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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
目指せ! ダンジョン国!
218/520

放浪のエルフがどこに行こうと勝手だろ?

 …… 


 「ふぅ、結構ギリギリの時間じゃったな」

 「ああ、フジ様の制止が無かったら……街中で野宿かぁ?」

 「……ちょっと格好、悪いですね。それ……」

 閉門ギリギリの時間で何とか町を出ることが出来た一行。ガハルトの言う通り、最悪大広場で野宿となったであろう。もちろん注目されるし、お役人様のお手を煩わせたかもしれない。

 

 「ふぅひぃ……。やっぱり酒は万事調ってから、ゆっくり腰を据えて呑む物よ……のぉ。けふぅ」

 「そうだねぇ……アンタぁ……ぎ、きぼちわるい……よぉ……」

 顔色が真っ青なディアン。普段の威勢は鳴りを潜めている。

 「しょうがねぇ母ちゃんだな。ほれ、水」

 「あれだけ飲んで走ったらね……。僕も……少々気持ち悪ぅ……ここは、二日酔い回復薬、ノムノム君の出番か!」

 ”収納”から怪しく光る液体に満たされた瓶を引っ張り出すアールカエフ。

 「死んじまうぞ……そんな怪しいもん飲んだら……アールよ……」

 「失敬だな! カンイチ! 僕のお手製……うん? じゃぁ、薄めて……ディアン君に先飲ませて…… {おい!} ……技術の進歩には犠牲はつきものだよ?」

 「……そんなことより、野営地捜そう」

 「むきーーー! そんなことって何さ! カンイチぃ!」

 「どぅどぅ! アールよ。早く場所見つけて……ゆっくりせよう」

 「馬じゃないし! ……もう。そうだね……。ゆっくりしたいね。カンイチ……」

 なんとな~く温い空気が流れる……

 「ふんだ! さっさと場所探しますよ!」

 「おぅ……? イザーク君? どうしたんじゃ、あれ」

 『ふぅむ。早く番を見つけてやらんとダメか?』

 なんだかんだ言って、このチームでで一番まともで面倒見の良いのはフジだった。とか?


 城門を出て街の灯りに後ろ髪惹かれつつ街道を北上。

 町からそう離れていない場所で野営を行うことに。この辺りであれば町からの監視と、国境警備隊が居るのでかなりの安全性が担保されているだろうと。人の都合などお構いなしの動物や魔物はその限りではないが


 少し開けた場所に移動用馬車を中心に、街道側に分厚い鉄板の張ってある、二号車(ムサイ男用)を向け、そしてコの字になるように一号車、三号車を並べる。こちらの車両にも外向きにあたる側面、屋根に薄い鉄板が張ってある。トイレは基本、穴を掘って済ます。一応、衝立はある

 移動用馬車には、クマ達の小屋と共に、リビング的用法もあり、寝る前の歓談や夜番時の控室となる。馬車自体も燃えにくい木でできているし、幌も難燃性の布で出来ている。

 夜番もフジのおかげで大分楽が出来る。野生動物もフジの存在に警戒し近寄らない。その辺りは生態系の頂点と言えるだろう。

 そういう観点から、夜は主に”対人”。追手やら盗賊等が警戒対象になる。それもクマ達の弓の射程より広い警戒範囲によって対処が可能だ。想像以上に快適な、カンイチ達の”砦”だ。


 「クマ、ハナ、シロ。頼んじゃぞ」

 ”ぅおん!” ”わぅ!” ”ぅをん!”

 「良し……。今日もええ天気じゃったな。この世界は公害なんかも無い。焼き畑くらいかのぉ。星が綺麗じゃわい……」

 

 ……

 

 サヴァ国、国境の町【ミソォニ】の町を出て二日。国境線を望む城壁に到着。隣国に対する最初の防壁、国境防衛の要だ。ここを抜けるとサヴァ国ともいよいよお別れ。城壁に挟まれた緩衝地を抜け、隣国のカブジリカへと至る。

 商人たちのキャラバンに混ざり出国審査の列に並ぶカンイチ一行。国境を超えるのは商人と護衛の冒険者位だ。

 ……

 

 「アールカエフ様……ご本人でしょうか?」

 まとめて提出された身分証を監査していた門衛……この場合は国境警備の軍。彼らの間に動揺が走る

 「もちろん! そうに決まってるでしょう!」

 と馬車の窓からからひょっこり顔を出すエルフの少女?

 「緑色の髪……ハイエルフ……ま、間違いないようですね。それで、どちらに行かれるのでしょうか?」

 「うん? ダンジョンに遊びに行くんだよ! ダンジョンに! 商売じゃないから安心してほしい」

 「アールカエフ様、王からは何も聞いておりませんが? 何か書状とか……」

 「は? 関係ないでしょうに? 僕はこの国、サヴァに属してる訳じゃないし? 王の臣下になった覚えもないよ? 会ったこともないしぃ?」

 「し、しかし……」

 「戦力に数えるのは勝手だけど。僕はこの国には一切協力はしないよ? アホらしい。ほら、さっさと通してよ。放浪のエルフがどこに行こうと勝手だろ?」

 困った顔の門衛たち。うち一人が奥に駆け去る。

 

 ――ふぅむ……”戦力”の流出を恐れての事か? お国も随分と勝手じゃな

 

 「平気か? アールよ?」

 「平気でしょ? 関係ないしぃ。王から給料だって貰っていないさ。ほらぁ~~早く通してよぉ~~」

 苦笑混じりに応えるアールカエフ

 道を空ける気配はない。そして先程奥に呼びに行った兵が二人の騎士を連れて来た。……国境警備の軍部の責任者だろうか?

 「そうはいきません! アールカエフ様。素直にお戻りになってください」

 「はぁ?」

 「……戻れと? 何の権限で言っておるんじゃ? こいつ等?」

 さも当然と言い放つ騎士たち。そして周りに兵を並べる。

 威圧するように。

 つまらなそうに事の成り行きを眺めるアールカエフ

 「貴殿は王の庇護の下で生きているのです。国の有事の際は協力する義務があるのです!」

 「その通り! 有事は何時、起きるか分かりません。隣国、イヴァーシは隙あらばと狙っておるのですぞ」

 「ふん。隙があるのはサヴァであってアール様には関係あるまいよ」

 一歩前に出るガハルト。

 自分の言葉に酔っている騎士たちを見てこれは”退かない”と感じたのだろう。

 ダイインドゥも辺りに目を配る。

 「お、お待ちください! 騎士様!」

 「そ、それは……」

 もちろんそんな法は無い……抑止力の流出を恐れての言動だろう。

 「黙っていろ! 貴様らは従えばよい! ここに宰相閣下の書状もある!」

 「ご返事、伺っても?」

 が、相手はアールカエフだ。そんな脅し、屁にも感じない。

 騎士、国境警備隊の顔をぐるり見渡す

 得意顔の騎士……

 騎士の命令に渋々従う国境警備隊……

 これは、エルフの脅威を知る軍と、己の言う事は全てと信じる騎士――貴族、その違いそのものだろう

 

 「ふぅ……僕がいつこの国の世話になったんだい? 呆れてものも言えないね! 抑止力の駒とでも思ってるようだけど……。はぁ、やっぱり正解だったよ! こんな国。さっさと出て行こう! カンイチ!」

 「力づくになりますが?」

 腰の剣に手を置く騎士たち……    <つづく>


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