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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
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うむ! 我も行こう! (ガべゾンの町に)

 …… 


 特に軍に追われることも無く、国からの接触も無し。いまのところ順調に北上することができている。

 もっとも、警戒し町、村にはどこにも寄らずに素通りしてきたが。

 次の町はガハルトのいう大きな町【ガべゾン】となる。ここでは小麦の買い付けを予定している。国からの払い下げだからどうしても大量に購入するには手続きが面倒くさい。

 

 ガべゾンの町と思われる城壁に囲まれた大きな町が見えて来た。高台に城がありそれを取り囲むような住居群。東に広がる穀倉地帯。今まで通って来た町でも最大規模だ

 

 「おお? デカい町じゃのぉ!」

 「うむ。カブジリカ国でも最大規模の町じゃな。昔、王都じゃったそうだぞ」

 「ほぅ」

 「何代か前か、内陸に遷都してのぉ。よっぽど”山”が怖かったんじゃろうさ」

 町の東、緩衝地帯を挟み、【剣の山脈】の山々の裾野が広がる。遠くにキッチリ、【不死の山】も望むことができる

 「ここいらは、フィヤマやらと違って山の防御壁も生きてるのじゃがのぉ。もっともフィヤマはその壁の向こう側にあったがの」

 ダイインドゥの説明が続く

 「ほーーん。是非とも仕入れをしたいが……」

 「じゃ、俺が行って来ようか」

 と、ガハルトが進み出る

 「俺も付いていきますよ。ガハルトさん」

 こちらはイザーク

 「うん? イザーク? 俺一人ならいざってときも血路を開いて出てこれるが?」

 「買い物、何買うか判らないでしょ? ガハルトさん?」

 「……小麦だろうが? それくらいわかるわ」

 「その小麦、大量に買うとなると面倒ですよ。それに、どうしても獣人族だと……」

 「だな……。じゃぁ、イザークと二人で行ってくるわ」

 「わしも行こう!」

 「カンイチは駄目だ。アール様の婿だし? すぐバレるわ。それにお前が来ると必ずアール様もくっ付いてくるだろうに。大人しく留守番してろ」

 「ええ、カンイチさん俺達に任せてください」

 「……うむ」

 確かに。今までの隠密行動が無駄になる。国境等の重要拠点であればガハルト、イザークから、アールカエフ一行と辿れるかもしれないが、普通の町であれば本人がいなければ気づくことは無いだろう。

 一応は機密扱いだ

 『我も行こう!』

 カンイチの陰からのそり。そう、フジだ。

 「え!? ふ、フジ様も?」

 『うむ! 我も行こう!!!』

 「……情報も仕入れたいしな。ま、大丈夫だろう」

 ……


 「ほう? 拠点替えか冒険者殿?」

 「いや、補給だ。【アマナシャーゴ】までダンジョン覗きに行く途中さ」

 【ガべゾン】の町の入町審査。そこに大きな虎人と”狼使い”の青年のパーティの姿が。

 「ほう! ダンジョンかぁ。で、そっちのもか?」

 「ああ。まだ見習いでな。今回は荷物持ちだな」

 「良かったな! 兄ちゃん。”金”と組めて!」

 「それに、狼使いか! 中々に賢そうだな! その狼」

 「え、ええ。ちゃんの代から。その爺ちゃんのお陰で組むことができました」

 「へぇ、立派な爺さんだったんだなぁ」

 「はぁ。まぁ?」

 ……


 「さて、無事に町に入れたが。イザーク、狼使いはちゃんの代からか? くっくっくっ 確かにな!」

 「まぁ、嘘じゃ無いし? 嘘だとポロっとバレちゃいますから」

 確かに”狼使い”の師はカンイチだ。それに爺さんも本当だ。

 「先ずは、宿ですよねぇ」

 「おう。冒険者ギルドの付近で探そう。ギルド行っても身分証は出すなよ。おそらく追跡してるだろう」

 「了解~~」

 『うん? 飯は?』

 「先ずは宿をとります。……ギルドの安宿じゃ駄目ですよねぇ。ガハルトさん?」

 「ああ、フジ様だぞ。ほれ、【従魔の友】だったか? カンイチからスタンプカード預かってるだろ? この町にあると良いな」

 「そうですね。【従魔の友】かぁ。あそこって聞くところ高級宿ですよねぇ。さすがカンイチさん……」

 「カンイチは特殊だ。気にすんな」

 「そうですけどぉ。なんか……ズルい」

 「くっくっく。鍛錬あるのみさ。死にたくはなかろう?」

 「そ、そうですね」

 『安心しろ。イザーク。我の目の届く範囲であればみすみす死なせはせぬ』

 「あ、ありがとうございます! フジ様!」

 おいおい……そんな眼差しをイザークに向けるガハルト。己でなんとかせよと。フジにも一言いいたいところだが奉るフェンリル様だ。口を噤む

 『で、その宿とやらは? む! とりあえずあすこの屋台だ! 行くぞ!』

 「は、はい!」


 ……

 

 「た、高いですねぇ……朝食だけなのにぃ……」


 【従魔の友】言わずも知れた高級宿だ。しかも、狭いケージにフジが入る訳もなく、従魔と共に宿泊できる上位の部屋に。イザークが普段使用する宿の何日、いや、何週間分か。

 

 「くっくっく。俺は、普通の処に泊まる。フジ様が一緒だから一人でも大丈夫だろう?」

 「え、ええ。替わりますぅ?」

 「ふふふ、楽しむと良いだろう。こんな高級宿そうそう泊まれんぞ! イザーク。はっはっは」

 『飯は?』

 「そうですね。行きましょう! 残念ですけど例のギルドの系列店はないようですね」

 『であれば、こっちだ! 蠱惑的な臭いがする。急ぐぞ!』

 「は、はい!」

 ……


 「さすが、フジ様の嗅覚ですな!」

 

 今日の昼食は大きなヤマバトの塩焼きだ。

 大きさも鶏ほど大きく大変脂がのったものだ。

 それを、炭火でじっくり焼いたもの。皮目の香ばしさだけではなく、落ちた脂の燃える燻製効果で、更に一段上の料理へと。

 イザークとフジはそれにパンと、野菜炒め、野菜スープ。ガハルトはビールで。

 

 『イザークよ。この香り……』

 「ええ。なんでしょう? この調味料。独特の匂いが……でも、癖になる?」

 『うむ』

 「ちょっと聞いてみますね」

 

 それで今、話題になってるのはスープの風味付けの香り油だ。

 アユに似た魚を内臓ごと塩浸けにし、いぶして燻製にしてから、植物油に付けたものだ。燻製のオイル漬け。魚の内臓から出る香り、そして、燻製のチップの香りが油に移るという訳だ。そのままでは臭いが、風味付けにごく少量用いるのがキモだ。

 

 『腐ってる臭いでもなく、ただの塩漬けでもなく。中々に面白き味よ』

 「でも魚の塩漬けって聞きましたが……帰るまでに探してみましょうか」

 『うむ。そうしよう』

 「すっかり料理人だなぁ、イザークよ……」


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