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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
魔獣編(仮)
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貸しだ。

 …… 


 「ふぅぅーーーー」

 

 魔猪にとどめを刺した後、剣を投げ出しどさりと腰を下ろすガハルト。

 目の前にはその仕留めた大猪。

 

 「まったく。困ったものじゃ。当初の作戦と違うがの? ううん?」

 そのガハルトの隣に腰を下ろすのはカンイチ。

 「ふ、ふふふ……。すまん。血が騒いでな。ほれ、今も手が震える。ふぅ……」

 「……これっきりじゃぞ?」

 「うん? ああ。そうだな。すまん」

 と、言葉に出したものの。あてにはしていない。こういった馬鹿は治らんと、カンイチにも分かっている。そこが好感を持てる点でもある。

 

 「ガハルトさん! やりましたね!」

 「まぁ、カンイチの助力があったがなぁ。しかし、カンイチよ。魔法使いだったのか?」

 「ま、いろいろ……じゃな」

 三人で戦闘の余韻に浸っていると、木をかきわけ、接近する音が。 

 「ぬぅ!」


 ”ぶきぎぎぎぎぎいいぃぃぃぃぃーーーーーーーー!”

 

 「! ぅぬ!?」

 「ちっ! 呼ばれたか!」

 

 猪も群れで生活するものもいる。そして目前に迫るのは小山のような片牙の巨大な猪!

 

 「は、ははは……こりゃぁ」

 「デカい……な」

 「ひ、ひっ!」

 さしものカンイチも打つ手なしか?

 

 目の前の巨猪、体高も5mはある。10tトラックより大きい。逆立つ鬣、強大な片牙。怒りに燃える真紅の瞳。群れの主。恐らく目の前の巨猪の子を先ほどガハルトらが屠ったのだ。

 完全に敵認定。突撃の一発でこちらは全員、粉微塵、即死だろう。

 

 「ダメ……じゃな。よけきれんな」

 「ああ。すまん。油断したつもりはないのだがな」

 「……あ、あわあわ……」

 

 土を蹴りこちらを窺う、片牙の巨獣。狙いを付けて。足回りも薄っすらと光を放つ。力を貯めているのであろう。目の前の憎くき”仇”を粉微塵に粉砕するために!

 

 誰もが命を諦めた時。

 

 『お爺、貸しだぞ? 〖陽爪月牙〗! うぉおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーん!』

 

 白銀の巨大な狼が目前に現れた。

 ”びくり”と、体を揺する巨大な魔猪。巨大な狼、フェンリルを確認すると一瞬だが怯む。そこに飛び込むフジ、交差すると同時に四方八方に紫電が迸る

 

 ”どざざざざ……”

 巨大な猪の首が落ちる

 ”どずん” ”どずずずぅぅぅん”

 膝が崩れ腹を突く巨大猪。その首の切断面からばしゃばしゃと大量の血液が流れ出る。

 

 「な……」

 誰もが、今の一瞬の出来事を理解できない。一撃

 

 『ふん。所詮、猪。我の敵ではないわ! ほれ、お爺。いつまでも呆けていないで、肉を焼け。今ので腹が減ったわ』

 白銀のフェンリルの姿からシュルシュルと小さい、灰色狼の姿に戻るフジ。

 フジの言葉で我に返るカンイチ一行。倒れた片牙の巨獣と、フジの顔を交互に見る。

 

 「お、おう……。助けてくれてありがとう。フジよ。命拾いしたわい……」

 『なぁに、貸しだ。それに群のボスは己の力を示さねばな! そう! この我の力を! どうだ! 我に惚れただろう! ハナよ!』

 「おい……」

 どうやら主目的は、ハナに力を示す事だったらしい……

 ”ぅわふ!”

 「ん……。結構ミーハー(死語)じゃのぉ……ハナよ」

 ハナに格好いい所が見せられてご満悦のフジであった。

 ……

 

 「しかし……。凄いのぉ。これは魔法? かの、フジ?」

 落ち着きを取り戻した一行。カンイチとガハルトは猪を仕舞う仕事も残っているので片牙巨大猪の傍らに移動。傷口の様子を見る。バッサリ。それは見事な切り口だ。血管もそのまま丸い断面を晒す。

 『知らん。それよりさっさと肉を焼け。力を使ったから腹が減った』

 「今、イザーク君が火を起こしているじゃろ。肉は手持ちので良いか。熟成も済んでおる」

 『うむ。美味い方だな!』

 「では、こいつは仕舞うぞ。解体は……食うのは後日の。本当に助かったわい。フジ」

 片牙の巨獣が消える。カンイチが”収納”に入れたのだ。もちろん、胴体と頭部一式。

 『うむ!』

 「ありがとうございます。フジ様。俺の我がままで呼ばれちまって……」

 「ありがとうございます! た、助かりました! フジ様!」

 『うむ。もう良い。ほれ、イザーク。サッサと火を起こせ!』

 「はい!」

 皆に感謝の言葉を掛けられ満更でもないフジ。多少照れているようにも見える


 「で、ガハルトさん。一応、当初の目的を達したが……。この後、どうするのだ?」

 「カンイチ……今更だが、俺の事、呼び捨てでいいぞ。同じ戦場を生き抜いたんだ」

 「では、そうさせてもらおう。で?」

 「そうだなぁ。とりあえず降りるか。剣も二本ともおじゃんだ。一本は折れ、予備はこの通り、歪んじまった。武器なしではどうにもなるまい?」

 歪んだ剣を示す。ガハルトの言う通り半ばから反るように曲がっている。

 「どうせ突きにしか使うまいよ?」

 「はっはっは! 言うねぇ。ま、事実、魔猪を前にしてはな。毛が切れないなんてなぁ。もはや鈍器だったわ。本当に良い経験が出来たわ!」

 「じゃぁ、降りるということで決まりじゃな」

 「応!」

 ……

 「さて……と。フジよ。我らは山を降りようと思うとるが。……本当について来るのかの?」

 山を下りることが決定。同時に大きな問題が浮上する。そう、フェンリルのフジの事だ。返事は判っているが、一応の意思確認を行う。

 

 『当然であろう? つがいが行くのだぞ? それに、もう一つ”人間の街”に行く楽しみもできた』

 「うん? 人を食うとか言ってくれるなよ? フジよ?」

 揶揄うように声を掛けるカンイチ。

 『食うか! 人なんぞ! そんな臭いの! 肉も付いておらんし骨ばって……見るからに不味そうだわ!』

 「臭い? かの?」

 『ああ。プンプン臭うな! 人など食わん。そんな事より、”料理した飯”が我を呼んでおる! 楽しみだわ!』

 どうやら、生肉を齧る生活から脱却なされたらしい。

 「面倒な……」

 『うぅうん? さっき助けてやっただろうに。もう忘れたか? お爺ぃ……』

 フジの言う通り。助力無ければ、今頃全員あの世行きだ。山を降りるも何もかも生きていられたからこそだ。

 「うぐぅ! 仕方なしか。その小さい姿で頼むぞ」

 『わかっておる! お爺! 安心しろ! 我に任せておけば良し!』

 「ふぅ……」

 約束だから仕方なし。大恩もある。わかっているが。無意識にため息が出てしまうカンイチだった。

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