まさに財宝だな!
……
ぽつんと一人残されたカンイチ……
ガハルトの方も直ぐに終わりそうだ。
――ワシ、さっきからすることがないのぉ。……ダイの親方夫妻があんなに凶暴だとは思わなんだわ……
と、ダイインドゥ夫婦の消えた建物に目を向ける
『ギャーーー!』
その小屋から絶叫が……
「うん? 小屋に未だいたようじゃな。ワシも他の小屋、調べたい所じゃが……爆火玉放られたら不味いのぉ。ここは大人しく待っているか……」
「師匠! お疲れ様?」
そこにミスリールがやって来た。愛用のアーバレストを肩に担いで。
「おう! ミスリール。射撃は上々、見事なものよ」
「ありがとう! でも、ガハルトさんの作戦……。隙を突いての突貫あるのみ? 分かり易くていいけどさぁ……」
「ま、脳筋さんの作戦だで。それにしても……親方達ものぉ……」
「ああ、あれなぁ。うちの母ちゃんがなぁ……。ちょいと恥ずかしいわ、脳筋で。うん?」
村の方から帰って来たのか。荷物を背負ってきた男がカンイチ達に向かって剣を構える。
「お、おい! ガキ! これは……いったい、ど、どういう事だぁ!」
威勢よく声を出したつもりが、声は震え後半は上ずる
カンイチ達に警戒しながらぐるりと見渡す
”ごくり”
彼の目にも血溜まり……多くの死体が飛び込んでいるのだろう。中には見知った顔もあるはずだ。
「どうも何も……盗賊退治じゃ。知らんとは言わせんぞ。で、お前さんも盗賊の一味か? なら、ここで排除せんといかんが? ミスリールよ。盗賊相手の商売は何かの罪になるのかの?」
「そこまでは罪に問えないんじゃない? お貴族様なんか盗賊みたいなもんだわね。中には裏で盗賊をなさっている御方もいると聞くしね」
「本当かよ……。で、お前さんは、盗賊の一味か? それともここに商いに来たのか?」
「……お、おれは、む、村の者で……荷物を届けにここに……」
「そうか。なら、死にたく無かったら、さっさと去ね!」
「ひ、ひぃ!」
尻もちをつく男、剣も放り、尻を摺りながら一刻も早くここから離れようとするも、
「うん? カンイチ。なんだ? そいつは? 賊の援軍か?」
「ひ……」
血刀を下げて現れた、大男。そう、ガハルトだ。その姿を見て村の男も卒倒寸前だ
「あの手前の農村から物資を届けに来たそうじゃ」
「ほぅ……」
「一応、賊と知っていて商売してたんじゃ。国境の連中に言うくらいでええか?」
「ま、言ったところでどうにもなるまい。特に違法でもないしな。放っておけ、放っておけ。サッサと財宝回収して先に進もう!」
「それもそうじゃの……で、財宝は?」
「うむ。見つけたぞ。これだけの規模だ。結構な量だぞ! まさに財宝だな!」
「じゃぁそうするかの。おい、若いの。余計な手出しは無用じゃぞ」
「あ、ああ!」
村の男を残し、中央の建物の方に歩を進めるカンイチ達。
ダイインドゥ夫妻の小屋の調査も終わったようだ。今は、小屋に死体を放っているところだ。帰り際、燃やすという。
「ご苦労じゃな。親方」
「うむ。どうしても盗賊は無くならん……」
「人の命を奪うのに何の躊躇もない屑共。殲滅あるのみさ。一応、頭目の首は掻いておいたが?」
「国境警備の連中に検分させればいいだろう。カンイチこっちだ」
”頭”の出て来た中央の大きな建物に入って行く……
すでに、床は剥がされており、そこには、ため込まれた金貨が几帳面に丈夫な革袋に入れられ積まれていた。銀貨等は木の箱に。宝飾品や、剣やら盾の武具も混ざる。
「ほぉう……凄い……のぉ……」
「ああ! ここまでため込んでる賊も珍しい。ここに在るってことは、このバッグとポーチ。この麻袋に見えるのもマジックバッグの類だろうさ。大儲けだな! はっはっは!」
と、ご満悦のガハルト。
「どれ……ほうほう。中々に良いナイフだな。こっちの剣は魔剣の類……かのぉ。 「どれ!」 ガハルト殿には使えんわい。折れちまうの」
「それは残念……」
ガハルト、ダイの親方、ディアンが金貨そっちのけで武具類を漁る
それをポカンと見守るカンイチ。それでも警戒は忘れない。
ディアンが古びた一本の剣に手を伸ばす。
「アンタ! これって!」
「ん? お? おお! なんでこれがここに!」
一本の剣を巡り、驚くドワーフ夫婦。
「うん? どうしたんじゃ?」
「これな。ワシの師が打った最高の一本。手本に売らずに置いといたものだったんじゃ。ある冒険者に売れとせがまれてのぉ。断ったんじゃ。そしたら、その日の夜に盗まれてしまったわい」
「ああ……オレが見せちまったのが悪かったんだが……。ハッサンの野郎! ……ここでくたばったか? 俺が素っ首、叩き落してやろうと思ってたのにな!」
「ディアンよ。もうどのみち、生きてはおらんじゃろうさ。人族だしのぉ」
「そうだなぁ。くそ!」
「うん? ハッサンと言えば……”ミスリル”だったか?」
ガハルトの記憶にもあるらしい、最高位、ミスリルの冒険者。
「ああ。口先野郎だったがな。おまけに手癖も悪いときたもんだ。”偽ミスリルの詐欺野郎”だ!」
「とんでもねぇ屑野郎だな。断られたからって盗むか?」
「ほれ。ガハルト殿、貴殿が使うと良い」
ひょいと、再会の叶った剣をガハルトに放るダイの親方
「うん? 良いのか? 親方?」
「うむ。使ってナンボじゃ。飾りじゃないでの。普段使いに良かろうが」
「ほう……」
スラリと鞘から引き抜き、その白く輝く刀身をじっくりと堪能するガハルト
「どうじゃ? ワシが打った方がモノは良いじゃろが! はっはっは!」
「頂こう!」
「のぉ、ガハルト、親方。検分しながらじゃキリが無いで、”収納”に入れちまうぞ?」
「うん? ああ、そうだな。悪い」
「うむ。頼む。カンイチ」
「”収納”っと。さてと。アールに合流しようかね」
穴倉にしまってあった金銀財宝、武具類が”ぱっ”と消える。地面に空しく空いた穴が残るのみ。
「…あっという間……本当に便利じゃの……”収納”とやらは」
「うん? この木の棚の物は”本”か。持って行くかの」
本棚が一つ。その本棚にはぎっしりと分厚い本が納められている。
今までの日々の生活で、こういった物を拝む機会も無かったカンイチ。そもそもがあまり見かけない。図鑑等はあるが
「うん? カンイチよ。焚き付けにでもするのか?」
「するか! 本は知識の宝庫じゃぞ! 脳筋のガハルト君! ”収納!”っと」
「好きにすれ……お? おお!」
「うん?」
カンイチが手をかざし、本棚を収納すると、本棚のあった壁に奇麗に畳まれたバッグが3つ現れた。
「でかした! カンイチ! こいつもマジックバッグっぽいな! お? おお? 金貨も入ってるぞ!」
バッグの一つを手にし、喜びの声を上げるガハルト。
「頭目の私物かもしれんのぉ。良さげなバッグじゃわい。容積も大きそうじゃな!」
他のバッグを調べながらダイインドゥも少々興奮気味だ。
マジックバッグは希少で恐ろしく高価だからだ。
「はぁ? これで何個目だぁ? 普通、ダンジョンでもこんなに見つからねぇぞ?」
ディアンも興奮を隠せない。
古の時代には作成する技術があったと言われるが、今は新たなマジックバッグを入手する手段はダンジョンしかない。
「国境付近じゃし。大きな盗賊団だった。荒稼ぎの成果だろうのぉ。こっちは紋章みたいのが入ってるぞ? 持ち主に返すのか?」
貴重とは理解しているが、”収納”持ちのカンイチにとっては他人事。しかも、落とした財布が返って来る国から来た、お気楽爺さんだ。
「は? なんでよ? カンイチ?」
「うん? もうこれらはワシらの物じゃぞ?」
「ああ。その貴族だかが買い取りたいと願い出れば交渉位はしてやるがな」
キョトンと。何言ってるんだお前さんは? という表情の3人。
「そういうものかよ……。じゃ、後で山分けじゃな」




