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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
魔獣編(仮)
121/520

アミアン商会

 …… 


 大通りに面した貴族街にふさわしい、大きな商家。下の街のように通路に物がはみ出ることもなく整然と並ぶ。が、多くのものが木箱に収まってる状態で、初見のカンイチには何を売ってるかすらわからない。

 

 「ガハルトよ。ここは何屋だ? 何を売ってるのじゃ?」

 「うん? ああ、木箱ばかりだものな。普段は装飾品と家具、宝石だかも買えるぞ。女将さんの趣味で茶、まぁ、”人”以外、何でも揃うな」

 「”人”以外……のぉ」

 

 所謂、出入りの商会というものなのだが。貴族家から呼び出され、主人等の欲しいものを予算の範囲で揃える御用聞きだ。

 店主であろうか、壮年の執事のような人物に声を掛けるガハルト。

 

 「ガハルトだ。少々、店主殿に相談があってな。繋いでくれ」

 「はい。ガハルト様、少々お待ちください」

 店番のようだ。

 

 暫くすると、まだ50には届かぬだろう男が現れる。こちらが商店主のようだ。歳の割には下腹も出ておらず質のいい服を着こなし、装飾品は少なめ。嫌味のないすっきりとした出で立ちだ。

 そんな彼が満面の笑みでガハルトを迎える。

 ガハルトの来訪。この商人にとっても大いに期待の出来るものなのだろう。

 

 「お久しぶりですな。ガハルト様。ようこそお出で下さいました」

 「おう! アミアン。今日も世話になろうと思ってな」

 「それはそれは、期待できますね。で、それでそちらのお方は?」

 もちろん人に対して”鑑定”は使われない。が、値踏みするようにつま先から頭のてっぺんまで。その辺りは商人の性のようなものか。

 「ああ、俺のチームだ。”銀”のカンイチ、”鉄”のイザークという」

 「よろしくたのむ。アミアン殿」

 「よろしくお願いします。イザークです」

 ちなみにフジは、中庭を借りて日向ぼっこ中だ。

 「はい、カンイチ様と、イザーク様ですね」

 「それで、今日来たのは…」

 

 その場で腰のマジックポーチから一本の魔猪の牙を無造作に出すガハルト。フジが食ったものの10本中の一本だ。

 「お! おおぉ! み、見事な……昨今、見ない逸品。いや、これ程傷の無い状態の良いものはここ十年は見ておりません! ガハルト様、対でお持ちでしょう? これを私に預けると?」

 

 牙を前に興奮を隠せないアミアン。先ほどの落ちついた紳士は何処に?

 懐からルーペを出し、牙の隅々を査定し始める。

 

 ――うん? ルーペがあるなら望遠鏡もあるじゃろな

 ふと、ゴブリン観察の時を思い出すカンイチ。

 

 「まぁ、そんな感じだ。てか、聞いてるかアミアン? 落ち着けって。フィヤマからも出ただろ?」

 「はい。ふぅ。よくご存じで。噂ですが、毛皮と牙のセットで出されるとか。次の王都のオークションの目玉になるでしょうね」

 「じゃ、その次のオークションにした方がいいか?」

 「いえいえ! 常に品薄、求められておりますし! 皮はお持ちでは……」

 「皮はない。が、同じくらいの5頭分の牙はある」

 「ご、5頭分も……。す、素晴らしい。彫り物の素材として引手数多ですよ。ギルドから出品される物は革とセットですので室内の装飾品。加工用には回らないかと」

 「じゃぁ、一旦しまうぞ。で? どうする?」

 牙をマジックポーチに仕舞いながら尋ねるガハルト。

 聞くまでもないだろう。アミアンの表情を見れば。

 「出来ましたら、全量、私めに任せて頂きたいところですが。私なら、2~3回に分けて出したいと思います。もちろん品質にもよりますが、うちでも一本、相場で購入したく思います」

 「ああ、任せる。支払いは……フィヤマに支店あったな」

 「あちらが本店ですよ。今では父も引退。兄が商っております」

 「問題なければ、そっちで受け取りたいが……俺達、フィヤマに行くことにしたんだ。ま、近いから受け取りに来てもいいが……」

 「この町を離れるのですか? それは残念です。支払いはどちらでも。ガハルト様の口座にも振り込みは可能でございますよ。是非に取引は私の方で」

 「流石だな、アミアン。しっかりしてら」

 「商売に親兄弟は関係ありませんからね」

 「じゃぁ、何処に出す?」

 「ありがとうございます。こちらへ。席は外した方が?」

 「そうだな……頼む」


 屋敷の奥。広い部屋に通される。商談スペースなのだろうか。大きなテーブル、品の良い調度品が置かれている。壁際には見本品だろう木箱が積み上がっている。

 

 「じゃ、カンイチ頼む」

 「その前に……の」

 

 部屋の中央で座禅を組むカンイチ。覗かれていないか、例の魔法陣やらの気配が無いか、精神集中し確認を行う。我流だが攫われたときに身に着けた業だ。

 

 「うむ。異常はないようだな。ガハルトが信用しているだけはある」

 「ほう……」

 安全を確認。身体の力を抜く。そう言うと”収納”から残りの9本を部屋に出す。

 大きな猪の牙が10本。

 「肉や皮ならガハルトの狩った魔猪の方なら出してもいいぞ?」

 「う~~ん。それなぁ。カンイチの方はどうすんだ?」

 「うちか? どうも闇だか裏だかのギルド? やらで捌くと。ほれ、ワシの場合、”収納”は内緒じゃろ。ギルドより秘密が担保されてるそうじゃ。それに有名になりたいわけじゃ無し。その方が何かと都合がよくてのぉ」

 「なるほどなぁ。ま、ここで出せば、どのみちカンイチの”収納”がバレるだろう。俺の方もそっちで構わん。変に噂になって間違えられてイザークが攫われるのも面倒だしな」

 「え? お、俺? さ、攫われる?」

 「そりゃぁそうだろうが? 相手がガキだと知ればなおさらだ。呪物を付けて奴隷にして扱き使うんだ。ほれ、”収納”の中まで検める事はできんだろう? 貴族やら、商人が欲しがるんだ」 

 「うむ。ワシもそれで一回攫われたわい。魔法で動けなくされての……」

 同時にさらわれていた幼子の顔を思い出し、ふつふつと怒りがこみあげて来るカンイチ。

 「カ、カンイチさん?」

 「うん? ああ、何でも無いわい」

 「今更な……。で、どうしたんだ!? そいつら?」

 ワクワクした目で聞いてくるガハルト。

 「斬った……。まぁ、追々の。で、良いのかガハルト。名を売る好機じゃぞ?」

 「そんな事より話聞かせろ。カンイチ!」

 「え、ええ。ガハルトさんですし……。名の方も、もう十分かも?」

 「先に商談じゃ。フジも飽きるでの。うん? それじゃぁ、イザーク君が一人で狩ったことにするかのぉ。くくく」

 「止めてください! まったく!」

 プリプリ怒るイザーク君。そんなことをされたら、確かに有名になるが、すぐに剝がれるメッキだ。

 

 牙も出し終えたし、何時までも待たせておくのもと店主を招き入れる。

 「お、おお! 素晴らしい。どの牙も特級品質。早速申請をせねば!」

 興奮しながら、牙の一本一本を確認していくアミアン。

 「おいおい……アミアンよ」

 10本の魔猪の牙を前にして目を血走らせる店主。

 「は……。あ、す、すいません。ただ、競売の申請と、輸送の手続きを。忙しくなるぞぉ!」

 「じゃぁ、預けるから頼むな。ガッツリ稼いでくれ」

 「少々お待ちを。書類を作りますので」

 「うん?」

 「預かり証と、委託書類等ですよ。何もなしの信用預かりにしては大きすぎるでしょう?」

 「なるほど」

 「じゃな。そっちは、権利者のガハルト。イザーク君も見てやってくれ」

 「はい。で、カンイチさんは何処に?」

 「ワシか? ワシはお茶の購入じゃ。アミアン殿。お茶を商ってると聞いた。人を付けてくれんか?」

 「はい。承りました。一級品も多く取り扱っておりますよ」

 ……

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