おいおい……本当かよ……親方
……
「おう! やってるな! カンイチ! イザーク! おはよう!」
「おはよう! ガハルトさん!」
「おはよう! 昨日はご苦労じゃったな! ガハルト」
カンイチ達が鍛錬しているところにガハルトが起きてきて顔を出す。
「うん? ああ。ま、親方達は置いて来たしな。しっかし……本気のドワーフ族とは……酒樽やら酒袋と言われるのがわかったわ……普通、他の種族がドワーフ族の宴に呼ばれることもないからなぁ」
「……それほど歓迎してくれてるんじゃろう。しっかし、そんなに飲んだのか? じゃ、今日は親方たち、二日酔いで寝込むかぁ?」
「どうだろうなぁ……ドワーフ族の二日酔い……? 聞いた事ねぇな」
「ですね……」
「恐ろしいのぉ……。で、ガハルトは? ……二日酔いは無さそうじゃな。……つまらん」
「ふふふ。期待に応えられなくて悪かったな、カンイチ。俺ら獣人族は”弱み”を人にはみせないからな。二日酔いってのも、まずないな」
「なるほどのぉ。面白いのぉ」
「俺も気を付けよう……あの地獄の苦しみ……」
「はっはっは! そりゃいい。で、カンイチ、今日は何をするんだ?」
「うん? ガハルトはゆっくりするんじゃないのかよ?」
「いやな、思ったより疲れが無かったからな。身体性能が上がった恩恵かな?」
「ふ~~ん。ワシはアールとフジ連れて町でも見て回ろうと思っちょるが……」
「なら、『冒険者ギルド』に情報収集でもしてくるか……なぁ、イザーク?」
「そうですね。周辺の情報……採集品や魔物の情報欲しいですし。香草類も知りたいですね」
「じゃ、俺らは飯食ったらギルド行ってくるわ」
「了解じゃ。出来たら、親方たちの様子、見て来てくれ」
「おう!」
……
「おーーう! すまんのぉ! カンイチ! ちぃと遅くなってしもうたわい!」
「帰ったよーー師匠!」
「ふぅ。飲んだ! 飲んだ!」
朝食を摂っているとアル中一家こと、ダイインドゥ一家が賑々しく帰宅した。
「おはよう。大分飲んだようじゃな! 親方!」
「おう! そうじゃ! カンイチには悪かったの!」
「いや、構わん。フジがいるでの」
それに、そこまではアルコールは必要のないカンイチ。お湯割りなら二~三杯が適量だ。
「久々に友人と出会い、美味い酒を浴びるように飲んだわ。これもカンイチのおかげじゃな! ワシらもあまり外には出んでなぁ」
「ああ! 本当に美味い酒だった。ありがとな、カンイチ!」
「うんうん! 遠い親戚も居たんだよ。師匠!」
「ほ、そりゃ、良かったな! ミスリール。で、親方たちは今日は何やるんじゃ?」
「ワシらか? そうさなぁ。仲間の鍜治場に行ってこようかと思ってる」
「オレはゆっくりさせてもらうよ」
「……親方達に二日酔いは無さそうじゃな?」
「は? あるわけなかろうが! 水と一緒じゃ水と! そう! 命の水じゃな! はっはっは!」
「おいおい……本当かよ……親方」
げっそりガハルト。彼の表情を見るに余程の量だったのだろう。しかも、ガハルト達は中座した形だ。一体何時まで飲んだことやら。
「親方たちは何時まで飲んでたんです? あの後、寝たんですか?」
「は? 何を言っておるのじゃ? イザークよ? ついのさっきまで飲んでおったぞ? のお?」
何を当たり前な事を聞いてるのじゃ? と、理解の及ばない表情のダイインドゥ。
「ああ。美味かったぞ。だから、少々眠い……」
と、目をこするディアン。ミスリールも同じ。
「ほんとかよ……親方、寝んでええのか? それで鍜治場かよ?」
「うむ! 酒飲んでる時間は寝てるようなもんじゃて」
「……本当かよ。大丈夫か?」
毛穴から酒精が漏れて引火して火だるまにならないか心配になるカンイチ。
「あ、そうじゃ。鍜治場に行くのなら作ってもらいたいものがあるんじゃが?」
「うん? ええぞ。後で図面くれ」
……
「はぁふぅ。……おはやう! 皆の衆!」
{おはよう}アール様」
「相変わらず朝に弱いの……アールは。顔洗ったのか?」
皆が朝食を終わらせ、お茶を飲みながら歓談していると、髪の毛ボサボサのアールカエフが降りて来た
「いやぁ~本当は強かったんだけどね。年のせい? 若返ったと思ったんだけどぉ……。ま! 寝るのは嫌いじゃないし? それに、ちょっと前は戻ってこれるかわからなくて怖かったけど。今は、大丈夫っぽいし? そうそう! カンイチ! たまに夢に大神様が出てくるんだよ?」
「ほぅ? ワシの夢にはちぃとも出てきてくださらんが……。判らないことは何でも聞けとおっしゃっていたが……あれっ切りじゃしの。夢の中の大神様は何か言っておられたか?」
「うん。僕の願望もあるのかもしれないけど……。早く子作りしろ! って。ふふふ」
「ぶぅふぅう!」
お茶を盛大に噴き出すカンイチ。
「ほう? 大神様がなぁ! がんばれ! カンイチ! くっくっく……」
「おう! 他種族間での子は中々できんと聞いたが、大神様の応援があれば大丈夫じゃろ!」
「でも、これから僕達ダンジョンだろ? 落ち着く場所が見つかったらって大神様に言っておいたよ。イザック君も居るしね」
「イザーク君じゃ……。そうか……」
「いいですね! 俺に構わずどうぞ! ふんだ!」
「ほら! イザック君! そんなんじゃ、彼女出来ないぞ~~」
「放っておいてください!」
「で、アールよ。今日は何する?」
「町に行こう! カンイチ! デート、デート!」
「いってらっしゃい!」
「お、おう……。行ってくるわ、イザーク君」




