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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 チーム
139/520

風呂が……

 …… 


 「ふぅ……こんなモノかいのぉ?」

 「ふひぃ……疲れたぁ……」

 ようやく八分目まで水を溜めきったカンイチ、イザーク。

 イザーク君は明日は筋肉痛だろう。今日の風呂がどれだけ癒やしてくれるか

 

 「じゃ、アールよ! 早速、沸かしてくれ!」

 「え!? 今、入るのかい? カンイチ? オヤジも言ってたろ? 数日、水溜めて様子見ろって。水漏れするかもよ?」

 「うむ! 見た! 駄々洩れなら仕方なしじゃが特に漏れてる様子もない! ……とおもう!」

 樽の周りをぐるぐると回るカンイチ。

 

 「……仕方ないね。じゃ、これが魔道具だよ。じゃぁ~~~~ん!」

 

 アールカエフの”収納”から現れた物体。直径60cmほどの円筒形の銀色ボディ、そこからホースのようなものが伸びる。その先には金属の直径15cmくらいの丸い玉。樽に掛ける仕様か、背負子のように腕が二本出てる。

 

 「……なんか、農薬噴霧器のタンクみたいじゃな」

 カンイチの言う通り、ぱっと見は、金属性の蓄圧式の背負式の農薬噴霧器のような形状だ。

 「うん? 農薬? 噴霧器? ま、いいや。で、樽の縁にこいつを引っ掛けてと。ここに魔石が入ってるだよ」

 樽の縁にかけ、本体の胴体付近をパカリと空ける。そこに500円玉くらいの大きさの赤い宝石が見える。

 「ほら、この前の、こぶし大のあったろ? そいつをここまで圧縮したんだ。どうだい! 凄いだろう?」

 「アールには悪いが、どう凄いかワシにはとんと解らん。……すまんの」

 「……もう! コンパクトになるだろう!? コンパクトにぃ!」

 「……? ……それだけ? かの?」

 

 ――失敗すると割れるという……わざわざ貴重な魔石を割ってまで必要か? 圧縮?

 と思うカンイチであった。

 

 実際の処、割れづらくなったり、出力・効率が良くなったり、魔力の貯めるキャパが増えたりと、利点は多々あるのだが。特にアールは触れようともしない。当然の周知のことという認識なのだろう。仮令それがエルフの常識内であっても。そういった自己中なところがエルフと言えばエルフらしい。

 

 「じゃ、前みたいに、魔力込めてみてよ」

 「うむ! いでよ! 魔力ぅ~~魔力ぅ~~!」

 宝石に右手をかざし、念じる。声が出てるのは愛嬌だ。

 「クス、その調子♪ その調子♪」

 カンイチの掌から出た静電気のような細い小さな雷が魔石にと吸い込まれていく。段々と輝きを増す魔石。

 

 「ふむふむ。ま、こんなもんかな。もういいよ! カンイチ!」

 「うむ。で、どう使うんじゃ?」

 「良し! 説明するよ! この金属球を…… ”どぼん” あれが熱くなるから、風呂入ってるときに触っちゃだめだぞ。で、これがオン・オフね。で、こっちのが、温め、普通、熱め。で、ここが自分で設定できるんだ。こっちに回すと、熱めより温度が上がる。湯立っちゃうぞ」

 「ほぅ……。…………。凄いの!」

 「うん? 今の間、気になるけど? ま、いいや! 試してみ?」

 「よ、よし……先ずは、オン! ”かち!” で、熱めと…… ”ぽち” こ、これで良いのかの?」

 「うんうん。上出来。上出来。ほら、見てみ」

 

 アールが指さす、金属球が赤灼色に輝き、ポコポコと気泡が上がって来る。

 「お! おおお! 凄いのぉ! こいつは!」

 「そりゃぁ、あれだけの魔石を使ってるんだよ? これくらいの水なんてすぐに沸くさ!」

 「うむ。樽とはいえ、これだけの水量。湯かき棒がいるのぉ。それと、スノコも作るか。あの金属球、触ったら不味いの……金網のカバーもこさえるか? あとは、洗い場のスノコ、足場、小さな梯子もいるの。ふむふむ……」

 「ま、足りないのがあったら、後はカンイチの方で用意してね!」

 「うむ! ありがとう! アール! これで、風呂三昧じゃ! ありがとう!」

 「いや、いや。どういたしまして!」


  しばらく見ていると、金属球が平時の色に。どうもある一定の温度に達すれば止まるらしい。何気に高性能だ。

 

 「おおお! どれどれ……」

 ”ちゃぷり”

 手を湯につける。

 

 ――うむ! 丁度良いの! では早速……

 

 おもむろに服を脱ぎだすカンイチ

 「な! カンイチ! いきなり服脱ぎださないでよ!」

 「うん? アールよ、まだいたのか?」

 「失礼だな! カンイチ! どれ…… ”ちゃぷ” あち! 熱ち! こんなのに入ったら、全身の皮が剥けちゃうぞ!」

 「ひぃ! 大丈夫です? カンイチさん!」

 アールカエフの話を聞いてビビるイザーク君。

 「うむ。そういう訳で風呂さ入りたいのだが? アールよ」

 「むふふ。僕とカンイチの仲じゃない。どうぞ♡」

 「どういった仲じゃ?」

 「もうちょい温かったら一緒に入っても良いいいよ?」

 「一人で入るわい。うんむ。衝立が居るのぉ」

 「つれないねぇ。カンイチ! クスクス」

 「あっち、向いとれ! アール! うん?」

 

 アールカエフと漫才のような問答をしているといつの間にやら傍らにフジがのそり。

 『これが風呂か? 普通の湯だな。うん? 入らんのか? どれ、我が試してみよう!』

 先程迄は全く関心の無かったフジ。カンイチの浮かれ具合を見てどうにも関心が湧いたらしい。

 「あ! フジ! かけ湯を! お前が入ったら毛だらけじゃろが!」

 『なぁに、気にするなどれ…… ”どぷん” うっ! く!』

 躊躇なく湯に飛び込むフジ。

 「ほ、ほれ、熱いだろうが! さっさと出 『うっはぁ~~~~~~これは気持ちいのぉ~~~~。山の中でもあったな。臭いから寄らなんだが……こういう事かぁ。はぁふぅ~~~~』 んな……」

 

 気持ち良さげに湯につかるフジ。ちょこんと前足と顎を樽の縁に置いて。大層気に入ったようだ。

 

 「あ……ああ……毛、毛が……」

 『ふ~~~~。今後、我も入るぞ。お爺!』

 「毛……」

 『些細なことぞ? 気にするな! お爺! ふぅぅ……』

 

 恨めしい視線をフジに向けるカンイチ。カンイチなんぞもはや目に入らないフジ。ぬくぬくの湯を楽しむ。

 何よりの楽しみ、念願の風呂、その一番風呂をフジに取られてしまったカンイチであった

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