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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
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そんなモノ、己の腕だけだろう? (領軍と)

 …… 


 ”がらがらがら……”

 しばらく待っていると、二頭の馬に引かれた檻馬車が到着。その乗せられている虜囚の中に見知った顔を見る。中には保護し、引き渡した時よりも汚れているものもいる。

 やってきた馬車を見て、

 「はぁ? 罪人でもないのに何で檻に入れとるんじゃ!」

 カンイチの怒声。

 「ひ、ひぃ! で、ですので、カ、カギはかけていません! 扉も開けております! 適当な大きさの馬車が無く……しかたなく」

 「落ち着けカンイチ……で、もう一度聞くぞ。なんで、昨日より、生傷が増えているのだ! 貴様ら! 同じ人族! 種族であろうがぁ!」

 落ちつけとは言ったが、それ以上、カンイチより気が立ってるガハルトの一喝!

 さしもの面白がって観ていた野次馬たちにも嫌悪の表情が広がる。そして、

 「同じ目に遭わせろ……」

 「そうだ……」

 「やっちまえ!」

 「盗賊の仲間だろう?」

 「殺せ!」 「やっちまえ!」 「どうせ人じゃねぇ!」

 「殺せ!」 「殺せ!!」 「殺せ!!!」

 誰からでもなく怒りの声が上がる。その声が号砲の如く門に木魂す

 「ひ、ひぃ!」

 住民の近くにいた領兵の一人が大衆に飲み込まれる。また一人と……

 

 「止めい!」

 カンイチの一喝で喧騒が収まる。

 「こんな屑共でもあんたらが殺せば、妙な称号が生えるかもわからん。それに、実行犯かどうかもわからん? 中には真っ当な奴もいるはずじゃ。普段、忠実に職務に当たってる者もいよう?」 

 「……」

 「……」

 「実行犯にはそれなりの罰が下ろう。収めてくれ」

 ”どじゃ”

 ”どさ”

 衆人の間から吐き出される、領兵二人。どうやら軽傷で済みそうだ。

 

 商業人ギルドの長、ベルナールが馬車に駆け寄る。

 虜囚の方々もギルドの長の顔を見て安堵の表情が広がる。商人ギルドのスタッフだろうか、馬車を降りるのに手を貸す。

 「貴女は……ガーランの処の? と、ということは、ガーランは……何という事だ……」

 「ギルド長……これは由々しき事態……」

 「貴女は……」

 虜囚の中に何人かの知り合いを見つけたようだ。

  

 「助かったぜ、旦那方」

 「うん? セクム殿? 貴殿もか?」

 昨日助けたキャラバンの生き残り連中も一緒に捕らわれていたようだ。

 「ああ、昨日突然な。事情が聞きたいと言われてな。そのまま牢に直行だ。……馬車で聞かせてもらったよ。子爵が関わっていたってなぁ」

 「ああ。ここの代官も、領主様も一枚嚙んでたという話じゃ」

 「みたいだな。うちのギルド(冒険者ギルド)にもどうやら裏切り者が居そうだし。盗賊の前に置いて来たってな。まったく……この町は景気が良いからなぁ」

 「じゃぁ、なおのこと、税収で満足せんとな」

 「違いない……何を信じたらいいんだか……」

 「そんなモノ、己の腕だけだろう? 冒険者ならばな!」

 「……ガハルト?」

 「その通り。が、貴殿のように堂々と言いたいものさ。ガハルト殿」

 ……

 

 これだけの騒ぎになれば、冒険者ギルド、商人ギルドも国に対してお伺いを出さないと示しがつかない。ついでに鍛冶師ギルドからも出るそうだ。

 領主にしては痛恨の失態になるだろう。もちろん身から出た錆だが。


 「どけ! どけぃ!」

 「うん? 今度は何じゃぁ?」

 「さてな。いよいよ領主様でも出て来たか?」

 群衆の壁が割れ、現れたのは馬に跨った、今度は武官だ。領軍の将軍と、お付きの武官が二人といったところか。

 「これは何の騒ぎだ!」 

 「誰か説明を! うん? ……。……! 代官? シヒノ殿?」

 門のわきに転がる死体を。首の骨が砕かれた男爵の死体を見て驚く一同。

 「だ、誰だ! 狼藉者は!」

 馬を御しながら吠える将軍

 「お待ちくだされ、では私が集め、見た情報を。どうぞこちらへ。ハンセン様」

 「こ、これはベルナール殿? うむ、伺おう……」


 カンイチ達の訴状(控)、被害者たちの証言。賊たちの鑑定書(再鑑定)。子爵の首と、鑑定書は無い。

 そして代官の対応等が語られる。


 「むむむ……」

 「将軍……」

 「し、しかし、将軍! 王国子爵、代官――男爵が、冒険者風情に弑られるとは由々しき事態!」

 若い武官が叫ぶ

 が、回りの住民の顔は冷たい。何を言ってるのだ? と。カンイチの制止が無ければ、真っ先に袋叩きになっているだろう。

 「重ねて、実情、代官の補佐の者が書状にしたものもあります。むしろ、糾弾されるのは領主の方かと」

 「其の方らが下手人であろう! 将軍、拘束しましょう!」

 「うん? この国は盗賊が正義で、退治したら犯罪者かのぉ。驚きだわ」

 「何を! ガキがぁ!」

 「こればかり……じゃな……」

 15歳のカンイチ。日本人として体格は普通か、大きい方だが、この世界、欧米人のように少々大きい。

 「くっくっく。仕方あるまい。十分ガキだ。カンイチ。くくく。で、将軍殿と言ったかこの後はどういたす? 我等は盗賊を退治しただけ。貴殿はさっさと、代官の家なりを調べて子爵の首を探すがよかろう」

 「だ、だまれ! 冒険者風情が! 将軍!」

 「うむぅ……」

 一触即発。将軍の返事……号令次第で、ここは戦場に。

 

 「はぁふぅぅ。うぅん? ありゃ? まだ町じゃん? どうしたのさ? カンイチ? ……う。……お腹減ったかも?」

 馬車の荷台からひょっこり顔を出すアールカエフ……目をこすりながら。

 「……おう? 随分と大人しいと思ってたら……。寝ておったのか? アールよ……今、取り込み中じゃ」

 「うん。寝てて良いって言ったのカンイチじゃん。で? ……何やら大事? はぁふぅ」

 「うんむ。この国は、盗賊を狩ると捕まるそうじゃ。子爵と領主が盗賊のとんでも国家じゃからな。いま、ワシらを捕えようか、というところじゃな」

 「ふ~~ん。じゃ、そんな盗賊の肩を持つ役人なんか斬っちゃいなよ。一味でしょ? そんなのに捕まったら殺されちゃうよ。あ、ああ! ぼ、僕も汚されて……ああ。カンイチぃ~~」

 およよ……と、大げさにしなるアールカエフ。

 「そんなことはさせん!」

 「じゃぁ、そうするか。カンイチ……くっくっく」

 腰のトンファーを撫でるガハルト。彼は最初からそのつもりだ。

 「やれやれじゃな。ガハルト殿は……」

 呆れ顔のダイ。そういいながらも、そっと、マジックバッグに手を入れる。

 「うん? かえって解りやすくて良いだろうが! アンタ!」

 ディアンも同じ。イザークはクマたちの手綱を解く。イザークの周りで待機するクマ達。

 ミスリールは荷台の中から将軍の頭部に鉄矢の照準を合わせる。

 後は、ハンセン将軍の采配次第

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