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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
262/520

ここにおっても仕方あるまい。行こう (尾行者)

 …… 


 屋台街で夕食を済ませたフジ、ガハルト、イザーク。

 ガハルトはもう少し飲むと手を振り、夜の町へと消えて行った。

 その後ろ姿を見送るイザーク。宿も別に取っており会うのは明日。ガハルトが迎えに来ることになっている。

 

 『うん? イザークも行きたかったか?』

 「いえ、そ、そういう訳では?」

 と、言いながらも、少々狼狽えるイザーク。

 もう一本となりの路地……そういった店が乱立する一角……

 お姉さんのいる店に行くのかと邪推する。はっきり言って羨ましい! と。

 口にはしないが。

 『……仕方がない奴だ。ガハルトが行く店に雌はおらぬぞ? やれやれ……」

 あの漢がそういった店に行くものかと。

 「こ、心読まないでください! フジ様!」

 『……読んではおらぬ。顔にありありと書いてあるぞ。イザークよ……』 

 呆れ顔で言うフジ

 「え、ええ?」

 自分の顔、頬をペタペタ触るってみる

 もちろんそれでわかろうはずはないのだが……

 『酒場は好かぬ。お前ひとりで行って来ればよかろう? 我は部屋で休んでいる』

 「い、いえ。問題無いです。フジ様……」

 知らない土地……普通の飲み屋ならまだしも、そういった少々如何わしい店はハードルが高い。下手をすれば有り金、貴重品すべて毟られて裏路地にポイだ。噂では酒に睡眠薬を混ぜる極悪な店もあると聞く

 一人で行くなんて……

 

 『ほれ。あすこの雌は尻を振っているぞ?』

 道の辻。薄着の女が客引きをしている。イザーク好みの肉感的な女だ。

 ごくりと生唾を飲むも、頭を振り。フジに向き合う

 「い、いえ、問題無いですぅ……。フジ様、もう一軒寄っていきません? 俺も少し飲みたい気分」

 『くっくっく。良かろう。付き合ってやろうイザーク。こっちだ』

 「は、はい……。俺ってヘタレ?」

 『くっくっく』

 ……

 

 『ほう。風呂まであるとは恐れ入る。こういった部屋も良いな。なぁ、イザークよ』

 「そうですね。いずれ定住したら……でしょうか?」

 一杯やって本日の宿【従魔の友・ガべゾン支店】に帰還。さすが高級、従魔も泊まれるお宿だ。

 その高級宿の最高の部屋。部屋専用の風呂が付いていた。それも十分に足が伸ばせるほどの。湯も張られており早速と風呂へと向かうフジ。その足取りは軽い。

 ”ちゃぷり”

 『うむ。定住か。まさか、我が一所ひとところに落ち着くことになろうとはなぁ。ふぅうぅぅぃ』

 その口調、少々爺臭いが。彼がかなり長い生を生きてきたのだろう。あながち間違えでもないかもしれない

 浴室の外でタオル等の準備をしていたイザークが

 「何かご不満でも?」

 と、風呂を満喫中のフジに問う

 『特にない。あえて挙げるとすれば、力を存分に振るえぬ事よな。我は群の頭ぞ? お爺は勿体付けてからに。己は好き放題暴れてな!』

 「は? は、ははは……。更地になっちゃいますから……」

 『イザークよ……お主もか? 加減くらいするわ! しかし、人が恐れるほどに大暴れしたのか? 我の同族が?』

  イザークにとっては大猪の首を楽々落としたり、前脚の一振りで人を粉微塵にした時点で十分に恐れの対象でもある。それに伝承が加わればなおの事。

 その伝承にしろ、人が余計なちょっかいを出したのが原因だが。

 「ははは……」

 ……

 

 「おはようイザーク。どうだった? 高級宿は?」

 「え、ええ。料金相応? かえって緊張しましたよぉ」

 『うむ。従魔用の食事なぞと侮っていたが、なぁに、工夫を凝らした美味いものであったぞ。素材が良いな。少々味付け等は物足りなかったが及第点だな』

 と、頷くグルメの魔獣。

 「それにしても、従魔の宿なのに普通のお客さんが多いのには驚きましたよ。むしろ”動物使い”の方が少ないくらいでしょうか?」

 「ああ、飯も美味く、清潔だって有名だからなぁ。ほれ、都度都度ベテランの”洗浄”使いが清掃するだろう?」

 「なるほど。”洗浄”しないと次、入れないものなぁ。……フジ様がいたあの部屋……大丈夫なんだろうか?」

 何せ特級の魔獣様だ。イザークの心配もわかる。

 『問題ない。入る時も出る時も”洗浄”して来たからな。あすこは我の縄張りではない』

 「それでは店の主も驚いている事でしょうな。今まで以上に綺麗になっていると。して、フジ様、昨日の尾行者はどうでしょう?」

 顔を上げ、鼻、そして耳で周りの情報を探る。

 『さて。今のところはおらぬな。少し歩いてみるか』

 「ええ、朝市に行ってみましょう!」

 『うむ。先ずはそこな串焼きからだな!』

 ……

 

 『諦めたか。付いて来る者はいないな』

 市場の中を物色しながら歩く一行。偶に顔を上げ気配を探るフジ。

 が、昨日の穀物商からの尾行者……敵対者の気配は感じないようだ

 「そうですか。後は、城門を抜けてからだな。さて、どう出てくるか」

 「ですね……。でも、俺達、何処から出るか判らないですよね?」

 こういった町は東西南北に大門が置かれている。一般の者はその門を出入することになる。

 「さてな。門衛を抱き込んでいるか……」

 「あ……ダンジョン行くって……俺」

 交渉時にダンジョン攻略の備蓄と。となれば

 「……北門だな。門を出たあたりで待っているかもしれんな」

 『お爺達は何処にいるのだ?』

 「はい、北門の先で野営をしているかと」

 『ふぅん。なら、よかろう。うん? イザークよ! 例の腐れ魚(川魚の燻製のオイル漬け)! この先にあるぞ! 臭うわ!』

 「了解です! って、腐っていませんよ、フジ様ぁ」

 

 こまごまとした調味料、塩、野菜。ダイインドゥ一家のお土産の酒樽を購入。

 アールカエフには串焼きを購入し町を出る。

 

 『うん? ……居るな。……三人か?』

 門から出たあたりでピクリとフジの耳が動く。

 出てすぐの場所には飲食や土産物の出店やらもあり人出も多く見分けはつかない。

 が、フジが言うのだ。間違いない 

 「……随分と少ないですね。先に集団が待ってるとか?」

 チラとガハルトに目を向ける。ニヤリと強面を歪める。この漢相手に? たった三人で? と。集団の待ち伏せがなけりゃ、只の自殺志願者のアホだと。

 「例の穀物店に関係あるのか……。ここはひとつ生け捕りにして問いただすか……」

 「そんな事する主人には見えませんでしたが……。まぁ、人は見かけによらないと言いますし?」

 「どのみち補償で穀物が手に入ろうよ?」

 「それもそうですねぇ」

 『ここにおっても仕方あるまい。行こう』

 「「おう!」」

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