領主の親族までも手にかけていたのか? (呆れた盗賊共)
……
「な、何を! 何をする!」
拘束されたコウマイ、その弟のトゥコヤの元に。
その服の上から何か持っていないかを探る。
「ふん。持ち物検査だ! コウマイ、どうせ死んじまうんだ。金のありかを素直に吐け!」
「ふ、ふん! ! さ、触るなぁ! 触るなぁ! 獣人風情がぁ!」
「ほう? これはマジックポーチか? おお! あったぞ! イザーク! 結構な容量のポーチだな! 貰っておこう!」
コウマイが腰に巻いていたポーチ。見た目は小さいが容量の大きなマジックポーチだったようだ。
「か、返せぇ! 返せぇ! わ、ワシのだぁ! ワシの!」
「ガハルトさん! こっちも! わわ……結構入っていますよ!」
弟のトゥコヤの懐を漁っていたイザークも声を上げる。
「そ、それもワシのだぁ! ワシの! 返せぇ! 返せ!」
拘束されてるにも拘らず器用にもジタバタと暴れるコウマイ。
その顔にニヤリと笑って見せるガハルト。
「ふん! もう、俺たちのものだ。有意義に使わせてもらおう! 心置きなく死ね! 賊が!」
「クソぉ! クソ! クソがぁ!」
『ガハルトよ。あすこの天井も怪しいぞ』
「ん? ……なるほど。イザーク!」
「は、はい?」
イザークを肩車し、天井の板をずらす。
ぎゃぁぎゃぁ騒ぐコウマイを他所に。
「わ! わわ! バッグ? それと……剣? なんかすごそうなのが……他にも?」
この頃になると、後発した隊が到着。周りの警備と共に、この家に出入りしていた連中の調べが始まる。
タッカベ隊長の協力を得て、天井より秘蔵品の数々を下ろしていく
「お、おい、こ、この紋章は……」
「りょ、領主様の紋章? おい! コウマイ!」
「……」
さすがに領主の紋章のはいった物を見つけられてしまっては口を噤む。どうあがいたところで生はない。
「お?! この剣、中々だな。予備に貰ってくか」
「ガハルトさん。一体幾つ予備いるんです? お? このナイフも貰って行こう!」
そんな事は他所に、秘蔵品のバッグやら、出来の良い武具を接収するガハルト達。ここにはかなりの額の金貨も隠されていた。
「領主様? は? 貴様は己の住んでる土地の領主の親族までも手にかけていたのか? おいおい。呆れたもんだな。なら報奨金もでよう。タッカベ殿、貴殿らの飲み代にするといい。俺たちは結構な実入りがあったからな」
「ええ。この後、サウワラァ穀物問屋にも付き合ってもらわないとだしね」
『ぬ! ぬぅう! まだかかるのか! イザークよ!』
「も、もう少し、お時間ください……フジ様……」
『ぬぅぅ! ……仕方なしか。本当に面倒な事よ。人の世とは。代わりに途中串焼きを買ってくれ』
「了解です!」
……
一旦、北門に移動。コウマイたちの収監と、ギンたちを引き出しに。途中、何度かフジに串焼きをねだられ購入。門の詰め所で一服するためだ。
門に近づくと門衛と何者かが口論をしている。野次馬も人垣を作る
「うん? 何の騒ぎだ?」
「隊長、あれは?」
その中心に居る男。
「あ! 昨日の! アコヤだ!」
イザークが、その相手の顔を見て声を上げる。サウワラァ穀物問屋の倉庫番のアコヤと
「ほう、奴がか……」
急拵えだろう、荷物も少なく単身で門衛と何やら言い争っている。
アコヤとしては一刻も早く町を出たいのだろう。あろうことか金を握らせてでも通ろうと必死だ。
門衛も普段なら、そういったことに応じる不届き者も居ようが、先ほど隊長から通達が出ている相手だ。今回に限っては頷くことはできまい
「あ! 隊長!」
「何をしている? さっさと捕縛せよ!」
「「「はっ!」」」
「タ、タッカベ隊長!? これはどういう事です! 私はただ、隣村に買い付けに……」
「うん。話は詰所で聞こう。ゆっくりとな」
「た、隊長! い、急ぎなんですよ! 急ぎで……。……」
急にアコヤの威勢の勢いが落ちる。取り囲む衛士の中にイザークの顔を見たからか? 違う。
「お待ちくださいまし! お待ちください! はぁ、はぁ、はぁ、お役人様ぁ! その男、アコヤを捕まえてくださいまし! はぁ、はぁ」
叫びながら駆けて来た中年の男。そのアコヤを捕まえろと。
「うん? 確か、サウワラァ穀物問屋の番頭の?」
「はぁ、はい、カイルターです! その男、主人を殴打し金品を強奪しました! はぁ、はぁ、盗みましたぁ!」
「水を。で、店主は無事か?」
「は、はい! アコヤ! こ、この恩知らずがぁ! 旦那様に目をかけて頂いたご恩を!」
「くっ!」
「中々の悪党だな。どうせ逃げるのならばと店の金をか?」
「帳簿の誤魔化しもあるでしょうねぇ」
「……」
「とりあえず牢にぶち込んどけ! 店主と話は出来るか?」
「は、はい? そ、それは?」
「アコヤが客の情報を盗賊に流していてな。はっきり言おう。それがどこまで関係しているかな。店主……お前のところの店に、嫌疑がかかっている」
「はぁ!? わ、私どもは!」
「歩けるようなら連れてこい。馬車でも構わん。判定石が手っ取り早かろう。ついでだ、貴殿も触っていけ。カイルター」
「は、はい……」
その後の調査でサウワラァ穀物問屋の関与の容疑は晴れる。アコヤの単独犯と。
その捕りものの様子をだらりと寝そべりつまらなそうに見るフジ
『うん?』
視線をずらせばガハルトとイザークがアコヤの荷物を喜々とを漁る
『……ふぅ』
すっと目を逸らす。
魔獣の目にはどう映っているのか……
「それにしても……金貨もですけどマジックバッグが4つも手に入りましたね。こんなにあるものですね……バッグって」
「無い。アイツらはそれだけ手広く悪事をしてたって事だろうさ。この大きい方のポーチ俺が貰うつもりだが、小さい方要るか? そこそこの容量だぞ?」
「え、え、えええぇ!」
「ポーチならそうおかしくもあるまい? 目立たぬしな。便利だぞ? 装備の予備やら霊薬を入れておけるしな」
「そ、そうですね……。も、貰っちゃおうかな……ははは」
憧れのマジックバッグ(ポーチ)がそこに! それ一つでも一財産だ。
『そんな事より、飯だ。イザークよ。今日もこの町に泊まるのか?』
「いえ、フジ様。そうですね。飯を食ってさっさと出ましょう。カンイチも外で待ってるでしょう」
かわりにガハルトが応える
「アール様にもオミヤ買っていきましょう」
『うむ』




