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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
異世界に立つ!
21/520

昼食

 ……


 「どうだぁ、カンイチ! 賑やかな町だろう! この辺りは、ほら! あそこにあの大きな山があるだろ。貴重な植物やら鉱物とか取れるからなぁ。採取する冒険者ら、買い付けに来る連中で大賑わいだ」

 

 再び、日本語……ではないのだが、理解のできる”言葉”を聞いてほっとする。そして、ハンスの指さす方に目を向ける。

 

 「あの山? あの山って、あれ?」

 奇麗な稜線を描く巨大な山が遠目に見える。かんいちの記憶にある富士山によく似た山だが、恐らく標高は此方の方が随分と高い。頂の方は雲の中だ。

 

 「あん? 本当に変わってるなぁ。知らんのか? カンイチは。村? どこにあったんだ? 思い切り内陸の方かぁ? ま、いいや。ありゃ、【霧立ち込める不死山ふじのやま】と言ってなぁ。魔物の巣窟と言われてんだ。で、だれも【霧立ち込める不死山】まで行けた奴はいないと。それは、あの山を中心とした周りの山々だって魔物が跋扈する。すそ野にも魔物や、凶暴な動物も沢山出る。そういった物も高価で売れる。狩れるだけの腕があればなぁ。良い稼ぎになるぞ? はっはっは」

 「なるほど……それで冒険者というもの、冒険者の町……か」

 ――この町の賑わいは、その山々で採れる”恵み”を求める為に人が集まっていると。

 うむうむと頷くカンイチ。大分、冒険者についてもわかってきた。

 「そういう事。強者は随時募集中だカンイチ! 期待してるぞ。はっはっはっはっは」

 

 ”ぐるるるるぅぅきゅるるぅ……” ”ぎゅきゅり……”

 

 カンイチが返事をする前に、盛大に腹が声を上げる。

 「な、何だ? すげぇ腹の音だな、おい……」

 「合点がいったら腹が減った……」

 「関係あるのか? おい!」

 あれだけの肉を腹に納めたのに……。

 が、仕方あるまい。実際に減っているのだ。が、困ったことに文無しのカンイチだ。

 「……まぁいい。軽く飯でも食ってくか。そんな顔すんなって。おごってやるよ。じゃ、こっちだ」

 「すまんのぉ」

 ……

 

 屋台通り。中央通りと並行している通りで、両側に所狭しと屋台が並ぶ。飲食店もあるが、居並ぶ屋台に浸食されているようだ。色とりどりの食材、料理が並び、食欲を掻き立てる香りに満ちる。大いに食事に来る人々で賑わっている。

 テーブルやイスは共同所有の物となっており、好きな料理を各々で買い、集めて楽しむことができる。それがこの屋台通りの醍醐味だ。

 

 カンイチとハンスはそのテーブル一つを占拠し、丁度、食事を済ませたところだ。テーブルの上には多くの皿が積まれている

 足元のクマたちも満足げに毛繕いをしている。

 

 「うぅむ。全体的に肉が多めの食事だな、この町は。身体に悪いのぉ」

 と苦言を呈するカンイチ。確かに”肉”多めの昼食ではある。が、

 「カンイチよ。しっかり奇麗に平らげておいて文句か? しかし、良く食うな……おまえ」

 軽い気持ちで奢ったハンス。が、今週の小遣いはカンイチの胃袋に消えた。

 それで、腹を擦りながら文句は少々ムッと来るのは仕方がない。カンイチが悪い。無一文だし。

 

 「ご馳走さま。これは失礼した。ハンスさん。この辺りは野菜はあまりとれないのかの?」

 「野菜? ふぅ……親父通り越して、もう爺さんみたいだな。おまえ。畑なぁ、どうしても魔物がいるからなぁ広くとれない。近郊で採れる新鮮なものは領主やらお偉いさんのとこに行っちまうな。んで、採取品目の珍しい野菜なんかは皆、王都に行っちまう。ここらの野菜類はもっと内陸、王都に近い村やら町から売りに来てるぞ。肉は、まぁ、獲物はいくらでもいるから。ここは冒険者の町だし?」

 「なら、野菜作れば売れるな。ふむ」

 「おいおい。カンイチよ。おまえ、狩人じゃないのか?」

 「うん? ワシは生まれながらの農家じゃが?」

 「……不憫な。小作奴隷か何かだったんか? おまえ。であれば、いろいろと頷けるな」

 「うん? ワシは奴隷なんぞになった覚えはないが……」

 「まぁ、いいさ。今は自由だろう。じゃ、ギルド行くか」

 ――奴隷やら、囚人になったことはないが……。

 少々納得のいかない所だが。余計な事を言ってボロが出ても仕方ない。このまま、身寄りのない小僧で通すと決めたカンイチ。

 身寄りの無い小僧で通すも何も、まんまその通りなのだが。しかも、無一文だ


 賑やかな通りを進み、『冒険者ギルド』と書かれた建物に到着。

 これだけの町だ。色々なものが集まり、大小さまざまな店が出ている。カンイチの興味を惹く物も多分にあったが、先ずは身の振り方を。落ち着いてからと諦める。

 

 大通りに面した、総レンガ造りの大きな建物。だが、どうも大きな従魔は連れて入れないようなので、入口にのわきある馬の繋場にクマたちを繋ぎ、ギルド内に入る。

 半端な時間のせいか、中はガラガラ。冒険者風の物々しい装備の者も2人といったところだ。

 ハンスの後ろに続き誰も並んでいない”受付”と書かれた場所に行く。

 

 「あらぁ。隊長ぉ、サボって良いのぉ?」

 少々化粧の濃い女、受付嬢が話しかけて来た。良く見るとどの女性も少々化粧が濃い。

 「うん? リサか? 今日、ギルド長様はいるか?」

 「ええ。いらっしゃいますわ。お約束等は?」

 「無い。どうせ暇こいてんだろ。繋いでくれ」

 「はいはい。うん? 坊や。隊長の子ぉ?」

 身を乗り出し、興味深げに聞いて来る受付嬢。

 「こんなデカい子はいねぇよ。良いからさっさと繋いでくれ!」

 「はい。少々お待ちを。ふふふ」

 ……

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