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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
力の解放
151/520

南の大草原

 …… 


 「ふぅむぅ。コブラは酒になるのかの。そもそも大きすぎて瓶には入らんが……樽じゃぁのぉ」

 「ここは、大きいのしかいませんね」


 彼らの目の前には鎌首を持ち上げる。真っ黒なコブラが。長さも5~6mくらいある。散々大きいものを見て来たカンイチ。いい加減、慣れたのだろう。余裕がある。


 「じゃぁ、焼いて食ってみるかの。一応、狩るか」

 「あ! 生け捕りにします? ほら、ギルドの解毒剤やらの搾毒用に……」

 「うむ! よい考えじゃな。リストさんも喜ぼう。じゃ、イザーク君、ゴーじゃ!」

 「え、ええ!? お、俺ぇ!」

 「言い出しっぺじゃろが。観察じゃぞ。あまり近くによると毒吐くかもしれん。注意じゃ!」

 「は、はい!」


 ゆっくりと近づいていくイザーク君! 緊張が場を支配する。

 そうっと剣の鞘を向け、押さえようとするもなかなかの力。するり、するりと抜ける。

 絶妙な周期でゆらゆらと揺れるコブラの頭。

 いつの間にやら、それに合わせてイザーク君も同期したかのように揺れ出す。その隙を逃すコブラではない、全身をばねのように収縮させ、


 『そこまでだ』


 フジに剣帯を噛まれ、引き戻されるイザーク君。

 「は? あ……」

 『相手に完全に呼吸を支配されていたなイザークよ。さすれば、タイミングも向こうの呼吸となる。集中しすぎだな。それに、相手は目の前のモノだけだとは限らぬ。お爺』

 「うむ。フジの言う通りじゃな。もうちょい余裕をの。どれ……」


 ゆっくりと近づき、胴体を掴み、その手をせりあがるように胴を伝い、易々と頭を掴むカンイチ。

 「ま、こんなもんじゃな」

 しゅるりと麻袋に入れて、口をしっかりと締める。大物だし、危険だから一匹に一袋だ。


 「……すいません」

 「ま、修行じゃな」

 「カンイチさんはその技をどこで?」

 「南の島での。昔の話じゃ」

 「島?」

 聞いたことも無い南の島、その密林の中、物資の供給も無しに限界の生を生き抜いて来たカンイチ。彼にしてみれば、良い蛋白源位の認識だ。

 「……?」

 「ま、いいじゃろ。次行くぞ。ところで、ガハルトは何処まで行ったんじゃ? あいつは……」

 

 その後は、コブラに合うことも無く、希少な薬草の採取。そんな中、低木の陰に可憐な花を咲かせる植物が。

 「お? おお? こりゃ、セッコクだの。とって行こう!」

 「どうするんです? 薬草じゃないですよ? それ」

 「育てて愛でるんじゃよ。心の余裕じゃな」

 「ふ~~ん」

 「ま、若造には解るまいて」

 「そう変わらないでしょう! ……いや、本当に爺ちゃんみたいだよ。カンイチさん?」

 懐かしい植物を手に入れて満足げのカンイチ。地球では育てていたし、自分で山まで採りに行ったりもしていた。

 爺と言われても、まぁ、間違えじゃなし。全く気にしないカンイチである


 「お~~い! カンイチぃ~~こっちだぁ!」

 

 「うん? ガハルトが呼んでるの……行ってみるか」

 「なんか嫌な予感が……」

 「行くぞ。フジ」

 『うむ』


 ガハルトの声のするほうに草を掻き分け、向かう。

 「おう! こっちだカンイチ! アレみてみろよ! アレ!」

 彼の指さす方には、以前木が生えていたのだろう、草原にぽっかりとあいたスペース。

 

 そこに寝そべり、日向ぼっこをしている深紅のオオトカゲ。首の回りにはエリマキトカゲのような被膜が見られる。コモドドラゴンとエリマキトカゲを足して二で割ったような怪獣だ。

 それが、5mほどの大きさのものが1頭。一回り小さい4mほどのものが1頭。そして1~3mほどの大きさのモノが、17~8頭。重なってるモノもいるので20を少し超えるだろう群れだ。

 

 「凄い色じゃな……まっかっかじゃの」

 「す、すげぇ……でかいし、群でいるんですね。あれって、もう魔物じゃないですか?」

 「おい、風上に行くなよ。襲って来るぞ。イザーク」

 「は、はい……」

 「で、どうすんじゃ? ガハルトよ」

 わかってはいる。が、一応声をかけるカンイチ。

 ジッと、真剣なまなざしでトカゲを見つめるガハルト。その口元はにやりと笑っている。舌なめずりしそうなほどだ

 ふぅ。一つ溜息を吐く

 

 「うん? もちろん狩るが。あのデカいのをやろうと思う。多分群の頭だろう」

 「あれか……。一回りデカいのぉ。しかも、体の側面に出てる青い斑点……毒々しいの。こりゃ、ルック君は毒は無いと言っていたが……。恐らく毒持ちじゃな。見るからにヤバそうだわい」

 「おぅ。俺もそう思う。やっぱりカンイチもそう思ったか。でだ、囲まれるといささか都合が悪い。手前の、あれ……。ほれ、次席みたいのが居るだろう? そいつをカンイチにお願いしたい」

 「……まったく。戦闘狂が……噛まれるなよ。毒消しはないぞ」

 「おう! 毒も吐くかも知れんな。用心していくわ」

 行かないという選択肢はないのかと、ガハルトの顔を覗き見るも、先ほどから一切トカゲから視線を外そうとしないガハルトを見て言葉にする方を諦めるカンイチ

 「ガハルトさん。作戦になっていませんが? 俺は何します?」

 「うん? ガハルトの我がままじゃ。イザーク君はここでフジと一緒に居るとええ。頼むぞ。フジよ」

 『ふん』

 「じゃ、頼むぞカンイチ」

 「やれやれじゃわい。じゃぁ、行ってくるかの」

 ……

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