影響
……ところかわって天界
『で? ***どうだった? 干渉の調査結果は?』
と小声で聞く*****。本当は聞きたくも無いところだが――。その表情は暗い。
『そんなこと言ってねぇで手伝ってくれよぉ。*****さ・ん♡ 俺の上司様だろ? ほら!』
『チッ――。で?』
嫌々先を促す。*****。そう、直属の上司である以上仕方がない……
『運良く、ほとんど海で被害はないんだけど。――そこに浮かぶ小さい島で高等生物の”死人”が出ちまった。どうしよ?』
【地球】で、地球人の”死”が発生したと告白する***。ほとほと困ったという表情だ。先の勢いも今は何処に。【地球】は他所の”神”――しかも上位神*********の管理する星だ。
『うん? 死人? 【地球人】なら、大抵の干渉には耐えると思うが……。時間軸の圧縮干渉か? それに伴う物理的断絶か?』
いずれも地球では、解析不可能の事件、事故。範囲が広ければ、天変地異といわれる事例となる。
『いや、俺の星にいた、デュアル・ベアっていう”熊タイプ”の魔物が、地球に転移しちゃってさぁ。それで大暴れ! いやぁ~熊、強いのなんの! そんで、地球人が何人か……。海に放たれた海獣――でかい奴なんだけど、そいつらはなんとか回収できたわ。細かいのは……まぁ、放っておいても、魔素の薄い【地球】じゃぁ生きて行けまいさ』
『おいおい……そういや、***の星はそういった珍妙な生物集めてたな……』
『珍妙じゃねぇわ! 実験惑星、【淘汰の坩堝】だ。ふふん! どんな環境でも生存できる知的生物の……』
『アホ臭い。【怪獣天国】、【蟲毒の壺】だろ? お前の処は。これだけ干渉してて自然淘汰も無かろうが。でも、今回の”回避行動”でかなりの被害も出たろう?』
と、御託は沢山と言葉を斬る上司
『……まぁねぇ~。大陸割れたり。大きな国が消えたり? 被害甚大。地軸のズレは何とか補正できたが……。極性変わると思ったわ。ふぅ。おかげで惑星レベルも激落ちよ。でもまぁ、消滅は避けられたしぃ。はぁ。また輝星(*、神の階級・クラス)減らされちまうかもぉ』
呆れ顔の*****が言う。***の暴走は今に始まったことではない。そのおかげで、前は同格の*****だったのだ。
『真面目にやらないからだ。しかし参ったな……”死人”かぁ。この事案。*********様に相談するしかなかろうなぁ。管理者の意向に引っかからねばいいけどなぁ』
『でも、あすこって極力干渉してこなかったのだろう?』
『そうだね。【地球】……別名【命の瞬き】そう言ってね。繁栄するも自由。滅びるのも自由。ってね』
『なら……大丈夫か? 自由だし?』
あっけらかんとこたえる***
『「住む生物」たちのだ! ま、高位のお方のお考えなんぞ、俺ら下々にゃわからん』
『だなぁ。報告付き合ってくださいよ。*****さん』
『こんな時だけ……。調子がいいな***よ。まぁ、仕方なし……か。一応、直属の上司だしな』
嫌々だが、同意の意を告げる*****。
『よろしく~』
『おい! 反省しろよ……』
……
《……ほぅ。私すら干渉してこなかった星に、***、お前の星の生物、地球外の”異世界の魔物”を解き放った……と?》
表情はそのまま――が、言うに言われぬ”恐怖”が場を支配する。高位神の威圧だ
『も、申し訳ありません! *********様ぁ! で、ですが、すぐに回収しましたしぃ? こういった場合のガイドラインと申しますか……それに沿って……』
《高等生物の”命”が消えているが。地上で20。海洋で1289……》
『たったそれだけですし。上手く回避出来――』
”ぴしり!”
《たった? たった……だと。貴様……》
『ひぃ! お、お許しください!』
場が凍る。高位神である*********から放たれる威圧。その圧が、二人を押しつぶす。
《ふん! 噂通りの無能の役立たずだったか。常日頃、言っているであろう? そこに住まう”生命”についてよく考えよと。理解が及ばぬようだな。その頭は。お前は必然の事のように語るが、そもそもがお前の不手際であろうが。*からやり直すといい》
『そ、そればかりは! お、お許しください!』
『わ、私からも……私の管理不足……』
二人して、跪いて許しを乞う2柱の神。
《*****よ。自覚のあるのならお前も降格、***にしてやろう》
『『…』 お、お許しを……』
桶で浴びせられた水のように、大量の汗を垂らし、跪き許しを請う二人。このままでは降格決定すれば、多くの権限も失う。特に*などになったら、星の管理者権限すらも。
《まぁ、許してやれば? *********。その子らもまだまだ未熟。導いてあげなよ》
《ええ。許すのも寛容》
いつの間にかに、観ていたであろう、2柱の神が。話し振りから見て同格の高位神だろう。
《……ふぅ…まぁ良い。*********達に従おう。しかし、『人間』に被害が出たのは不味い。いまの【地球】は文化レベルⅥ、写真のみならず、鮮明な動画も残っておろう。レベルⅣの時は適当に情報を流せば済んだのだが……。時間逆行、記憶操作……ふむ、いずれも多くの労力と手間がかかるな》
《魔物は回収したのだろう? なら、証拠ないじゃん。今の【地球】って、デジタル期初期、仮想現実やらディープフェイクも大分進んでるんだろう? モノが無けりゃ、どうにでもなるって。海洋のほうはイルカ,クジラだろう? ”人類”の被害は”日本”だったっけ? なら、より安心だ。あすこは御国柄、すぐに忘れるさ》
……
《そうそう。証拠の代表みたいな”映像”も、技術の進化で今はその価値を下げてる。チラと、適当に噂流せば? 頭のおかしい映像作家が造った映像とか? それで済むと思うよ》
……
《ふむ。なるほど。文明の隙間だな。そうすることにしよう。最悪、周辺の者の記憶を消せばよいか》
……
『ほっ』
《気を抜くな***》
『はいぃ!』
……
『ふぅ。何とか首は繋がったか……』
顔面蒼白の*****。
『ご苦労様です! *****様!』
お調子者の***が応える。
『***……調子のいい奴め。反省しろよ。で、詳細は? 映像等あればいいが……」
『その辺は*********様の管轄でしょう? でも、熊が一頭、【地球人】にやられていたなぁ』
『うん? あの星の文化レベルなら問題ないだろう? 熊の一頭や二頭』
『そうだけど……”人種”自体は弱いぞ。【地球人】は。確か、”日本”だっけか? あの島。碌な武器が無いはずだけど? その割に死人も少ないし。はて? 軍隊でも動いたか? そしたら、大ごとだな……。またお小言を頂戴する目に……』
『おいおい。勘弁してくれよ』
『た、大変です。***様! ”未確認の侵入生物”が!』
壁に生えたようなコンソールにいた青年が叫ぶ!
『なに! 何処だ! **! ゲートか!』
*****が応じる。
『は、はい! *****様! ***様の管轄のDー4649768ゲートに!』
『……うん? そのゲートは先程、熊を”緊急回収”したゲートだな。熊なら死んでるが?』
『……おい。また何か……。嫌な予感がするな……行きたくないが、とりあえず行ってみるか』
その*****の予感が現実のものとなる。 <つづく>




