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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
目指せ! ダンジョン国!
210/520

ワシの剣じゃ!

 …… 


 この辺りで大暴れしていたであろう盗賊団を殲滅。複数のマジックバッグと多くの財貨を得たカンイチ一行。ほくほく顔で建物を出る。

 その際に、ダイの親方が例の爆火玉を放っていく。

 ”ぼぅおぅおおぉぉぅ!”

 燃え上がる母屋。そして、死体の詰まった周りの小さな小屋にも夫妻が次々に爆火玉を放っていく。

 

 ”ぼ!” ”ぼぼぼぉぉぼぅ!”

 爆発的に燃え上がる小屋。その衝撃で壁など内側から吹き飛ばされるくらいだ。

 露わになった小屋に積まれた賊どもの屍も轟々と焼けていく。辺りには肉の焼ける匂いが漂う

 

 「うんむ、これでよかろう」

 うんうん。と頷くダイの親方。爆火玉の出来に満足な御様子だ。

 「しかし、親方。凄い威力だなそれ」

 「まぁ、いろいろと便利じゃぞ。取扱注意じゃがの」

 カンイチとしてもそんなモノ、ポケットに入れて持ち歩きたくはない。転んで大爆発は御免だ

 「さて行こうかの」

 「で、ワシらはさっさとここを去りたいのだが? 何か言いたいことがあるのかの?」

 「ああ、もう此処には用はない。通してもらおうか」


 入口の門を塞ぐように”村人”が集まっていた。恐らくは近くの農村の。この盗賊たちに協力、商売をしていた村だろう。

 中央に村長だろうか? 腰を曲げ、杖を突いた老人が進み出て来た。ニコニコと張り付けたような笑顔で。

 「旅人の方々……よくぞ、賊を除いて頂きまして……感謝を。私達も居座られて大変困っていたのです……。今から村で、”感謝の宴”でもてなしたいのじゃが、どうじゃろうか? 招待を受けてはくれませんかの?」

 

 ――よく言うわ……その”賊”を相手に商売をしておったのじゃろが。娼婦まで用意して……の

 

 「結構。わざわざ我等の為に村の備蓄を潰すことも無い。村長殿、辞退させていただこう」

 とガハルトが告げる

 「い、いえいえ。是非とも……このまま恩をお返ししないというのも……」

 「構わぬ。我らは急ぐ故」

 「このままいかせてはワシらの感謝の気持ちが……」

 「いらん。では失礼する」

 いい加減、面倒になって来たガハルト

 「ゆっくりと、色々とおもてなしもできますので……」

 と、執拗に縋りつく村長

 「ふん。もういい。村長、我らが酔って寝込んだところで首でも取るのか? それとも娼婦の女に寝台で毒でも盛らせるか?」

 「そ、そんなことは! ほ、本当にワシらは困っておりました……うん? ……そ、それは! わ、儂の剣! 儂の剣じゃ! か、返せぇえ!」

 と、叫ぶなり杖を放り、目の前の大男の虎人を忘れてか、ガハルトの腰に手を伸ばす老人。

 ガハルトの腰に下がる、ダイインドゥの親方の師が打った剣を見て。

 「そ、村長?! お、落ち着いてください!」

 「村長!」

 「ハッサン村長!」

 

 ”ぴくり!”

 

 ”ハッサン”その名を聞いて反応する……そう。ドワーフ夫妻だ!

 今まで、後ろで関心なく成り行きを見ていた夫妻が。その瞳がギラリと光る

 「ほっほぉ! まだ生きておったかぁ! ハッサン!」

 「はっはっは! 今日は良い日だねぇ。しっかし随分とジジィに御成りだねぇ。この詐欺野郎が!」

 「な、何をおっしゃる! うちの村長は高名な冒険者で……」

 目を見開く老人……

 「ああ、ああ、良く存じてるさ! 口先だけで、何の取柄もねぇ! 詐欺野郎だ! なぁ……ハッサン!」

 歯を剥き出し、吠えるディアン!

 「うんむ。ワシらを忘れたとは言わせんぞ……のぉ。……ハッサンよ! 何が儂の剣、返せ! じゃ! この盗っ人がぁ! そもそもがワシの所から盗んだものじゃろがぃ!」

 「……。……だ……ダイ? ディ、ディアン……か……?」

 「やっと思い出したのかい? その縮んだ脳みそで! 呆れたね。おまえは随分と変わったが、アタシらはそんなに変わらないだろうに? それにしても何処に雲隠れしたかと思ったら……こんなところで村長さんかい? 随分といいご身分だわなぁ!」

 「あの後、大変じゃったぞ……。師の剣のみならず、依頼品や未完成の物も持っていかれてのぉ。お前さんに勝手に捌かれての……。補償や、賠償。買い戻しにいくらかかったか……。補填の為に鍛冶だけじゃなく、冒険者の真似事までして稼いでのぉ……」

 過去を思い出しているのだろうか。二人の表情はすでに羅刹のようだ

 「ああ。オレがそこそこ名の知れた冒険者だったから良かったようなものを……そうでなきゃ、一家そろって首を括ってるところだったわなぁ」

 「す……すまん……すまん……ダ、ダイ、ディアン、で、出来心で……」

 「そ、村長?」

 「よく言うわ……。出来心で未完成品やら手あたり次第持って行くか! それに同じ手口で数件あるじゃろがぁ。ワシらが訴えた時、既に何件か訴えが上がってたぞい、ハッサンよ!」

 「ああ。立派な賞金首さ。オレが、その首落してやるよぉ! かぁあああぁーー! この日をどれだけ楽しみにしていたか! よくもジジィになっても生きていてくれたわ! 鍛冶神様ぁ! 感謝を!」

 「た、頼む! い、命ばかりは! な、なぁ、儂も老い先短いで……なぁ」

 「はぁ? 相変わらず、口先だけだねぇ。そう思うのなら土下座くらいしたらどうだい?」

 「うむ。村民の陰に隠れおって。仮にも村長だろうが?」

 「くっ!」

 さらに、後ろに下がり、村民を盾にするハッサン村長。チラリと、後ろの木に視線を向ける。

 

 そんな様子を後方で見ていたカンイチとミスリール。

 「そんな状況じゃったのか? ミスリールよ」

 「う~~ん……確かにオレが小さいときは貧乏だったよ。で、母ちゃんは、毎日、ハッサンぶっ殺す! ハッサン叩き割る! ってね。料理の時もね。肉切りながら。脳筋だし」

 「ま……のぉ」

 「それに親父も珍しく怒っていたなぁ。俺も今なら解るよ。師匠の剣を盗まれた事より、盗まれた”未完成品”を完成品だといってハッサンに転売されて……。死者こそ出なかったけど……ね。武具は身を守る道具だろ」

 「うんむ。確かにの。『職人』としての名声の失墜……いや、殺されたと言ってもええの」

 「そ。そんなところ。怨敵との邂逅ってところだね。人族だし? もう死んじゃってるかとも思ったけどね」

 「ふぅむ。こりゃぁ、血を見るのぉ……。あのハッサンだかの爺さんもまだ死ぬ気は無さそうじゃてな。ミスリールよ。そのままで聞け。後ろの、あの木の所に弓持ちがおる。矢を番えたら撃て」

 「ん? ……。よく見つけたね。師匠。了解! 任せて!」

 すすすと、体を引くくし、射撃位置に移動するミスリール

 

 「さぁ! 時間も惜しいし、そろそろその白髪首、落とさせてもらおうかねぇ。覚悟は良いかい!」

 と、ディアンが叫ぶ

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― 新着の感想 ―
[一言] 賊たちの中に娼婦の様な女性もいたはずですが、それらも連れ去られてきたものかもしれないのに、すべて殺したのですね。
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