯爵によるカンイチ達への襲撃事件。

 その件については首謀者であるバラグライド侯爵の功を焦った独断によるものとされ、当事者死亡をもって一応の幕引きとなっていた。全責任を彼に押し付けて。正に死人に口なしだ。

 大方の予想、裏で動いていたのはメルカルヴァ宰相だろう、彼が黒幕だろうという噂も確かに広まったが罪無、お咎めなしとされ噂も収束していた矢先

 

 「ああ。聞いている。それなぁ、なんでも、あの事件(バラグライド侯爵の件)の後も、王命を無視してカンイチ達にちょっかいだしたそうだ。国境に己の息のかかった騎士を置いてな。まぁ、座れ、ハンス」

 「……それでかぁ。本当に懲りないクソジジィだなぁ。俺にも茶くれ」

 どさりと、空いたソファーに腰を下ろすハンス。

 「それもアールカエフ様の前に立ちふさがってな……。噂によるとその騎士ども、王の名をかたって脅したらしい。ほれ茶だ」

 「おいおい。間違ったら戦争じゃねぇか」

 茶を一口で流し込むハンス。

 「ハンス殿、既に間違ってるだろうに? しかしまぁ、よくもアールカエフ様の前に立てたもんだな。ぶっ殺されちまうぞ?」

 彼女本人がいれば『そんな事しないよ! 君ぃ!』と声を上げるかもしれないが、人族からみてのハイエルフの印象なんてそんなものだ。

 

 「だな。で、死んだか? その騎士は?」

 「いや、生きてはいるようだぞ」

 「そりゃ、随分と運が良かったなぁ。確かにアールカエフ様の流出は国にしちゃぁ痛いところだがなぁ。お籠りと知ってずかずかとやってきたんだ。敵対することはあっても、サヴァ国に力を貸してくれることはあるまいよ」

 「だよなぁ。ホント、土下座して頼めばよかったものを。心象最悪だわなぁ」

 「ああ。でだ。それを知ってイヴァーシ国の方も少々きな臭くなってるそうだぞ。主戦論者どもが出兵! 開戦! と騒ぎだしてるとか」

 

 この大陸は人の住める土地が限られている。しかも、人の行いで大陸中央の最も安全な場所が穢され、そこから、怨念の具現化した【死の軍団】が周辺国に溢れることとなる。

 小規模のものから、リッチィのような大物が率いてくるものまで。

 よって、国は隙あらば他国への侵略、国土拡充を望む。特に、中央【幸福の地】【暗黒の湿地】に接する国はそういった動きは顕著だ。

 

 「は? もうかよ? 戦争……かぁ」

 溜息と共に吐き出される。忌まわしき言葉。戦争……

 自分に言い聞かせるように呟くハンス。

 「それが、あのエウリュアレー様が丁度、サヴァにいてなぁ」

 と、ジップ。

 「エウリュアレー様か? 本当か? ジップ? リスト?」

 と、驚きの声を上げるハンス。確認の目をリストに向ける。

 頷くリスト。

 「ああ、遊びに来てるんだと。今は王都か? 彼女がいる間は戦は無いってな」

 「ああ。ギルドでも確認済みだ。チーム【世界樹の護り】で来てるそうだ」

 と、リストが補足をする。

 「ひゅ~~。特級チームのか? それは、なんとも」

  

 エウリュアレー。この大陸において長年にわたって最高位の冒険者。ハイエルフであり、大陸をあちらこちらと移動している。エルフ達からは大層な変わり者として有名。

 別の通り名は『動く抑止力』。間違えて彼女の滞在している町やら村を襲おうものなら手痛いしっぺ返しを食らう。彼女の動向も台風の進路予測、海流の流れのように各国の軍事地図におとされていく。

 昨今、それがもう一つ増えたが。言わずもがなアールカエフだ。フェンリルのおまけつきで

 

 「どうにもアールカエフ様の見舞い? 葬儀に出るつもりだったとも聞く。もう此処にいないことは伝わってるからフィヤマまではいらっしゃらないだろうさ」

 当のアールカエフは完全復活し、新天地を求め――る前の、資金調達の為にダンジョンに遠征中だが。

 「おかげで即、戦争にならないって事か。これもアールカエフ様のお陰だなぁ」

 「わからんぞ? ジップ。相手はイヴァーシだ。あそこの連中はおかしいからな」

 「おいおい、ハンス。だが……」

 ……    <つづく>

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