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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 チーム
138/520

風呂だ!

 …… 


 「うん?」

 

 大量にキングフロックを”収納”に納めたカンイチ一行。

 南門に到着。その衛兵たちの間に美しい翡翠色の髪が。

 

 「やぁ! カンイチ! 待ってたよ! やぁ! やぁ!」

 ニコニコと手を振るアールカエフその人だ。思わずにやけるところを我慢のカンイチ。

 

 「アールカエフ様! こんにちは!」

 「やぁ! イザック君! 「イザーク君じゃ」 無事で何より!」

 「なんじゃ? アールよ。カエルの回収かの?」

 「は? 何のことだい? 今日は、件の『風呂釜』の魔道具ができたら持ってきたんだよ! カンイチの喜ぶ顔が早く見たくてね! ここで待ってたんだ! カエル? 折角だし貰うけど?」

 「んなぁ! 本当か! アール! でかした!」

 ぐいと身を乗り出すカンイチ!

 「だ、だろう!? 喜んでくれるのは嬉しいけど。早速……と言いたいが、風呂桶は無いんだ。大きな樽貰ってこないとね」

 「カンイチ?」

 ぽかんと、成り行きを眺めていた、ガハルトと門衛ご一行。

 「うん、ああ、アールに風呂の魔道具作ってもらってたんだ! よしよし! 早速、酒屋に行って、樽を貰ってこよう!」

 「じゃぁ、服屋は明日か?」

 「そうじゃな! 何よりの風呂じゃ!」

 「カンイチさんがこんなにはしゃぐなんて……」

 ……

 

 門での挨拶もそこそこに、急ぎ酒屋に直行! カンイチの足取りも軽い。スキップのように。

 「うんうん。こんなに喜んでもらえるとは思わなかったよ!」

 「そりゃ、風呂じゃぞ? 風呂! 毎日、井戸の水で我慢してきたんじゃ。ああ……お湯……風呂!」

 「……苦労してたんだねぇ。リスト君て以外にケチだね。風呂ぐらい沸かしてあげればいいのに」

 「ま、ワシ一人じゃったからな」

 「今は3人だろうに? 臭くなるぞ? イザック君も! 「イザークじゃ」 不潔じゃ、女の子にモテないぞ?」

 「で、ですよね! アールカエフ様! カンイチさん! 俺も入れて!!!」

 「うむ。水汲み手伝えよ。イザーク君!」

 『む? イザークよ。風呂とはなんだ?』

 「そうですねぇ。湯に浸かって身を清める……でしょうか?」

 『ふ~~む。”洗浄”が使えれば要らんな。余計な手間だな』

 「ふん! 獣には解らんわ!」

 「カ、カンイチさん!」

 ……

 

 「いらっしゃい! お? 兄ちゃん、毎度!」

 「オヤジさん! 大き目の樽! もちろん代金も払うし、酒も買う! 譲ってくれ!」

 挨拶も早々、身を乗り出し、樽を乞うカンイチ。店主も何が何だか。呆気にとられる。

 「は? はぁ? 空の樽かい? 兄ちゃん?」

 乗り込むカンイチの服を引っ張るアールカエフ。中々の剛力だ。

 

 「カンイチ。必死過ぎ。オヤジ、出来るだけ大きな樽を分けてよ。もちろん、水漏れしない奴」

 「は? あ、ああ、アールカエフ様? は、はい! 只今準備します!」

 「よろしく~~。ほら、カンイチ、落ち着く。どぅ、どぅ!」

 「あ、ああ、すまんの、アール」

 「クス。ま、良いよ」


 店主に呼ばれ、店の裏に。

 「これが、大きくて丈夫な樽です。水漏れは一日、二日、水を張ってもらって確認を。乾燥してますんで」

 

 店主が用意した樽は開口75cm、底85cm、高さ1mほど。所謂450ℓ樽。一般的なドラム缶(約、60×90、200ℓ)と比べ、倍の容積がある。

 

 「なるほど! 水を吸うと木材が膨張して水漏れが止まると」

 「はい。漏れても滲む程度とは思いますが……」

 ”こんこん”

 樽のあちこちを叩いて、納得したようだ。

 「うんうん。上出来だ! 貰っていくよ。オヤジ!」

 「は、はい。どうぞ」

 「オヤジさん、この樽いくらかの?」

 「なぁに、また酒を買に来てくれればいいさ」

 「なら、俺が買っていこう。ビールの良い奴、小樽でくれ」

 「ビール? あるのかの? なら、ワシも!」

 「はい、毎度ぉ!」

 ビールは、ガハルトとカンイチが担ぎ、樽はアールが”収納”に。

 帰路に就くカンイチ。その足は軽い。中型とはいえ樽を担いでるのに

 ……


 ……

 

 ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば” ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば”

 ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば” ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば”

 ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば” ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば”

 井戸を漕ぎ、水を汲む音が中庭にこだまする。勤しむのは二人の青年だ

 ……

 「ふぅ~~風呂に入るのも大変ですね。カンイチさん」

 「ほれ! イザーク君! 風呂のためならぁ~♪ エンヤァ~コリャァ~♪」

 

 ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば” ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば”

 「はぁ? 何です? その歌」

 「ほれ! 手がお留守じゃぞ! もひとつおまけに、エンヤァ~コリャァ~♪」

 

 ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば”

 

 「は、はい、でも、カンイチさん! 毎回これは大変ですね……ふう」

 「良い筋トレになるじゃろ。はっはっはっはっは! 修行じゃ、修行! イザーク君!」

 

 ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば”

 ……。

  

 「元気だねぇ。カンイチ! 早く、”洗浄”覚えないとね!」

 ガハルトと一杯飲みながら見物してるアールカエフが声をかける。

 「うむ? なるほど。そうすれば毎回水を汲まなんでも良いという訳か……なるほどの!」

 ”がっこんがっこん” ”ざばざばざば”

  

 「うん? 何やってんだいカンイチ? こ、これは、アールカエフ様? 良くいらっしゃいました」

 裏庭の騒ぎを聞きつけ女将さんが出てきたようだ。

 「こんばんわ。お世話になるよ? 僕の分の夕食ってある?」

 「は、はい、大丈夫ですよ。準備いたします。で、この騒ぎは一体?」

 「はっはっは。カンイチがお風呂に入るんだって。で、この騒ぎって訳だ」

 「風呂? 銭湯近いですよ?」

 「どうにも、恐ろしく汚いそうだよ? で、僕が、風呂釜をこさえたって訳さ!」

 「それは、なんとも贅沢だねぇ」

 「ま、好きにやらせてあげてよ」

 「はい」

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