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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 チーム
137/520

げっこ!

 …… 


 ”げっこぉおおぉ!”

 

 「ぅわ! こ、このぉ!」

 飛び掛かってきた大カエルこと、キングフロックを剣の鞘ごと叩きつけ軌道を逸らす。叩かれたカエルは再び向き直るも、

 「はっはっは! 囮ご苦労! イザークよ! ふん!」

 ”ばきゃり”

 ”げろぉ!”

 ガハルトの振り下ろした剛剣が大カエルの頭を割る。

 「イザーク君! あまり沼に近づくなよぉ。ナマズに喰われるぞぉ!」

 ”すこん”

 こちらは毎度のごとく、鶴橋で仕留めていくカンイチ。カンイチの振り下ろす鶴橋は確実に大カエルを地に縫い付けていく。

 

 「ひぃ! マジですあぁ!」

 慌てて水際から距離を取るイザーク。ナマズは今のところ顔を出していない。

 「それにしても……カンイチ、なんだぁ、その、鶴嘴! 魔道具か?」

 「ええ、よくも易々と。俺も使って良いです?」

 

 先ほどから、”すこん” ”すこん!” と楽々と鶴嘴で、カエルを屠るカンイチ、その様子を見てガハルト達が声を上げる。

 カエルといえ、巨大。その頭、骨も厚く固い

 

 「ああ、鶴嘴というより、スキルじゃ。”農業”の、の。農機具の扱いに長けるようじゃ。ふん!」

 ”すこん”

 ”げっこ!”

 「へぇ! そんなスキルがなぁ! ふん!」

 ”ぼきょ!”

 ”げこ!”

 「あ、俺! 聞いたことありますよ! 『農機具扱い』。農業従事者のスキルですよね? 俺の爺ちゃんも畑耕すのものすごく速かったもんなぁ。おっと、このぉ!」

 ”ばっし!” ”ばっし!”

 ”げこ!” ”げげげこぉ!”

 イザークの技ではカエルに致命傷が与えられないため、ガハルトに集中しないように調整、カエルを散らす。

 「そんなに違うもんか? イザーク?」

 ”どぎゃ!”

 ”げっこ!”

 「ええ、俺じゃ、余計な力ばかりかかって、かえって遅いんですよ、この!」

 ”ばっし!” ”びしぃ!”

 ”げここげぇこぉ!”

 「そうじゃ、耕すにしたって余計な力は要らん。そのために作られた道具じゃ。それに気づくのに暫くかかるんじゃ。ほい!」

 ”すこん!”

 ”げっこ!”

 「なるほどな、が、それでカエルが狩れるってのも納得できんがなぁ! ふん!」

 ”げっこぉぉ!”

 「ガハルトの大剣と一緒じゃろ、ワシには使えんわ。ふぅ……。ここらのは粗方狩ったかの」

 「そうか……なるほど、そう考えると一緒か。技能スキルと熟練度という奴だな」

 「ふぅ……。さすがです。皆さん」

 タオルで汗をひと拭い。

 

 「いや、イザークの”調整”も良かったぞ! そうでなけりゃ、ここまで綺麗に狩れなかったわ!」

 辺りに散乱するカエル。悉く、眉間が割られている。カンイチの方は脳天に穴だ。

 「でも、結構狩っちゃいましたね……。あんなにいたのに。良いのかな?」

 「大丈夫じゃろ、奥の方にもわんさかいようし。ほれ、オタマ(ジャクシ)もウジャウジャおる」

 水が黒くわかりにくいが、浅い所に大量に蠢く生物が。大きいものは丸いところで1m以上ある。

 「うげぇ! 本当だ! で、でかぁ!」

 「よし、この後、昼摂ったら、沼の周辺を散策したいと思う。良いかの?」

 散乱しているカエルを”収納”に入れながら訊ねるカンイチ。

 「おうよ!」

 「はい!」

 ……

 

 魔猪の死闘の跡地、避難場の林の中で食事を摂る

 「カンイチさん。この投げ縄みたいのでトンボ採るんですか?」

 カンイチの作ったボーラ。用心のために広げてある。

 本来は人食いトンボの対ドラゴンフライ用だが、魔猪等の魔獣対策としても。

 

 「うん? ああ、そいつをトンボの身体に絡ませての。バラバラになっちまうがの」

 「なるほどな。面白いな」

 なんとなく、トンボとりから、魔猪との死闘へと話が進む。ちょっとした冒険譚だ。

 

 「凄いなぁ……カンイチさん……」

 ”しゅしゅしゅ……”

 犬達にブラッシングしながら食後のひと時。イザーク君は今日、クマからのようだ。

 「そうかのぉ。運が悪いのか、運が良いのか……。ま、倒すことが出来たんじゃ、良いのだろうな」

 「何が起こるかわからん。この近場ならいずれ多くの犠牲者も出ただろうさ」

 「まぁのぉ。が、フジが倒した猪……あんなものもいるんじゃなぁ」

 ”男爵”と二つ名のついた特大猪。5年前に、隣国の城壁に穴をあけたとか。

 『うん? 森の奥にはもっとデカいのがゴロゴロいるぞ。お爺』

 カンイチにモフモフされていた、フジが、つまらなそうに告白する

 「そうかの……」

 ……

 

 3人と、4頭で沼を回る。イザーク君の知識にある常設依頼の植物、染料になる虫などを採取していく。

 「ほぅ。この虫がの……」

 テントウムシに似た虫を採取。木の汁を吸ってるのか、捕まえるのがとても楽だ。まとめて麻袋に放る。

 「ええ、乾煎りにして粉末にすると奇麗な青の染料になるそうですよ。ここだけの話、ギルドに卸すよりも直接、服屋さんに持って行きます。買取価格が段違いですから」

 「はぁ? そうなのか? 随分とまぁあくどい商売してるんじゃなぁ、ギルドの連中は」

 

 ――やれやれじゃ

 

 「まぁな、ギルドはどうしても危険の度合いで買い取り額に変動する場合が多々あるな。その割にしっかり仲介料は取るからなぁ」

 「ええ。猪とか兎だって。もうちょい高かったら狩るんだけどなぁ。狩っても皆、肉屋に持って行きますよ。猪なんか結構いい金になりますし」

 「冒険者……のぉ」

 「そりゃ、あれだけの職員を養うんだ。イザークの好きな受付嬢だって何人いるんだ? ってな話だ。国の本店になんか貴族紛いのお偉いさんがわんさかいるぞ? それが各国にあって、更に本部があるんだ。総長なんざ、どこぞの王様気取りだぞ?」

 「……そんな連中の先兵かよ。はぁ……サッサと辞めたいの。こんな組織は」

 「うん。なんかなぁ……。俺も」 

 イザーク君もガハルトの話を聞いてうんざりの様だ。

 「おっと、未来ある若人たちのヤル気を折ってしまったか? はっはっはっはっは!」

 「まぁ、生きていくには都合が良いのも事実……俺なんか学もないし」

 「ま、そういうこった。それなりの力があれば、これほどいい仕事は無いわな。そこそこ稼げるし、大きな顔もできる」

 「そうじゃなぁ。まぁ、考えても仕方なし。じゃな」

 カンイチなんかこの世界の基本、身分証がない。

 「だな。よし。撤収するか? カンイチ?」

 「そうじゃな」

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