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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
魔獣編(仮)
123/520

アカリノの町より

 …… 

 

 ガハルトの借家に戻る道すがら、イザークの借金を武具屋に返す。これで綺麗な身体だ。

 それからクマたちを連れて町外に。

 草原を駆け回るクマたち。解放され気持ちよさそうだ。

 

 「おぅん? フジは行かんのか?」

 『我は結構歩いているからな』

 ”ぅわふ!”

 『……行ってくる』

 ハナの後ろについていくフジ……

 「ハナに呼ばれたか……。もう、完全に尻に敷かれとるのか? うちのフェンリル様は……」

 「そのようだな。フジ様……」

 「ハナ、やるなぁ!」

 感嘆の声を上げるイザーク君だった。

 ……

 

 「ところでフジよ。なぜ、クマたちは蛇を喰らってるんじゃ? 別に腹が減ってる訳でもあるまい?」

 不思議に思っていたことをフジに聞いてみる。これ以上の通訳、専門家もいまい。

 知恵も知識もあり、クマ達の言葉が分かるのだ。

 

 『うん? まぁ良かろう。この世界の物を喰らい、この世界の”力”を取り入れ、貯めてるといったところか』

 「良い事なのかの?」

 『うむ。良い事であろうな。力こそ全て! 力なき者は強者に蹂躙される。人の世なんぞより過酷ぞ? 段階的により強く”進化”し、この世界に適合していくであろう。お爺はその手伝いをな』

 「”進化”か……かの」

 『この世界で生きるための力を得る。そう言い変えても良い』

 「そうか、納得じゃ。ワシが出来ることがあれば言ってくれ!」

 『当分はこのままでよかろう? そして! ハナは益々我にふさわしいつがいとなろう!』

 (

 ――おい……


 跳ねまわり、体もよく動かせただろう。木皿に水を満たし休憩だ。

 その間にブラシを出してブラッシング。犬達とのふれあいタイムだ。

 イザークも自主的にカンイチの手際を見ながらブラシを入れる。今日はシロのようだ。

 「うんうん。奇麗だねぇ~~シロ。よしよ~~し」

 ”ぅをふ!”

 「おい。大丈夫か。イザークの奴。シロに抱きついて頬ずりしてるぞ?」

 「大丈夫じゃ。いいんじゃ! あれで!」

 犬好きのカンイチにしたら当然の行為。何らおかしいところはなし

 「そ、そうか? カンイチが言うのなら良いが……ん? ……」

 ガハルトがカンイチに目を向けるともふもふ。カンイチもクマに実践中だった

 「……」

 言葉を失うガハルト

 「ガハルトもやってみると良かろう? 良いものじゃぞ?」

 ”ぅおふ!”

 クマも賛同の吠えを上げる。

 「い、いや……」

 『うんむ? ガハルトよ、我を抱きしめたいと言うのであれば、相談に乗るぞ? ……ほれ。もそっと寄れ。もそっと』

 「い、いえ、フジ様、恐れ多い……」

 『何も遠慮することもなし。我と貴様の仲だろう。もそっと』

 「何やってんじゃか……」

 少々、呆れ顔のカンイチだった。

 

 その夜もフジのご要望通り、【ライザのレストラン】で夕食を摂ることに。香草焼きを偉く気に入ったようだ。イザーク君も酒量は控えめ。明日は移動が控えていると早々に切り上げた。

 その帰路、

 「ふぅ。一人で来たが……。本当に何が起こるかわからぬなぁ」

 そっと、空に浮かぶ月を見上げる。近くで噴火もなく、ましてや排気ガスもない。恐ろしく明るい夜空。

 『お爺。我は濡れるのは嫌だ。屋敷を所望する』

 「はいはい」

 視線を下げるその先、今は縮んで小さいが、一番の問題。フェンリルのフジだ。

 「ふぅ……。どうしたものかのぉ」

 どうにもならないが、ついつい口から溜息とともに漏れてしまうカンイチであった。

 ……

 

 出発の朝。

 「おい、ガハルト、町を出るって本当か?」

 「拠点を移すと聞いたが……」

 ガハルトの移動を知り集まってくる門衛たち。

 「ああ。サイクス、テス。まぁ、移動と言っても、お隣のフィヤマだがな。偶には寄らせてもらうわ」

 「寂しくなるなぁ」

 「ああ、ベルたちにもよろしく言っておいてくれ。またな!」

 「ああ! 気を付けてな!」

 「また会おう!」

 ……

 

 「アカリノ……まさか拠点を移動するとは思わなかったなぁ」

 感慨深げに振り返り、町を眺めるイザーク

 「うん? イザーク君はこの近くの出かの?」

 「ええ。この町に出てきて……2年かぁ……」

 ふと仲間だった者の顔が浮かぶ

 「ふ~~ん。ほれ。元のお仲間が見送りに来てるぞイザーク君」

 門の影に立っているのは元のイザークの仲間たち

 「え!? い、行ってきます!」

 ……

 「ロブ! ダイル! 来てくれたんだ……」

 「ふん……。今日はこの門から出るそれだけだ」

 と、ぶっきらぼうに答えるロブ。

 「おいおい。ロブ。聞いたよイザーク。ガハルトさんとチーム組むって。デマだと思ったけど、本当だったんだな」

 「ああ……頼み込んでな。最後、グダグダだったけど……2年間。ありがとな」

 「こっちこそだよ。なぁ」

 「ふん。フィヤマで俺たちの活躍を聞いて歯軋りすると良いさ!」

 「その前に人にはもう絡むなよ」

 「ああ」

 「わかってる」

 じっと見つめ合う三人

 「死ぬなよ」

 「お前こそな!」

 「じゃ、また会おう! ”戦友”!」

 「ああ! いってこい!」

 「ああ! ”戦友”! ありがとうな!」

 ……

 

 「うんうん。良いものじゃなぁ。青春じゃぁ、青春。”ずびぃ”」

 少し離れたところから眺めていたカンイチ爺さん。若人の青春劇を見て思わずほろり。

 「そうか? 俺には良くわからんが……」

 若返ったが、涙腺は相変わらず緩々のカンイチ爺さんであった。


 「さて。別れも済んだようだし、必要な物も買った。では! 行くかの!」

 まだ少々目が赤いイザーク君。そしてもらい泣きのカンイチ爺さん

 そのカンイチ爺さんの号令で出発となる。

 

 「ああ! さらば! アカリノ! またな!」

 門に、ガハルトの挨拶が響き渡る。気の知れた門衛たちも敬礼で応える。

 そしてアカリノの町を後にする

 

 ……

 

 「イザーク君はフィヤマは初めてかの?」

 「いえ一回、護衛の研修でいった事がありますよ。お金もないし、チラと見た程度ですが」

 「なるほどの。ガハルトは?」

 「うん? 俺か? ちょこちょこ行ってるぞ? 人族と違って俺たち獣人は足が早いし、体力もある。隣町位なんてことはないさ。結構急ぎの荷物やら手紙があってな。良い稼ぎになるんだわ」

 「ふ~~ん。まぁ、なんじゃ。改めてよろしく頼むぞ!」

 「応! カンイチ!」

 「はい! こちらこそ!」

 来た時は一人と二頭。が、帰るときには3人と4頭の大所帯に。

 目指すはフィヤマ! カンイチ・チームの新しい生活が始まる

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