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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
異世界に立つ!
24/520

審査

 ……


 「おい、どうしちまったんだ? 一体……あのおやっさんの態度は」

 「さぁなぁ。少々時間が掛かっちまった。隣りで軽く腹に入れようか、カンイチ。ハンス、お前、何時までも油売っていていいのか?」

 「ここで、はい、さようなら。は、あるまいよ。カンイチの住むところ決まるまで付き合うつもりだ」

 「おやっさんが”本物”と言ってるからなぁ。俺の権限では”銀”までしかだせん。これでも破格の待遇だ。納得してもらいたいな。カンイチ」

 

 特にランクなどどうでもいいカンイチ。早い所、腰を落ち着かせたい。

 「特に思うことはない。お手数おかけします。情報収集、そして、農地の目途が立つまでの手段じゃから」

 と、頭を下げる。

 「は? 農地?」

 「ああ。農園を開く準備だそうだ。それにゃ、身分書も金も要るだろう」

 「ま、まぁ、引退したらそれも良いだろうさ……」

 「……うむ」

 

 今すぐにも耕したいのだが……。そう口には出さないのは順調に”身分書”が発行されようとしているからだ。余計な事を言ってチャラになっても困る。

 とりあえず身分証。何が何でも身分証。そして情報収集。農業をやるにしたって農具だって必要だ。土地を買うとなれば、さらにまとまった金も必要だろう。

 …… 

 

 ギルドの両隣、その先数件、向かいも食堂になっている。依頼から帰って来た冒険者達を相手にした商売だろう。食事したり、打ち合わせに使われたり。冒険者が中心の町だけある。

 ギルドから二軒先、中でも少々洒落た店に入る。

 

 「ほぉう。喫茶店かぁの。日本茶……無いじゃろなぁ。どうも一日一杯は飲まんと調子がでんわい」

 と、メニューを見ながら呟く。

 「うん? どうしたカンイチ? 酒飲むか? 酒!」

 「おい、ハンス、まだ早いぞ。これから打ち合わせ、ジップが早めに帰って来ると良いが……。うん、紅茶でいいか?」

 「紅茶……か。緑茶はあるかの?」

 「りょくちゃ? なんだそりゃぁ」

 「聞いたことないな……。茶に詳しいエルフ族辺りなら知っていそうだが……」

 「では、紅茶を」

 ――やはり無いか。が、とりあえず”茶の木”はある。であれば己でこさえればよいな。

 と胸をなでおろすカンイチ。

 

 ちょっとテンションが下がったところを、ウェイトレスの女性が心配して声をかける。

 少年が、この町の権力者に囲まれているのだから。

 「あらぁ、お偉いさんがサボっていて良いの? 君ぃ、この大人たちに虐められてるの?」

 「人聞きの悪い。うちの期待の新人だ」

 「へぇ~そうなの?」

 「ああ。適当に焼き菓子も頼む。ギルド長様にツケといてくれ」

 「おい!」

 「ところでハンスさん。この後は?」

 「うん? どうすんだリスト? ジップ? あの”金”のか?」

 「一応、武器の扱いをな。気を悪くしないでくれ。実力を見たい」

 そろそろ休憩したいところではある……。が、こうして自分に付き合ってくれているのだ。文句は言えない。ぐっと言葉を飲み込む。

 「ふ~~ん。で? 住むところはどうすんだ?」

 「住むところか? う~ん。試験の後な……」

 「は? お前もまだ信じてねぇな? ドルのおやっさん言ってたろうに」

 と、ハンス。

 「しかたないでしょう、ハンスさん。ワシだって。そうそう信じませんよ」

 「……カンイチ。ほんと、爺臭いなぁ、お前は」

 ――ジジィじゃもの

 と、心の中でごちてみる。

 

 お茶をご馳走になり、再びギルドへ。入る前にクマたちの所へ。

 「もう少し我慢な。これが終わったら、金も手に入るじゃろ。そしたら飯にしよう」

 ”ぅわぅ” ”ぅおぅ!”

 「本当に良く言うこと聞くな。しかも良い毛並み……こほん」

 言葉を切り、咳払いのリストギルド長。

 カンイチのジト目に気が付いたようだ。クマ、ハナは子のようなもんだ。皮を剥がされたらたまらない。

 

 「そろそろ人も集まるだろう。余計な手出しする奴が出そうだな……お前さんの印でもつけとけよ」

 「そうだな。キャロル! 私の名で立札を。この狼に手を出せば厳罰と!」

 「は~~い。了解です~~。可愛いですねぇ。狼も」

 店舗の奥から元気な女性の声が。ギルドの敷地内。ギルド長の庇護なら大丈夫だろう。

 

 「よしと。”銀”ランクだと……ジップか。キャロル。ジップが戻ったら私の部屋に通してくれ」

 「はい? ”銀”の昇格試験ですかぁ? 聞いてませんが?」

 「今、”金”ランクはジップしかいないだろ? まともなのは」

 ――まとも? 少々引っかかるが……それとも高ランクの冒険者は一癖二癖持ってるのだろうか。

 どの分野もそうかと納得するカンイチ。

 「悪いが、もう少し待ってくれるかい。ここ毎日顔出してるから来ると思う」

 コクリと頷く。

 「へぇ~~~~? ”銀”の試験ですかぁい? ギルド長? まさか、そのガキで?」

 受付嬢のわきから、こちらを窺っていた小男が前に出る。

 「ちっ、いたのか? パドック。あまり騒いでくれるなよ。これは”警告”だ!」

 「へぇ? そいつは規約違反では? ギルド長と言えどぉ。隠し事はいけねぇなぁ。ルーキーだろぉ? そいつぅ~~?」

 「ちゃんと後で公示はする」

 「へぇ~~? 本当ですかい? こっそり紛れ込ましたり?」

 わざと大声で”宣伝”するパドック。面白おかしく、身振り手振りを付け加えて。

 その”宣伝”を聞き、

 「なに? ルーキー? いきなり”銀”かぁ?」

 「へぇ? そりゃすげぇな!」

 と、帰ろうとしてた者達、また、手続きに来た者もパドックの口上を聞いて集まって来る。

 

 このパドックという男。背の低い、斥候職だが何分騒がしい。その口が災いしてか、チームや、斥候の依頼が無く、採集や、町の中の雑用くらいしか仕事の無い。

 ブンブンまとわりついてうるさい様から『アブのパドック』という、不名誉な二つ名を拝命している”鉄”ランクの冒険者だ。


 「チッ――。余計なことをこの野郎!」

 「パドック、貴様……」

 「へっへっへぇ~~」

 ギルド長とハンスが忌々し気に吐くも、当のパドックはいい気分。どこ吹く風。こういった注目を集めることが至極真っ当と思っている。そして、己の名を知らしめようと。

 もう十分、『あぶ』と知られているのだが。

 

 「なんだか妙な流れになって来たのぉ」

 どこか他人事のカンイチ。特にパドックに思うところはない。元々、人の前で手合わせをと聞いているし。かえって好都合ではないかとすら思っている。

 口に出さないのはそれ以上の確執でもあるのだろうと。この辺りは老練なお爺のカンイチだ。

 ……    <つづく>

 

 ここで冒険者ギルドについて触れておこう。

 この世界の自称”冒険者”と言われる職業の者が属する組織だ。”冒険者”と都合よく使っているが、”何でも屋”と言ったところか。

 仕事の斡旋が主な業務で、依頼のとりまとめ、報酬の支払い、素材の買取等を行う。それぞれの国が組織していたが、護衛任務の円滑化、強力な”魔物”等に協力、対処するため、国境を越えて統合された。

 

 冒険者自体、採取、魔物の素材を集め、納税に寄与する”金の卵を産む鶏”だ。そういった利権を生むところはいろいろと湧くもの。国、貴族などの権力者……。そもそもが国の施設だった当時の悪い風習が伝統になっている支所も多い。国……というより貴族との関係も支部それぞれというのが現状である。

 

 憲章では国に属さないこととなっており、その”武”は主に”魔物”に向けられるとある。戦争は”軍隊”と分けられてはいるが、”武力”には変わりない。

 【冒険者】は徴兵に従わなくともよいことになっているが、多くの国は戦争時ともなると、己の国の兵の数に強制的に加える。そして有名どころの冒険者が居れば、平時でも内外に大きく告知し、抑止力として利用している。


 ”冒険者”その技能、経験等を加味し、ミスリル、金、銀、銅、鉄の5段階。それと見習いがある。大抵のものが、見習い期間で仕組みや、武具、己の適性を知る。が、大した腕も根性も無い子飼いの者を引き立て、己の派閥を固める。こういった悪習も多々ある。何処の世界も一緒である。

 そのような仕組みの中、今回のカンイチの、いきなり”銀”ランクというのは特例中の特例だ。

 

 余談であるがミスリル等の高ランクの冒険者となれば、指名依頼も多数。そういった冒険者が旗を振り、同志を集い、”クラン”を形成する場合もある。これは、小さな冒険者ギルドのような組織で独自で依頼の受注、素材の販売等を行っている。 閑話休題……

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