表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
隠し事……
181/520

仲間たち

 アールカエフが”御籠り”に入って、三日が過ぎた。


 「カンイチ……飯食え。体がもたんぞ?」

 「ああ……。後で……の」

 

 多くの花で飾られた寝台で眠る、アールカエフ。彼女の横に陣取り、微動だにしないカンイチ……。

 偶に動くと思えば、アールカエフの脈をとったり、彼女の目から零れる涙を拭くときだけ。

 

 「カンイチ。アールカエフ様も、今のお前の姿に嘆いて涙を流されているんだ! お前が、病気になったらさらに悲しまれるぞ」

 「ああ……そうじゃな……アールよ」

 「カンイチ……」


 「どうでした? ガハルトさん? カンイチさんの様子は?」

 「うむ……もう暫くかかるだろうな。思った以上にショックが大きい様だ。知り合ってそんなに経ってないだろうに?」

 「時間……じゃないですよ。よし! 特製滋養マシマシの蛇スープ。持って行ってみようか……」

 「すっかり、スープ職人だな……イザークよ。……確かに美味いのが少々腹立たしいが……」

 「なんです? それ。ガハルトさん? 美味いのは正義ですよ! じゃ」


 「カンイチさん。お邪魔しますね」

 「うん? おお……イザーク君。犬達の世話……ありがとうの」

 「いえいえ。クマたちも仲間ですし。問題ないですよ……。アールカエフ様……奇麗ですねぇ」

 「うむ」

 「で、カンイチさんご飯は?」

 「後で……の」

 「それじゃダメですって。スープもってきました。もちろん、アールカエフ様の分も。ほら、あの時、アールカエフ様が褒めてくれたスープですよ。お代わりもしてくれた」

 「あの時の……アールが美味しい美味しいって言った……?」

 「そうです! そうですよ、あの時の。さぁ!飲んでください!」

 「イザーク君……。ああ、いただこう。”ずぅ”……美味い。美味い……の」

 ぼろぼろと涙を流すカンイチ……

 「……カンイチさん。そうだ、焼き立てパンも持ってきたんですよ。アールカエフ様の分も。送る御勤めにも体力は必要ですよ。途中で倒れたら誰がアールカエフ様を御守りするんです?」

 「そうじゃな。イザーク君の言う通りじゃ……最後まで御勤めを果たさんとの。スープ、もう一杯頂けるかの」

 「ええ、もちろん! 沢山ありますから!」

 ……

 

 「やるな……イザーク。助かった」

 「いえ……結構食べてくれましたよ。でも……アールカエフ様が……くっ」

 イザークの頬にも涙が伝う。

 「大変、明るいお方だったからな」

 「ええ、ええ……あの笑顔がもう見れないなんて……」

 

 「どうだい。様子は?」

 礼服に身を固めたジップご一行。様子伺いに来たようだ。

 「ああ、ジップ。すまんな。うちのチーム世話になりっぱなしだ。……まぁ、俺が言うのも何だが」

 「やっと、先ほど食事を摂ってくれました……」

 

 「そうか……まぁ、アールカエフ様には俺たちも世話になってるからな……でも急だな」

 「ああ。カンイチによると、出会う前から症状はあったらしい。症状というのも変か……”寿命”だものな」

 「そうだな。大往生……だな。これだけの花。ずいぶんと慕われてたようだしな」

 「ああ。何せ、あの領主様から見舞いの文と花代の金子が届いたくらいだ」

 「そいつはすごいな……領主様もそこら辺は弁えていらっしゃるようだな」

 「ああ。接触も今のところないしな。まぁ、あってほしくない……今のカンイチの精神状況ではな」

 「は? やられちまう……か?」

 「さてな」

 「いえ……俺は逆だと思いますよ。アールカエフ様のお眠りを妨げるものが来たら……皆、切り刻むでしょう。何人でも、容赦なく」

 「……だな」

 

 「……なら、最悪のお知らせだ。王都組が、この町に入ったようだ。『活動休止中』の貴殿らだ。王都のギルドの連中は抑えが利くと思うが、貴族……はな」

 「ふむ。俺のやる事は変わらぬ……。アールカエフ様が最後、カンイチの事を頼むと、ワインと共に”めい”を下賜されたからな」

 「そうか……なら、俺も混ぜてもらうか」

 「うん? ジップ? わざわざ危険に身を晒すこともあるまい?」

 「ああ。だから、チームじゃなく俺個人でだ。王都行も延期っぽいしな。時間はある」

 「……俺も手伝おう。狼の世話等もあろう?」

 「私も。女手は要ると思うわ。早速カンイチさんと打ち合わせしてくるわね。そうそう、イザーク君。夜にはお風呂に入れるようにしておいて。必ず行かせるから」

 「はい! お願いします! 皆さん!」

 「ううん? イザーク……。君? 私を忘れてないかい?」

 「え? ええ? ガルウィンさん?!」

 「は? お前さんも参加か? 珍しいな!」

 「ええ! もちろんですとも! アールカエフ様とカンイチの純愛……市井で既に物語となっていますよ。そのような御方のお手伝いが出来るとなれば! 吟遊詩人達も、その物語を曲にと競っております! ああ! 素晴らしい!」

 「……はぁ?」

 「……すまんな。イザーク。少々……ズレてるが、剣の腕は特級だ」

 「い、いえ……ははは……」

 …… 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ここからの展開が楽しみでしょうがない [気になる点] あのお酒… [一言] いつも楽しみにしています 最近は何日か我慢してまとめて読むようにしてるのですが読んだ後に続きが気になって仕方あり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ