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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
目指せ! ダンジョン国!
204/520

お犬の都合

 …… 


 「やったのぉ! ガハルト! どうじゃ? 身体は?」

 ガハルトに駆け寄る仲間たち。

 目の前には真っ二つになったレッド・クロー・ベア

 誰がただの一太刀で切り伏せようと思うか

 「おぅ! カンイチ! やはりお前に付いて来て正解だったわ!」

 「……そりゃぁ、何よりじゃな。で?」

 呆れ顔のカンイチ。脳筋思考に理解が及ばないようだ。

 何が良かったのかすらもわからない

 が、ガハルトの満足そうなその表情。良しとする。

 

 「うむ。心地よい疲労感。大事ないだろう。それより、クマたちが毒熊を狙ってるが……良いのか? カンイチよ」

 ガハルトの言う通り、熊の周りにお座りの状態で待つ、クマ、ハナ、シロ。

 カンイチの合図を待っている。

 話によるとこの熊は、毒を体内に貯める、フグのような毒熊だ。

 「うぉ? クマや、そりゃぁ、毒熊で食えんぞ! 今回は……」

  ”ぅおん!” ”ぅわん!”

 「お? おおおぉ???」

 普段は良く言う事を聞く犬達。だが、猛烈に獲物の権利の主張をする。

 その様子に少々たじろぐカンイチ。

 どうしたものかと、群の頭、兼、通訳のフジに救いの目を向ける

 

 『ふぅむ。構わんだろう。シロ、主は無理をするなよ』

 ”ぅをふ”

 「良いのかフジよ? 毒熊だぞ?」

 『うむ。クマとハナには影響はまずあるまい。異界の力を得る儀式のような物だ。ほれ、普段より毒蛇を喰らっているだろうが。シロは更なる高みに。クマの仔を宿すためにな』

 「な……。犬たちも大変じゃなぁ……」

 『お爺よ。おぬしの長いであろう生に付き合うためでもあるのだぞ?』

 「……そうか。すまんのぉ。よし!」

 合図とともにガフガフと熊に食らいつくクマと、ハナ。シロはフジに言われたように赤味の肉の一部を頬張る。

 『ふむ。良かったな。お爺』

 「……うむ。フジも頼むぞ?」

 『うむ』

 ……

 

 「あ、ありがとうございます!」

 討伐証明じゃないが、真っ二つになり、クマたちに貪られた熊の死体を村長に見せる。

 「ほ。結構でかい赤爪だな」

 ダイインドゥがその場で売れる爪を切り取る。残りの熊の残骸は他所に埋めるつもりだ。

 「流石ガハルト殿。一撃か」

 ディアンが頭蓋の見事な切断面に感嘆の声を上げる。

 こちらも元”金”の冒険者だ。一目でわかろうというもの

 

 「あ……ありゃぁ、赤爪……だ」

 「赤爪だったのか……良かった……被害が出る前で……」

 「あ、あんなでけぇ……の」

 「ああ、並の冒険者じゃ敵わねぇ……」

 村人も横たわる熊に驚きの声が上がる。これが熊魔物の恐怖。

 普通のクロクマだと思って狩猟に行っていたとしたら

 周りを囲んだところで、その爪にかすりでもすれば、毒で体の自由が奪われ、生きながらに順に喰われるだろう。

 集まった子供達の中には恐怖で泣く子も

 「こ、これは、礼金に……。これだけの赤爪……には」

 準備したのは大型のクロクマ分……少々……いや、かなり足りないが……といったところだろう。

 恐る恐る麻袋を差し出す村長。厄介者の”赤爪レッド・クロー

 その討伐料金はかなりお高い。

 本来であれば、成功報酬で不足分をと折衝になるのだが……

 

 「はっはっは! 構わんぞ。村長殿! ギルドに依頼した金額で。俺が楽しめた分の金子を払ってもいいくらいだ! はっはっは!」

 と。

 熊との戦闘を楽しんだガハルト。それだけで十分といったところか

 「……と、脳筋ガハルトが言っておるで。ナッツ村長気にすんな」

 「し、しかし……」

 「なら、村長秘蔵の漬物を呼ばれるかの」

 「うん! 良いね! それ!」

 「は、はい! 準備します! あ、ありがとう、ありがとう! カンイチ殿ぉ ガハルト殿ぉ」

 「村長殿、漬物も良いが、夕食にしよう。食卓の一品追加とはならなんだが」

 「は、はい! 只今!」

 ……

 

 農村ならではの質素ではあるが、この地域では高価な新鮮な獲れたて野菜がふんだんに使われた料理が並ぶ。本日の英雄ガハルト殿は少々不満顔だが……

 『ここの野菜、美味いぞ。ガハルトよ。食え』

 フジの一言で渋々フォークを動かす。

 完全肉食の狼に見習って野菜を頬張る大男。

 「くくく……それにしても、フジよ。野菜良く食うな」

 『うむ。塩味しかないが、これがまた旨い。それぞれの旨味がな。腹の調子もいいし、胸焼けもしない。クマたちにも食わせたいところだが……もう少し時が要るだろう』

 

 ――犬達も散歩の途中、草を食うで……同じようなもんかの?

 まじまじとフジを見つめるカンイチ。

 

 「ふ~ん。面白いの。ガハルトも見習えよ?」

 少々揶揄い気味に声をかけるカンイチ。普段のカンイチになら、 『力にならん! 草など食うか!』 『肉だ!』 となるが、相手がフジ……。

 「……ああ」

 しょんぼり虎男。嫌々フォークを伸ばす

 「肉は野営でいくらでも食えばええじゃろが……」

 「……ああ」

 「ま、種族特性もあるしぃ。あんまり無理するなよ? ガハルト君!」 

 トマトにフォークを刺して頬張るアールカエフ。

 「アール様!」

 「そうじゃな! ワシら酒とられたら死んじまうで」

 「だな! ”ぐぃ”……ぷはぁ~! ここの穀物酒、うめぇな!」

 「オレにも! 母ちゃん!」

 こちらは何処でも”酒宴”のドワーフ一家だ。種族特性? ただのアル中では? と疑問に思うカンイチ。

 美味そうに飲むその姿。酒取り上げたら死んでしまうというのもまんざら嘘じゃなさそうだ。

 

 「でも、本当に野菜って美味いですよねぇ……カンイチさんと付き合いだして真剣に向き合って……知って、衝撃でしたよ。俺も肉ばっかりだったし。農家の出だから余計に肉に憧れてたもんなぁ。確かに昔、家で食った野菜、美味かったなぁ」

 「おお! そうじゃ! そうじゃ! それじゃ! よういった! イザーク君! 畑がワシらを待ってるぞ! ともに耕そうぞ!」

 「はい! カンイチさん!」

 「言ってろ……が、何処に畑を作るんだか?」

 畑で盛り上がるカンイチとイザーク。

 そこにつまらなさそうにツッコミを入れるガハルト。嫌々、トマトをフォークで突き刺しながら

 「そのための資金調達じゃ! 広大な土地を買うぞぉ! ガハルトよぉ!」

 「……どこの誰に払うのかわからんがな……(ぼそり)」

 余計な事を言って楽しみにしているダンジョン行が消滅しないように、ぼそりと漏らすガハルト。

 「うん?」

 「何でもない。畑……楽しみだな。カンイチ」

 「おうよ!」

 くすくす笑うアールカエフ。ガハルトの考えなどお見通しだ。

 まぁ、彼女も楽しんでいるので余計なことは言わない。

 こうして、想定外の熊退治、初日は過ぎていく。

 ……

 

 ……


 「村長殿、世話になった」

 「いえいえ。こちらこそ。凶暴な熊をも除いて頂いて……ありがとうございました」

 「ついでだ」

 「じゃ、またの! ナッツ村長!」

 「美味しい漬物ありがと! またね!」

 村長に礼を。村民に見送られ、街道を往く旅人に

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