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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
力の解放
155/520

ハインツのレストランへ行こいう!

 …… 


 今日はハインツのレストランで食事を摂ることにし、フジをピックアップ。

 もちろんアールカエフにも声をかけるつもりだ。

 もう慣れた道を進み、坂道の中腹にあるガラクタの塔が乱立する彼女の自宅に。


 「お~~い。アールよ~~居るかぁ。飯まだなら一緒にどうじゃ~~」

 と、呼びかけるカンイチ。

 「……」

 ”しーん” 家の方からは返答はない

 「うん? 今日は珍しく居ないのかの。それとも怪しい実験か?」

 

 ――うん? 錬金術に通じるものか? 今度教えてもらうか……

 などと思っていると、

 

 「……いち。かん……」

 

 「ううん?」

 かすかに聞こえるアールカエフの声

 『……お爺。なにやら、あすこに埋まっているようだぞ?』

 「はぁ? アール!」

 あわてて、半壊しているガラクタの塔に駆け寄り、除ける


 ”がんがらがらがら……”

 ガハルト、イザークも手を貸し、急ぎガラクタをどけていく。

 「……も……う少し……丁寧に……商品よ?」

 ……


 「いやぁ~! 助かったよ! こりゃ、朝までって覚悟してたくらいさ!」

 ”ぱんぱん”と服の埃をはたき立ち上がる、翡翠色の髪の持ち主。アールカエフ。

 全然懲りていない様子。

 「おい。本当に死んじまうぞ……アールよ。ちゃんと血栓の検査しとけよ……」

 「はいはい。全く心配性だね! カンイチは! ……。うんうん……うん? 大丈夫っぽいよ?」

 「なぜに疑問形なのじゃ? ちゃんとやっとるのか?」

 「当たり前だろう? 健康は全く問題ないよ! はっはっは!」

 けっこう華奢に見えるのに”頑強”なアールカエフである。

 

 「怪我しちゃいますよ? アールカエフ様?」

 「なぁに! 心配ご無用だよ! イザック君! 「イザーク君じゃ」 伊達に、1000年埋まっていないさ!」

 「せ、千年ん……」

 「アールよ……自慢にならんぞ。埋まっていたってことは飯、まだじゃな。いくか?」

 「うんうん! 行くよ! 行く! 昼も摂ってないんだ。もうお腹、ペコペコだよ! ちょっと待ってて。外套取って来る!」

 

 ――昼から埋まっていたのかの? まさかの……


 

 「いやぁ、今日は本当に参ったよ。安定感抜群の所だったんだよ? あそこは! なのに、横から、たったニ個抜いただけで崩れるとは! 僕はもうがっかりさ!」

 どうやら、ガラクタ・ジェンガを敢行したらしい。それで、失敗したようだ。

 プリプリと怒り出すアールカエフ。カンイチにしたら、意味不明だ。いや、カンイチ以外も。まぁ、ガハルトは我関せずのようだが。

 「少しは片付けろ。アール」

 「横から抜いたら、崩れますよぉ……アールカエフ様ぁ」

 「わかっていないねぇ! イザック君! 「イザークじゃ」 あの美しいバランスを!」

 「はぁ?」

 「アホ言ってないで、片付けろ」

 「まぁ、そこまで言ってくれるんだ! カンイチと片付けに来てくれてもいいよ? 歓迎しよう! イザーク君! 「イザック……あれ?」 引っかかったね! カンイチ! ははははは!」

 無邪気に笑う、翡翠色の髪の少女。こういうのも悪くないと思うカンイチだった。

 ……

 

 店に到着するなり、早速と地下に通される。

 「いらっしゃいませ、アールカエフ様、フジ様、ガハルト様、カンイチ様、イザーク様」

 「うんうん! 今日も頼むよ!」

 『うむ! 楽しみにしているぞ。店主』

 「はい。御期待に応えられるように。で、本日の”納品”の 「クラフト様その前に……」 おっと、私としたことが、どんな食材かと期待のあまりに。今までの卸して頂いた買取価格にございます。明細書も付いておりますので御確認をお願いします。それと、”片牙男爵”と、魔猪の牙、革につきましては、オークション後に。売れ残る事はないでしょう。ご期待ください」

 

 黒服の職員。ちょっとその筋のお方のような出で立ちの男性二人が、ワゴンに麻袋を乗せて現れた。

 ”ごくり”。イザーク君の唾をのむ音が…

 そこに添付してる明細書にザっと、目を通すカンイチ。数量なんか一々覚えていないが。確かにギルドに卸すより単価の値段が格段に良い。魔猪なぞ倍近い。

 

 「クラフトさん、魔猪、随分と高いですね」

 「ええ。ギルドの販売額が高価ですので。どうしても価格は引っ張られてしまいますね。もちろん品質も特上品。それでも結構乗ってるんですよ。ふふふ」

 「なるほど……。こりゃ、皆、大物やら、珍しいものはこっちに持ってくるだろうの」

 『お爺。そんなモノより、”納品”だ。我は、蜥蜴肉が食いたい。あれであれば、今日中に喰えよう?』

 「うむ……。金子はワシが預かるぞ。宿舎で分けよう」

 「み、見てもいいです? カンイチさん?」

 「ああ、もちろんだ。イザーク君。ガハルトも見ておけ。不満があれば言うと良い」

 「俺は特にない。信じるさ」

 カンイチから手渡された明細書、その数字を見て固まるイザーク君。

 「き、金貨……700ま……ま、枚ぃ?!」

 大概のチームは利益の一部をいざという時の為に積み立て、残りを分配という形だ。100枚積み立てても、単純に200枚手に入る事となる。

 「はい。珍しい食材、処理、鮮度も申し分なく。買い手、数多あまた。商売大繁盛にございます。本命のオークションもお楽しみに」

 「おお! イザック君! お金持ちだねぇ! 「イザークじゃ」 これだけあればいつお嫁さん貰ってもいいね!」

 「……アールカエフ様ぁ。俺……その相手が居ません……」

 「あらま。それは残念! そういや、肉屋に可愛い子がいたなぁ、紹介しようか?」

 「ぜ、ぜひ!」

 「確か……テルルちゃんっていったかな? 元気いっぱいの可愛い子だよ?」

 「うん? テルルちゃん?……さん? ……肉屋の? ! ひ、ひぃ!」

 イザーク君の脳裏には両手に肉切包丁を握り、にんまりと笑う、肉屋の女将さんの姿が

 「どうしたんだい? イザック君?」

 心配そうに、イザークの怯えた目を覗き込むアールカエフ。

 「アールよ……お前さん、時間が止まってるぞ。そのテルル嬢は、今や健やかに、”獄卒”に御成りじゃ」

 「うん? そうかね? ははは! 長命種のあるあるだね! 僕、引きこもりだし? それに、なんだい? ”獄卒”って?」

 「はぁ……」

 イザーク君の一縷の望みが砕かれた瞬間だった

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