表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
256/520

こりゃ無いわ。やりすぎ? (風きりのナイフ)

 …… 


 アールカエフの勧告を受け兵たちに動揺が走る

 「お、お前たち?」

 伯爵の声が合図だったかのように

 ”わっ!” 

 と、一斉に駆けだす歩兵たち! 手にしていた伯爵家の紋章旗を放り、伯爵の心の安寧を担保していた大きな盾を放り。散り散りに瓦解する


 「なあぁあ! お、お前たち! どこに! どこに行くんじゃぁ!」

 伸ばした短い手は空を掴む。

 キョロキョロと周りに視線を向けるも既に兵の姿はない。

 

 「あらら! 盾、全部無くなっちゃったね! よぉおし! じゃぁ、行くぞぉ! そだ! 【風きりのナイフ】よ! その力を示せ! ……! ”風殺陣”!」

 横薙ぎに振られたナイフ。あたかも儀式のように。

 ひゅん! 爽やかな風が騎士たちの間を吹き抜ける。ふわり。馬のたてがみが揺れる

 

 ”どっぱぁ!” ”どおばぁ!” ”ざぱぁ!”

 

 その無数の見えない風の刃が馬の上で手綱を引いて姿勢を保とうとしていた騎士3人を鎧ごと、細切れの肉片へと変える。その風の勢いのまま後方に撒き散らされる騎士だったモノ

 「なぁ? んんなあぁぁ!」

 自慢の騎士が一瞬で肉片に。逃亡を忘れ、ただ立ち尽くす伯爵……

 もっとも不摂生の最たる伯爵様だ。馬車までたどり着けないだろう。たどり着けたとしても御者や、途中で買った娼婦たちも既に逃げていない。

 

 「ぅおっほぉ! すごい威力ぅ! いくら風の精霊様が陣取ってるからって……こりゃ無いわ。やりすぎ?」

 手に握られた【風きりのナイフ】に目を落とすアールカエフ。

 「す、凄いのぉ……アールよ……」

 「あ、ああ」

 さすがの戦闘狂のガハルトもドン引きだ。先ほどまでの燃え上っていた闘志の炎もどこかに。

 アールカエフの操る風に吹かれて消えてしまったようだ。

 「い、一発で粉粉……? 人が……」

 と、イザーク。味方なのに顔が真っ青だ

 「ほうほう。精霊様の後押しがあるとはいえ凄い威力じゃなぁ」

 「使用者のアール殿も術者。高位の”風使い”。相性もいいのだろうねぇ」

 「俺、見えないもんなぁ。風は」

 「うん? 矢の軌道を見ておるのじゃ。その内見えるようになるやも知れんぞ?」

 「そうだな! 親父! 鍛錬しよう!」

 こちらはドワーフ一家。散った騎士より、武具【風きりのナイフ】に興味津々だ。

 

 「ま、いっか! ナイフも喜んでるしぃ? 久々だから張り切ってるのかな? はい! じゃぁ! 行ってらっしゃい!」

 再びナイフが振られる

 

 ”ざばばぁ!” ”どばばぁ!” ”ばしゅしゅ!”

 前回同様、馬上の3人の騎士が消し飛ぶ。

 

 「な! なぁ! ななあああ!」

 立ち尽くすフックラーギ伯爵。その叫びも風の中。

 「ひ、ひぃ! ひぃい!」

 その場に頭を抱え這いつくばるハンセン将軍


 「お、おい、アールよ? 大丈夫か?」

 「うん? 問題無しよ? う~~ん。カンイチが魔力込めたからかなぁ。こんなに威力無いはずなのに? 精霊様の増強ブーストがあったとしてもね。うん。謎だ! ついでにやっちゃうね」

 「お、おい」

 アールカエフに触ろうにも風圧で近づけないカンイチ。そんなに強い風は吹いていないのだが

 「別にぃ。僕、人族じゃぁないし? 変?」 

 「い、いや、相手は屑。変じゃないがの。アールにやらせるのはのぉ……」

 「あっは♡ 気持ちだけでも嬉しいし? でもねぇ、僕達の幸せを奪いに来る奴は……細切れだね!」

 三度、四度と振られるナイフ

 落馬していた騎士たちの生き残りが肉片に代わる。 


 残るはフックラーギ伯爵とハンセン将軍のみ。

 「ま、待てぇ! 待って! エ、エルフ殿ぉ! エルフ……様ぁ! 降参! 降参じゃぁ!」

 短い両手をあげ、降参の意を示す伯爵。ハンセン将軍も続く。二人とも顔面蒼白だ。伯爵などはだらしなく失禁してるようだ。足元に水溜まりが広がる


 「ええ? 今更? 遅いよぉ! 降参なんてダメだよ? るって兵たちと約束したしぃ? 死んじゃうって予言してた伯爵と将軍が生きて帰ってきたら、もう、ビックリだろう? そして逃げた兵たちに難癖つけて処刑するだろうし? 敵前逃亡とか? 兵たちが可哀そうじゃん?」

 やれやれと降伏を拒否するアールカエフ。魔法もまだ健在。ふわふわと服の裾を揺らす。

 「し、しない! しない! や、約束しよう! だ、だからわ、儂を! た、助けよ! 金はやる! もう追わぬ! なぁ! わ、儂だってかわいそうであろう? のぉ! そ、そうだ! 二人じゃ不味けりゃ、こ、こいつ! 能無しハンセンをくれてやる! コイツを殺せぇ! なぁ! それで鬱憤も晴れよう? な! それでよかろうが!」

 「伯爵! あ、貴方という人は! この騒動、すべての発端でしょうに!」

 「ええぃ! うるさいわ! 儂の代わりに死ねぇ! な、なぁ? これでよかろう? な? な!?」

 「伯爵!」

 内輪揉めを始めた二人。伯爵の頭の中ではハンセンが死んで自分が助かるという謎の方程式が確立されているようだ。アールカエフに向かい満足に頷いて見せる。

 アールカエフの汚物をを見るような視線に気が付かずに。

 「はぁ? 意味不明だよ? 君ぃ。何で首魁の君を逃がして将軍殺して解決なのさ? だぁめ。二人とも死んでもらうし? ほら! 可愛い義弟君が地獄で待ってるよ? ほい!」

 伯爵に向けて突きのように繰り出される【風きりのナイフ】!

 

 ”しゅどぉ!”

 

 その吹き抜ける風は両手を上げ、伯爵の剥き出しになったでっぷりと膨らんだ腹、臍あたりに吸い込まれる! 臍を中心に波打つ脂肪、渦を巻くように皮膚、脂肪、筋肉、内臓の悉くの欠片を後方にまき飛ばす!

 

 「ひっぼっぼっぼおおお! な! なぁ!?」

 胸部はそのまま……だぶついた腹部がごっそりと消失する。背骨といく筋の筋肉で辛うじて下半身がくっついている状況だ。

 周りに渦巻く風の力か? それでも崩れずに立姿勢をキープする伯爵。

 ”どちゃり”

 が、肉のたっぷりついた尻の重さに耐えかねてか背骨が千切れ、下半身が落ちる……

 隣にいたハンセン将軍、顎が外れたようにい大口を開ける。眼もこぼれ落ちそうだ。

 

 「はばあばあばぁ……。は、腹ぁ? 儂のぉ? 儂ぃ、儂は、伯爵ぞぉ!」

 怒りを表すようにブンブンと手をばたつかせる伯爵。できの悪いおもちゃのようで滑稽だ

 「おお! 思った通りだ! 突きの方が威力あるなぁ。範囲も狭いし使い勝手がいい。でも、ダンジョンじゃ使えないな。こりゃ。うん? 君? 末期の言葉そんなんでいいの? じゃ、さようなら!」

 アールカエフが術を解いたのだろう。伯爵の周りに吹いていた風が止み、宙に浮いていた伯爵の上半身が先ほどげた下半身の上へと落ちる。

 「はぁ、はぶぅ……。はぁぶぅぅ…………」

 千切れたところに伸ばされる短い手……何も掴むことは出来ない。あるべき腹が無い。愛着のあったでっぷりとした腹が。指先に触れるのは何やらヌルつく柔らかいもの……

 伯爵の顔に絶望が張り付き、そのまま目を見開いたまま……    <つづく>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ