オーダーメイド。
……
干し肉屋、酒屋と寄り、最後に鍛冶屋に立ち寄る。
ガハルト達を紹介するためだ。冒険者稼業。何処よりも世話になるところだ。
「おう! ミスリール。親方はいるかのぉ」
「いらっしゃい! カンイチさん! いるよ! ぅうん? 今日は一人じゃないの?」
「ああ、仲間が出来たでの。紹介ついでに。冒険者だと何かと世話になるじゃろ?」
「だね! いらっしゃい! そうそう! 頼まれていた棒……箸だっけ? 食器の、できてるよ!」
「おう!」
騒ぎを聞きつけ店の奥から店主のダイインドウも顔を出す。
「おうおう、カンイチよく来たの。うん? 貴殿はガハルト殿か?」
「久しぶりだな! ダイの親方! まさかこの町にいたとは。何回か来てるが全然気が付かなんだわ!」
「うん? 知り合いかの? 親方? ガハルト?」
「ああ、王都で研ぎを何回かな。凄腕の鍛冶屋だ。王都に店を出すくらいな。貴族のクソガキの依頼を蹴ったのが事の始まりでなぁ……」
「ま、昔の話じゃの」
「俺もまだまだ若造だったからなぁ。当時は良くわからなかった。何時の間にやら店畳んでいなくなってたな」
「そうか苦労したのぉ」
「苦労って訳でもないがの。丁度よかったんじゃ。貴族の為のただのお飾りの剣を打つのに、もううんざりしておったからの。ろくに使えない物まで作らされる。そんなガラクタ、鉄に申し訳が立たんわい」
「カンイチの通いってことは、これから世話になる。またよろしく頼むぞ! 親方!」
「うん? 貴殿はこの町に拠点を移したのかの」
「ワシとチームをの。あと、イザーク君じゃ」
「よろしくお願いします」
「うむ。そうか。よろしく頼むの。そうじゃ、籠手出来とるぞい」
「おお! 早速見せてもらおうかのぉ」
……
「……なんかすごいのぉ」
カンイチが想像していたのは、剣道で使うような丸い籠手。
そう! ロケットパンチだ! 体育の剣道の授業で中年の方々はやったであろう! 夢のロケットパンチ! (おいおい……)そして漏れなく教師(講師)に叱られ、竹刀で叩かれる ……閑話休題。
しかし、目の前にあるのはカニの足のような、指の第二関節まで金属性の殻がついた物々しい物体。甲、手首、肘までを覆う。そこまでの間も魚の鱗のように金属片が規則正しく奇麗に重なっている。
「確かに、剣道の籠手じゃぁ、採取なんぞは出来んが……”じゃらり”」
「関節部はどうしても弱いが、鱗の部分でなら、剣の斬撃を受けてもびくともせんぞ。もちろん相手の技能次第じゃがな。が、切れずとも骨は折れるでの」
「思ったより軽いな。指も自由じゃ。が、いつ使うんじゃ?」
「ま、斬撃系の魔物相手……と言いたいが、主に人間相手になるじゃろう。盗賊やらにのぉ」
「じゃな。違和感も無し。このまま貰っていこう。ガハルト。剣頼まんでええのか?」
「お! そうだな! 親方! 早速だが一振り頼む!」
「おう! どんなもんがいいんじゃ?」
……
挨拶も終わり、ついでにガハルトも剣をオーダー。今下げてるのは間に合わせの数打ちの一本だ。本気のガハルトの剣術には到底ついていくことはできない。丁度、以前打ったものにいいのがあり手直し程度で済むと。明日にはできるそうだ。
「ふふふ。ここに来て親方の剣を手にできるとはな! ますますついて来てよかったわ!」
「うむ。確かに腕は良いの。ワシも打ってもらった短剣気に入っておるわい」
「オ、オーダー? カンイチさんも? ……流石、高ランクの冒険者ですね。は、ははは……」
「うん? イザーク君も作ってもらえばよかろうに? 金ならどんと入ってくるんじゃろ?」
「! そ、そうですよね! オーダーか。ふ、ふふふ……」
「イザークよ。オーダーも良いがそれなりの腕が無いと親方クラスの職人は作ってもくれんぞ。先も言ってただろうが。使えん剣は鉄に申し訳ないと」
「……そうですね」
がくりと肩を落とす見習い君。
「ま、今から鍛練じゃ! のぉ! イザーク君! ここらは危ない魔物も多いで。生きてりゃそれなりに強くなるじゃろさ!」
「……生きてればね。は、ははは……」
そう、カンイチがまさにそれだ。それなりの訓練、技術は修めたが、それをさらに磨き上げたのは異国の島の密林の中だ。
「そのための鍛錬だ! イザーク! 死にたくはあるまい! 先ずは明日のブッシュマスターだな! 生け捕りだから難易度はぐっと上がるぞぉ!」
「は、はい!」
……
午後は、フジ、クマたちと合流し東門をでる。
「ほれ! 人噛んじゃなんねぇぞ!」
首輪のロープを解き、犬達を放つ。
『噛まんわ!』
”ぅおふ!” ”わおふ!” ”ぅをふ!”
犬・狼。魔獣達に全否定されるカンイチ。形無しである。
「お、おう? 了解じゃ。で、フジは何するんじゃ?」
『散歩だ』
……
「カンイチさん……。どうするのこれ……」
「うん? 剥くんじゃ。イザーク君もの」
クマたちによってカンイチ達の下に次々と運ばれてくる丸々と肥えた野兎。
何時もの如く畑を縦横無尽に駆け回り丸々と肥えた兎を狩るクマ達。
「はぁ? 剥くんですか?」
「おう。イザーク! 野兎は罠で獲れるし、野営の時の良い飯になるぞ。これだけ肥えてると美味いぞぉ」
「そうじゃ、良い練習になるぞ。ほれ。それに夜の飯のおかずが増えるってもんじゃ」
「……はぁ?」
「……沢山持って行けば、受付嬢たちも喜ぶぞ。兎のローストは人気じゃからのぉ……。イザーク君の人気が出るかもわからんの」
さすが、99の爺様だ。イザーク君の青春の衝動の着火点をくすぐる単語を並べる。
「! はい! 剥きます!」
カンイチの発破で喜々と兎の皮を剝き始めるイザーク君。
「若造君じゃなぁ……」
「うむ。イザークよ……」
そんな彼を見てぼそり
 




