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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
230/520

楽しみだな、お爺、エルフ殿

 …… 


 カンイチがフジの、アールカエフがハナの手綱を引きコズクラの町に繰り出す。

 所謂、Wデート。フジの願いである。偶には良かろうとカンイチも同意。

 よい陽気の中、近くの屋台で飲み物を買い、広場のベンチに腰掛けて一休み。フジ、ハナにも水を出す。

 「ふぅ。良い天気じゃなぁ」

 「だね! いいもんだね! こういうのも! 『デートぉ? 人族が何やってんだか』……と、思ってたけど。うんうん。いいもんだ!」

 「じゃなぁ」

 大正生まれのカンイチにしたって”イチャイチャデート”は初めてだ。帝国男子にあるまじき行為だ。カンイチもよくTVに映るカップルを見て、軟派者め! と、罵ったものだ。

 多少は羨ましがりながらも。

 今の姿を鑑みるに、違う世界だし? ピチピチの15歳だし? ま、ええじゃろ。ってなものだ。

 隣に座るアールカエフに視線を向ける

 

 「うん? ところで、カンイチは子供、何人欲しい?」

 「ぶっふあぁ!……と、突然何ごとじゃ?」

 再びの茶吹き。

 「大事なことだし? 僕は沢山欲しいな! 村が出来るくらい?」

 「……おぅ……。ま、落ち着いたら……の」

 『我もバンバン作るぞ! 群れが出来るくらいにな!』

 「……おぅ……。頑張ってくれ……」

 「じゃ! フジ殿! 競争だ!」

 「おいおい……一回当たりの出産数からして違うぞ……アールよ……勝負にならんわ」

 「頑張る!」

 『楽しみだな、お爺、エルフ殿』

 「……そうじゃな」

 ……

 

 「カンイチ! 今度はここに入ろう!」

 大広場に直結する屋台街に来て既に4軒目。この町の屋台街は【フィヤマ】や【アカリノ】と違って好きな料理を持ち寄って食べる方式の為か、量は少なめで種類が多い。が、4軒ともなれば結構な量だ。

 「うむ……しかし良く食うの……アールよ」

 『うん? お爺? まだまだぞ? エルフ殿は。まだ膨れてはおるまいよ』

 「む!」

 

 ――そ、そうじゃ! ……そんなこともあったの

 食い過ぎで妊婦のように腹の膨らんだアールカエフの姿を思い出す。確かラインの奢りの時。フジが呆れるくらい食っていたあの日

 

 「どうしたんだい? 変な顔して?」 

 「いや……何でもない。ところでアールは装飾品には興味ないのか?」

 チラと、宝飾店が目に入る。

 「指輪とか? 食べられないじゃん?」

 「……そか。なら、ええがの」

 結婚指輪でもと思ったカンイチ。

 もっともこの世界、婚約指輪やら、結婚指輪という風習は無い。市井の間では身から離さない財産として存在している。デザインも地金を曲げたようなシンプルなものが多い。

 お貴族様は別。煌びやかに飾り、富を示すために使われる。力、権力の象徴として。

 

 「うん? どうしたのさ。エルフ族はあまりそういうのは好まないんだよ? 自然信仰? あ! でも、魔法を増幅する物とか、魔法が封じられているものとか? そういう実用性があるものは良いね!」

 「ふむ……なるほどのぉ」

 「なんだい? 僕にくれるのかい? でも、そういうのはとっても珍しいんだよ?」

 「よし! ダンジョンの景品に期待じゃな!」

 「ふふふ。別に貢いでくれなくともずっと一緒にいるし」

 「アール……」

 『お爺、買わないのか? なら、次の屋台に行くぞ』

 「お、おう」

 ……


 『うん? 近くにガハルトがいるな。イザークも』

 鼻を上に向けヒクつかせるフジ。

 「流石の魔獣殿の鼻じゃな。ま、デート中じゃし? 放置でよかろう?」

 「そうそう! 折角の二人きりだし?」

 『ふむ。それもそうだな。なら、こっちだ』

 「……何も避けなくとも……ま、ええがの」

 路地に入り、狭い道を往く。狭いと言っても、馬車がギリギリ通れる広さ。もちろん露店等が多く出ているので、馬車の通行は禁止されている。入口にも頑丈な車止めがあり、規制されている。

 面白いことにこれくらいの道の方が奇麗だ。馬の落とし物(大通りでも直ぐに回収はされるが、小便は垂れ流し)もないし、道が狭いから立小便する輩や、路上で寝ている輩もいない。

 

 「こんなところにも露店はあるんじゃな。屋台も。どれ、覗いていくかの」

 「こういうところの方がお安いよ! 多分?」

 『面白そうだな。どれ、掘り出し物が無いか見ようか』

 露店には日用品から、食料、武具類まで多岐にわたる。新品、中古、使用に耐えられるか怪しい品々(ガラクタ)も

 

 「うん?」

 そんな多くの露店の中、骨董品ガラクタの中に、カンイチの気を引く物が。羽を模した鞘に入った一振りのナイフ。手に取って見れば、少しだが気配を感じる……”魔剣”と言われる物だろう。

 「抜いて良いか? 主人?」

 「お! 兄ちゃん! お目が高い! そいつは、魔剣だよ! 魔剣!」

 「そうかの? 全く力を感じぬが……。ふむ、魔剣じゃ高かろう。ワシは装飾が良くて手に取ったまでじゃ。邪魔したの」

 抜かずにそっと元の所に戻す。さりげなく。腹の中ではすでに交渉は始まっている

 「かぁ! 惜しいね! 今ならお安くするよ! お兄ちゃん!」

 「魔剣なんぞに興味はないし。じゃぁの」

 「おっと! 待ってくれ! ……金貨5枚でどうだ?」

 「はぁ? 普通のナイフに金貨5枚も出さんわ。それに”魔剣”じゃったら随分とお安いの。偽物か?」

 「……魔剣の部類のはずなんだがな。ま、実際の話、さっぱり使えねぇ……魔導士に魔力入れてもらったんだがなぁ。無反応……場所は取らんが……で、4枚でどうよ?」

 「は? 場所は取らんじゃろが。置いておけばよかろうに? 2枚なら考えても良いぞ?」

 「2枚はキツイ。が、なんだかんだで売れ残って、もう10年以上一緒にいる。いい加減見るのも嫌だし、刃も厚くて普段使いにも使い辛い……3枚でどうよ? 兄ちゃんが言うように美術品としても良い所だろう?」

 「……ま、良いか。そこの小さい青い石も付けてくれ」

 濃い青色……深海の海のように鈍く輝く10円玉くらいの真球の物体。

 「おっと! そりゃ、いくらなんでも、こみこみで4枚がやっとだ」

 「わかった商談成立な!」

 「ああ。まいどぃ~~。大事にしてやってくれ」


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