改造
……
『……で、話をまとめるとだな。いいか、カンイチ? 【地球】には還れない。人として生きていけない、特異点になるからな。で、他の星で 【神】 を目指し修行する。その星は文化度も低いから特異点のカンイチが紛れるのに都合がいい。ここまでは良いか?』
いろいろ理解が及ばないが……【地球】に還れなければ仕方ない。道はそれしかないのだ。己から”死”を選ぶことはしない。そりゃ、孫やら曾孫の代わりに命を差し出せ! というのであれば喜んでこの命、差し出すものだが。
二には了承の返事しかなかった。
こくりと頷く。
『よし。で、その星……面倒だ。もう俺の星でいいな! そこは【地球】にない、【魔法】というものがある。しかも魔物、怪獣、この熊みたいのな。そいつ等がゴロゴロいる。そんなもんだから、いまの”寿命限界個体”のまま送り込んでも修行云々の前にすぐに死んじまうから、そうだなぁ……15歳くらいに若返らせて送り込む。ここまでは?』
物騒なところだが若返るということと理解し、こくりと頷く。
『武器……まぁ、身を守るもの。どれ、カンイチの身についてる技能――農業かぁ。他には……”ピ!”……銃剣術? 格闘術? ふむふむ』
ふむふむと、タブレットを覗く2柱の神。
『ではその辺りを強化してと――」
「か、神様! そんなモノより、農業を。食うもんさえあればなんとかなりますじゃ」
と、二。
「……身を護れぬと呑気に農業もできぬぞ? カンイチよ?』
と、*****が心配するも、面白がって***が応じる。
『よし! わかった。その願い、我が聞き届けよぉう! カンイチ! 【農業】……今、Bかぁ。ならマックス! Sな。銃剣術やら格闘もAと、Bかぁ。中々のものだな。よし、此奴もSにと……』
”ピッピッピピピ……”
なにやら、***の持つタブレットから”ピピピッ!”と電子音が響く。
よく意味が解らないが、二はただ見守るのみ。
『おいおい。***よ、そんなにポイントなかろうよ!』
『いや、伊達に長生きしてないわ。カンイチ。ナイスだ。日々の鍛錬も怠らなかったようだしな。後は俺の方からお詫びポイント乗せればと……。”ピピッ”……ふむ。これでコロッとは逝くまい。おっと! 免疫……。面倒だ身体強化……チッ――! ここで”寿命限界個体”故か! めちゃくちゃ低いな! ”ピッ!”。これも上げておくか……”ピピッ!”むむ!? 若返れば増えるかな? ”ピ!” むむむぅ! ……。……。……。……なんか楽しくなってきたな♪ おい! ”ピピピッ!”……。カンイチよ! この俺が、最強に魔改造してやるぞ!』
……
***の手元、タブレットの画面で何が行われているかさっぱりだが、***が大いに楽しんでるのはわかる。少々心配ではあるが、今のところ特に身体に変化はないから黙っている。
時折聞こえる『寿命限界個体』って自分の事であろうか。それはそれで……あんまりだ。事実だが。
農業のランクアップ。訴えは受け入れられた。なら良いか……と納得の二だった。
『おいおい。只でさえ、特異点。神格持つ者なのだから。……程々にな』
『ちっ! ポイントがもう無ぇ。足りないな……*****様ぁ。ポイント分けてよ』
『はぁ? 何で私が!』
『*****様んとこ、人類いないじゃん。只、シコシコポイント貯めてるだけじゃつまんないぞ!』
『余計なお世話だ!』
『ポイントくれないとカンイチ、コロッと逝っちゃうぞ! 短い間だがこうして会話もしてるし。心を通じさせている。……お慈悲を。ほれ、カンイチ! お前も! 慈悲を乞え!』
「え? は、はぁ? ……お、お慈悲を……神様……」
意味も解らず***の言う通りに、*****に平伏し、慈悲を乞う…。
――そういえば、先ほど、コロッとは回避されたのでは?
と、疑問が湧くも、主導は神様だとお任せすることにした二。
そして、じっと*****の顔を見つめる、***と二。さしもの*****も白旗のようだ。
『……わかった、わかった。ほれ。これ使え』
『おお! さすが*****様! 太っ腹! ……実物も?』
『うるさいわ! ちゃんと翻訳も付けておけよ』
『了解! なるほど! 言葉判らないとそれこそ”話”にならんものな。さ~てと。他に何つけようかなぁ!』
”ピピピッ……ピッ!”……
……
~改造前~
田畑 二 99歳 【地球人】
基本
身体強度:D(B、寿命限界個体に付き下方修正)
運動能力:C(A、寿命限界個体に付き下方修正)
運動反射:C(B、寿命限界個体に付き下方修正)
精神力:S
回復力:E(B、寿命限界個体に付き下方修正)
幸運:B
スキル
農業:B
体術:B
槍術:A
・危険物甲種
~魔改造後~
カンイチ 15歳 【亜神】隠蔽【人類】
基本
身体強度:D→A
運動能力:C→A
運動反射:C→A
精神力:S
魔法耐性:A(New)
回復力:E→S
幸運:B→A
スキル
農業:B→S
体術:B→S
槍術:A
・危険物甲種→調合(調合の知識)
・鑑定『極』(New・隠蔽により”鑑定”とのみ公開される)……天界に検索アクセス可能。
・自動翻訳(New・隠蔽により非表示)…指定した星のすべての”言語”に対応。フィルター機能搭載。
・無限収納(New・隠蔽により”収納”とのみ公開される)……別の次元を利用し、どんなものでも時間停止して保管できる。(天界の品。よって生き物を”収納”し、死亡せしめることは禁ずる)
『ふぅ……よぉおし! こんなものでどうだ! カンイチ! 魔法云々は……まぁ、その気があれば向こうで勝手に学べ』
目の前の空間に文字列が並ぶ。見慣れない言語と馴染みのある日本語で表記されている。その前でふんぞり返る***。会心の出来なのだろう。
『ああ、わかりやすくアルファベットにした。Eが一番悪くて、Aが一番良いの5段階。Sは別格だ』
『うん? しかし、***よ。盛ったな……。無限収納? そんなのどこにあった? あれっぽっちのポイントじゃ付かぬだろうに?』
『それなぁ……ウチらが使ってるこの袋。便利だから持たそうと思ってドラックしたら、カンイチの中に入っちまった……』
いやぁ~困った! お手あげだ! といった風の***。
『な! そんなことが? どれ……。***、お前には入らんな』
『おい!』
『お前だってカンイチに同じことしたであろうが? だが、大丈夫か? ”実行”したら、即、死亡なんてことになったら大ごとだぞ? ********様も大層お怒りになるだろう……』
『……もう、取れないから、しょうがなかろうよ。その時はごめんな。カンイチ。なぁ~に。”最初から”やり直せるさ!』
「……は、はぁ」
――不可抗力の事故死? か……の。痛いのは勘弁願いたいところじゃが……
『多分……大丈夫だろ?』
二の不安気の視線から、ふぃと視線を逸らす***。
納得はいかないが、どうにもならない。なすがままだ。
諦めて宙に浮かぶ文字を順に見て行く二。
――若返って健康になるようだな。農業も別格のSを付けてくださっている。実感はないが……まぁ、神様達がお手をお貸しくださっているのだ。……大丈夫だろう?
と、一応、納得。
「ですが、神様、まだ、ちぃとも実感がありませんが……」
『そりゃそうだ。この”実行”命令を押さないとな。旅立ちの時にしよう。じゃぁ、カンイチの第二の人生を祝し、軽く一杯やるか! うん。コレ、邪魔だな』
***の持つ巾着袋に大きな化け物熊が吸い込まれる。あたかも金閣銀閣のもつ瓢箪のように。
熊を袋に納めると、***と*****は部屋をでていった。
部屋に一人残された二。いや、二頭の犬も。
傍らで大人しく伏せている、クマ、ハナの下へ手を伸ばす。ふかりと頭を撫でる。暖かい……
「クマぁ、ハナよぉ。ワシら一体、どうなっちまうのかのぉ」
””く~~~ん…””
……




