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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 チーム
144/520

改めてフェンリル。

 …… 


 「いやぁ~~ギルドの方から、注意勧告があったんで、ついでと見に来たんだが……」

 そう言って、戯れる4頭の獣を眺めるジップ。

 冒険者には”魔獣”って事だけ明かされている。

 

 「しかも、数が倍になってるしなぁ。それぞれに番とは恐れ入ったわ!」

 「あの2頭も直、魔獣よ……なんか違う。あの大きな白いハイイロオオカミだけがまともだわ」

 ハスキー犬が二頭、フジとシロはハイイロオオカミという種類になる。フジは偽装だが。

 「うん? ハイイロオオカミ? 白いぞ? アイリーン?」

 「品種的にって意味よ。白毛は珍しいわ。『貴婦人』と言われて高値で取引されてるわ」

 「ふ~~ん」

 「……で、ジップよ。さっきのは?」

 「うん? アトス? お前さんが聞こえていないということは恐らく”念話”だろうなぁ。あの、銀狼、喋るぞ」

 「……そうか。馬鹿な連中が手を出さねばいいが……」

 「ああ、そうだな。しかし……狼タイプの魔物で喋るのって」

 「餓狼種、黒魔狼種……そして、フェンリス狼種。天狼フェンリル」

 と、アイリーン。

 

 いずれも、絵本や伝承にある魔獣だ。餓狼は群れで行動し、人語を理解し、誘い、誑かし、人の隙を窺い食い尽くす。

 黒魔狼は以前は人の友、従魔の先駆けと謂われ、多く見られたが、”戦争の道具”として使おうと画策した国によって、人と袂を分かつことになり人界から消える。が、今も、山奥の村などに何頭かは確認できる。

 そして、フェンリル。数多くの魔物、魔獣でも3指(聖古代ドラゴン等の古代竜、霊鳥ガルダ、天狼フェンリス狼)に入る魔獣。多くの魔法を操り、城壁なども難なく引き裂く爪をもつ。

 

 「フェンリルかぁ……」

 「最悪ね。餓狼は無し。黒魔狼……い、いえ、違うのよ。以前見たものと……」

 「なら、フェンリルだろ? わざわざ、ハイイロオオカミに化けてるんだし?」

 「そうよね……でも、信じられない。人の下に……」

 「まぁ、色々あるんだろうさ。つがい……ねぇ。ははははは」

 「だからぁ、笑い事じゃないでしょうに!」

 「どうにもならんだろう? それこそ手を出せば町が消えるぞ?」

 「うっ……」

 「……なるほどなぁ。くくく。それは仕方あるまい」

 「もう、アトスまで」

 ……

 

 「ほう、凄い数だな」

 カンイチの足元に積み上げられた野兎。

 「ええ。今から剥くんですよ。彼らの夕食です」

 と、イザーク君。早速、解体用のナイフをとりだし、剥き始める

 「へぇ。お! イザーク! 上手だな!」

 「ええ。毎日剝いていますんで。ははは……」

 手際よく兎を剥いていくイザーク君。すぐにでも達人の域に達するだろう。『兎剥きのイザーク』と二つ名がつきそうだ。

  

 「俺もやろう……」

 己のナイフを出して器用に剥いていくアトス。

 「あ、アトスさん、汚れますよ!」

 「大丈夫だ。うむ。初心を思い出す……あの頃。……夢を追っていた……」

 「アトスさん……」

 うんうんと頷くジップとガハルト。彼らも若かりし日を思い出したのかもしれない。

 

 「兎剥きながらする話……かのぉ」

 「「カンイチ、台無しだ!」」

 ジップとガハルトが思わず突っ込む。

 「そうねぇ。兎剥きながら……ないわ」

 とアイリーンも。

 「ふん! 苦労知らずの優等生の台詞だな! なぁ! ガハルト!」

 「ああ。金がない時はよく捕まえて食ったモノだ」

 「そうだぞ! 依頼のあと、すきっ腹で兎を追ったものだ!」

 と抗議の声を上げる、ジップとガハルト。

 

 「そいつは難儀じゃったな」

 とカンイチ。

 「ええ。ご苦労様ぁ」

 とアイリーン。さらりと。

 「このぉ!」


 兎も粗方剝き終わり、

 「よし!」

 木皿に水。クマたちの食事が始まる。段々食事量が増えているが、剥く人工が増えたせいで、気にならない。前は、一人で剥いていたから。今はイザーク君が手伝ってくれる。

 

 「うん? フジ……だったか。あの魔獣は兎、食わんのか?」

 一頭だけ、はなれたところで水だけを摂る。フジである。

 「あ奴はワシらと一緒の物を食うんじゃ」

 「は? ……変わってるな」

 「まぁの」

 「……ジップ。それで済んじゃうの? 脳筋は良いわね」

 と、アイリーンがチクり。

 「良いんじゃねぇの?」

 「どれ。フジ。ブラシかけるぞ」

 カンイチが声をかけるとのそりのそりとやってきて、身をゆだねる。桶に水を張り、タオルを濡らし、丁寧に拭きあげる。

 「へぇ。奇麗にしてるんだぁ」

 と、手をワキワキさせながらアイリーンが訊ねる。触りたいのは明白だ。

 「うん? フジはダメじゃぞ。飯が終われば、イザーク君の方でも始めよう、そっちでの。クマ、ハナなら大丈夫じゃろ」

 そう言って、フジの背にブラシを入れていく。クマ、ハナは人に慣れた”犬”だから。シロは曲がりなりにも狼だ。間違いがあってはまずい。

 「残念。それにしても……気持ちよさそうねぇ。ふふふ」

 特に首から耳の後ろがお気にいりだ。もちろん背中も。目を細めるフジ。

 

 ――ふぅむ。フジは魔獣故か、あまり、草やら、引っ付き虫(毛に絡む草の種)も着かぬの。泥すらも。常に綺麗じゃ。フジ自身も”洗浄”とやらを己に掛けているのかもしれないの。アールのように

 と分析。

 が、奇麗だからと時間を短くすると怒るので、クマたちと同じくらい念入りにブラシを入れるカンイチであった。

 

 そうこうしてるうちに、イザーク君の方でも始まったらしい。

 「クマぁ!」

  ”ぅおふ!”

 尻尾をブンブン振ってイザーク君の方に駆け寄るクマ。すっかり慣れたものだ。

 カンイチ同様、タオルで拭きあげ、ブラシを入れていくイザーク君。アイリーン嬢が近くにいるせいか、少々上気しているようだ。顔が赤い。そんな様子を見て、カンイチ。

 「若いのぉ……シロ!」

 フジを送り出し、シロを呼ぶ。

 「ふ~ん。なんか平和だなぁ。いつもこんな感じか? カンイチ? ガハルト?」

 「そうじゃが? 犬達は友であり、家族じゃからな。うんうん。相変わらず美人さんじゃなシロは」

 ”しゅっしゅ” ”もふもふ”

  ”ぅをふ!”

 「ああ。が、狩りの時になれば、素晴らしい働きをするぞ。魔猪にも怯まん。夜営も任せられるしな」

 「なるほど……夜営だけでも大きいな。うん? 魔猪……行ったのか?」

 「うむ。アカリノから山に入ってな。良き戦いであったわ!」

 「なるほどねぇ。それでついて来たって訳かぁ。お前さんも戦闘狂だもんなぁ」

 「それだけじゃないがな。面白そうだろ? カンイチは」

 「まぁな。面白い……か」

 ……

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