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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
目指せ! ダンジョン国!
219/520

君達にこの僕が止められると?

 …… 


 「……力づくになりますが?」

 腰の剣に手を置く騎士たち。

 

 サヴァ国、国境門で、アールカエフの流出を阻もうと立ち塞がる国境警備軍。

 睨み合うカンイチたち。

 これだけ反目しあってこの後、国のためになるのか。そうも思うが、国としては、”いるだけ”でいい。たとえそれが牢獄だとしても。

 それに、いずれは屈服し、従うと本気で思っている。それが、人間の上にいる特別な人間。彼ら貴族の考えだ。


 「面白い! 君達にこの僕が止められると?」

 「おいおい、アールよ。ちょっと待って欲しい。騎士殿、貴殿らに我らの往来を止める権利は無いと思うがな」

 アールカエフを庇うように前に出るカンイチ。アールを守るというより、キレたアールを抑えるためだ。

 「うるさい! ガキが! どいていろ!」

 「……また、それかいのぉ」

 若返ったおかげで、こういう場ではぞんざいに扱われるカンイチ。この状況、爺さんでも変わらないだろうが。『うるさい! ジジィ! どいていろ!』 と、なるだけだ。

 「うん? 小僧。こっちに来い! アールカエフ様、言う事を聞かないと先ず? うん?」

 カンイチを人質にでもしようと思ったか? 騎士としては最低の行為だが

 ”どさり”

 その、伸ばされた騎士の右腕の肘から先が落ちる。……風が吹き抜けて。噴き出る血しぶき。

 ”風の刃”アールカエフが操る魔法だ。

 「へ?」

 「おい。……汚い手で僕のカンイチに触るな! 死にたいのかい?」

 ”ひゅーひゅーひゅー”

 すでにアールカエフの周りにはつむじ風。

 「あ、あぐぅ……」

 切断された箇所を押さえて苦痛に身もだえる騎士。カンイチじゃどうやら、キレたアールカエフを抑えることはできないようだ。

 「き、貴様ぁ!」

 もう一人の騎士が剣を抜く。

 ”がしゃり!”

 カンイチ一行もそれぞれの武器を抜く!

 国境警備の兵たちも渋々騎士に従い、武器を構える

 

 「仕方ないのぉ……国境やぶりになってしまうかのぉ。事を荒立てたくはなかった……がのぉ! ふん!」

 一息に騎士への距離を詰めるカンイチ! 迎撃の剣が突きだされるも、散弾銃の銃身で上方に弾きあげ、懐に潜り込む。

 独楽のように回転し、騎士鎧の上から、鎧の一番分厚い鳩尾部に思い切り銃床を叩きつける! 下から持ち上げるように! 

 ”がぁがいん!”

 完全に浮き上がる騎士。

 「ぐがぁふぅ! そ、そんなのは、き、効かん!」

 ”ぶぅん!”

 横に振られた剣を、身を沈め、かいくぐり再び懐へ。

 腐っても騎士! 振り切った腕を縮め、剣の柄尻を突っ込んで来たカンイチの頭部に振り下ろす!

 肉薄するほどに接近し、それを横に躱し、超至近距離から再び鳩尾に銃床をお見舞いする。

 ”ごがぁいぃん!”

 「がはぁ! ぐっはぁ、く、くそぉ! ちょこまかとぉ! ガキぃ!」

 距離を取る騎士、が、鳩尾への2発。呼吸も乱れ、足の自由も奪われる。

 「ほう? 頑丈じゃのぉ。さすが、騎士というものか……どれ!」

 「ふ、ふぅ、なぁ!」

 息を吐く折、顔が下がった。その視界にするりと入って来たカンイチ!

 「ふん! ふん!! ふん!!!」

 ”がいん!” ”ががぁん!!” ”がきん!!!”

 と続けざまに銃床が鳩尾に叩き込まれる! 都度浮き上がる騎士。その衝撃で騎士鎧は馬に蹴られたように綺麗に変形、陥没しくっきりと銃尻の形が見て取れる。

 そして変形した鎧の鉄板が打撃によって持ち上げられた胃袋の行き場所を塞ぐ。

 こうなるともはや、呼吸すらままならない。

 「がふぁ……が……がへ……げばはぁ……」

 吐しゃ物と呼吸不全で、もがき苦しむ騎士。

 「さてと……無茶を言ってくる騎士様には退場願った。ワシらはこの国から出ていく。手配でも何でも勝手にするとええ。追ってきたら……今度は死んでもらうがの。じゃ、通るでの」

 カンイチ一行の馬車を無言で見送る国境警備の兵たち。誰一人動かない

 ……

 

 国境門を抜けて緩衝地を征くカンイチ一行。

 「なるほどねぇ! ああやってねじ込むんだね! 師匠!」

 自分の得物のアーヴァレストを引っ張り出し、ぶんぶんと、カンイチの技を再現するミスリール。

 「うむ。なるたけ、下から持ち上げるようにの……。じゃが、ミスリールなら一発で済みそうじゃな……」

 なにせ重量物の金属製のアーヴァレストを片手で操る剛腕の持ち主だ。

 「う~~ん……それだと、鉄弓の部分が邪魔だな……普段、畳める機能を付けるか……親父ぃ!」

 「おう! なんじゃ? ミスリールよ」

 「この鉄弓を畳めるようにしたいんだけど……何か良い案無い? ……うん? 親父? それは?」

 カンイチも興味を持って馬車に飛び乗る

 ダイの親方も何やら設計中のようだ。紙に書かれてるのは此方も弓?

 「うむ、城壁にバリスタがあったじゃろ? あれの一回り小さいのを馬車の屋根に設置しようと思ってのぉ。威力をさらに増す工夫をのぉ」

 「親方……どこと戦争する気じゃ? それに昼寝の場取るとフジが怒るぞ」

 「うぅむ……そうじゃなぁ。荷台に置くかのぉ」

 

 ――まったく……今度は人が乗れんぞ……が、面白くもあるな。大砲みたいじゃの

 多少、心動かされるカンイチだった


 「しかし、偉い目に遭ったのぉ」

 「まぁ、多少、血は流れたが死人もでなんだで、上等じゃろうさ。カンイチ」

 「ま、そうじゃな。追って来るかの?」

 「ふぅむ。恐らく無いじゃろ? 追跡するモンもおらんでな。貴族の連中は息巻いておったが、国境軍の連中は腰が引けてたで」

 「ああ! 大丈夫だろう。カンイチ。ここはもう、緩衝地だ。軍事行動は無かろうさ」

 「ガハルトさん、ここって、もう外国?」 

 「正確には中立の地といったところか? 戦になれば、先ずはここに兵を並べて一戦さ」

 「次は、カブジリカかぁ。どんなところだろうなぁ。ねぇ! カンイチさん」

 「おう、楽しみじゃのぉ! イザーク君!」

 「ええ!」

 「……隣の国などたいして変わらんぞ……(ぼそり)」

 と、ガハルト。若人の夢に茶々を入れないように……小声で

 そんな様子をハクの上のアールカエフも微笑みながら見守る

 「次の国は何も無いと良いんだけどねぇ……」

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