こき使われそうですね……俺
……
「はぁふぅ……。むにゃ……。うん? 何が良かったのかね? イザック君……」
「イザーク君じゃ……。顔洗ってこいアール」
「うん? おお? 了解……。ベーコン大盛ね」
……
「へぇ! これが昨日のナイフ!? こりゃ……風の上位精霊様の気が込められてるのかなぁ? 今なら、ビンビン感じるよ! んじゃ、これ貰うね! どうせ、僕以外使えないでしょ? ”風”見えないと、自分の足とか飛ばしちゃうかもよ?」
「物騒じゃな……なるたけ使わないようにの。……守り刀に」
「……うん! カンイチの気持ちは分かった! 任せたまえ! ナイフ使う前に魔法でポン! だ!」
「いや、そういう意味じゃないのじゃがの」
「……判ってるよ。護ってね」
「……うむ」
見つめ合う二人。
「はいはい! じゃ、冒険者ギルドの報告しますよ!」
”ぱん! ぱん!”と手を打ち鳴らし、茶番は終わりとでも言うように立ち上がるイザーク君
「おいおい、イザークよ……」
「こりゃ、また随分と仲が近くなったねぇ。アール殿。くくく」
「そりゃぁ、僕達、夫婦だしぃ? 落ち着いたらバンバン子供つくるよ! 村が出来るくらいに!」
「ほっほっほ。そいつは楽しみじゃな。カンイチよ」
「……おう」
「では。はじめますね!」
イザークの仕切りで、冒険者ギルドで集めた情報が報告される。報告次第で今後のルートやスピードにも影響が出る。
「特にギルドは問題等は無いようですね。本部からなんか話が来てるとも思ったんだけど……。一応、国境のない組織ですから。特にギルドから接触も無かったし。ついでに、周辺の危険な魔物の発生等も無し。ゴブリンもこの辺りじゃ問題になっていないみたいですね」
「そうだ。至って平穏……と言ったところか。が、俺としては、 「湿地に行きたい! ……じゃろ?」 ……おう? 良くわかったなカンイチ?」
「わからいでか。が、目的があってじゃぞ? 面白そうだから行くってのは無しじゃ。死んじまうぞ」
「そうじゃなぁ。備えを以ってあたろう。外国じゃしの」
とダイも賛同の声を上げる。
「湿地……かぁ。泥でズブズブなんだろぅ? オレはあまり行きたくないなぁ」
普段は先頭切って戦斧を振るディアンも尻込み。
「賛成~~。ガハルトさん、オレ達泳げないぞ?」
そう、ドワーフ族は見た目以上に”重い”。筋肉やら骨の密度が違う。故に泳ぐのも苦手だ。
「うむ……了解だ。獲物の選定をしておく」
「はぁ、行かないって選択肢はないのかい? ガハルト殿?」
本当に嫌そうに声を上げるディアン。
「そりゃぁ、行くだろう?」
――ここにも中毒者がおるのぉ。戦闘にじゃが
ダイや、ディアンの酒飲む時とダブって見えてる。
「ま、強制参加ではないで……ガハルトさんの狩猟計画次第じゃな。ちゃんと出せよ」
「おうよ! 任せておけ! 楽しみなダンジョン前に怪我してもつまらんからな! じっくりと考えて出すさ!」
「だからぁ……行かない……は無いのかよ? ガハルト殿?」
「ディアンさん、そこはカンイチさんの言う通り、ガハルトさんの計画次第ということで。後は……東門の先に畑があって、兎や猪の駆除依頼が出ていました。常設依頼なので兎狩り行った時には多少だけどお金になります。後……なんかありましたっけ? ガハルトさん?」
「特になし! じゃ、ギルドに新たな情報収集に行ってくる!」
「おいおい……。親方の方は?」
「ワシか? ガハルト殿の依頼もあるでの……鍜治場に行ってこようと思うている。ま、大抵はそこにいるで。何かあったらそこにの」
「じゃ、オレ達は買い物行って、昼寝だな。ミスリール?」
「そうだね。母ちゃん。酒も買おうぜ」
「イザーク君はどうすんじゃ? ガハルトと一緒か?」
「そうですねぇ、カンイチさん、さっそくクマたち連れて、畑、観に行きましょうか」
「うん? そうじゃな。行ってみるか。アールはどうすんじゃ?」
フジと戯れるアールカエフに目をやる。
「僕? 僕はカンイチと一緒に行くよ? ねぇ、フジ殿」
”もふもふもふ……”
『……おふぅ、ふぅ、クマたちも喜ぼうよ。エルフ殿、もう少し上……』
「了解!」
”もふもふもふ……”
……
カンイチがフジとハナを。アールカエフがクマ。イザークがシロの手綱を引いて町に出て来た。目的地は東門にの先、隣接する畑に向けて。兎狩り、クマ達の良い運動になるし、餌にもなる。肉はダンジョンがそなえているのでできるだけ確保しておきたい。
走るでもなく、吠えるでもなく。静々とすすむ、4頭の大きな狼(犬)。
町の住人も一目見てギョッとはするものの、大人しい姿を見てすぐに普段の生活に戻る。子供達は興味津々だ。
「ふふふ。なんだか俺まで『狼使い』になった気分ですよ。カンイチさん」
「うん? イザック君 「イザーク君じゃって」 ……は、もう、『狼使い』だろうに? ねぇ、クマ?」
”ぅおん!”
肯定の吠えを上げるクマ
「そうじゃなぁ、実際クマ達もよう言うこと聞いてるしの」
それに、良く面倒を見ていると。そんなイザークを好ましく思うカンイチ
「そ、そうでしょうか?」
「うむ。嫌でなくば、目指してみればよかろう? 『狼使い』とやらを」
「そうですよね! 狼使いかぁ」
「うむ。フジの子とか?」
そうなれば『狼使い』の上位、『魔獣使い』。下手をすればカンイチに続く『フェンリル使い』とも言えるのかもしれない
「……なんか、こき使われそうですね……俺」
「……まあのぉ。くくく」




