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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ アカリノ編
105/520

狩に行かないか?

 …… 


 腹も落ち着き、酒も一通り回り、酒精の力も相まって口数も増える。

 

 「で、カンイチ。この町には何しに? 依頼って事ではあるまい?」

 「うん? フィヤマの近郊の町くらい知っておこうと思っての。そうそう、ついでにゴブリンとやらも拝んでおこうかとの」

 「ああ。ゴブリン……な。サッサと方針決めないといけねぇんだがな」

 こちらも、リストやハンスと同じように渋い表情のガハルト。

 「ガハルトさん、ゴブリンですか?」

 「うん? イザークたちにはまだ話はないか? 領境付近にゴブリンの集落ができたようなんだ。最近、斥候の指名依頼多いだろ?」

 「ああ! それでか……。”氾濫”に繋がりそうですか?」

 「ああ、そいつは俺も知りてぇな」

 と身を乗り出すケイン。

 「うん? 現役復帰するのかケイン。お前となら一緒に武器を取ろう」

 「復帰なんかするか! 今の長、あのレンガーだろ? 名前の通りの融通の利かない馬鹿堅物のアホだ。御免だね!」

 「ええ。自警団になら協力するけど。ギルドと領主は嫌ね~~」

 「ま、”氾濫”云々は分からん。何かセコセコやってるようだが、俺もあいつ嫌いだしな。指名出てもトンズラだ。ま、レンガーの事だ。俺に頼ろうとはせんだろう。余程ひっ迫するまではな」

 「そんときゃ、すでにほかの町か」

 「ま、そんなところだ。お前になら雇われても良いぞ。ケイン」

 「その時になったらなぁ。規模の見極めをせにゃならんだろ?」

 「そうそう。フィヤマと違って、この町には”英雄”様はいないしね」

 気になる事を聞いてみる。

 「フィヤマはともかく、ここの城壁があれば大丈夫じゃろ?」

 「城壁があってもなぁ。規模にもよるが、兵が全然足らん。最近、溢れても小規模のモノばかり。以前は駐屯軍が居たそうだが、今は居ない」

 「なるほどのぉ。何処も変わらんのぉ」

 益々ここらの領主に疑問を抱くカンイチ。国の対処についてもだ。起きてしまえば多くの命が失われ、復旧にだって莫大な金がかかるのだろうと。

 

 ――まぁ、こんなことをワシが考えても仕方のない。今は美味い酒を楽しもう。

 ……

 

 ライザの店でゆっくりと昼食を摂り、あまり遅くまで居座ると夜の仕込みの邪魔になろうと店を出て来た。三頭の従魔に手綱を付けて。その手綱を握る姿、中々に壮観である。

 「ふぅ、食った、食った」

 大量の料理を腹に納めたガハルト。腹をさすりさすり、満足そうだ。

 「すまんの、馳走になった」

 カンイチも、昼にも拘らず美味い酒が飲めて大満足。

 「ご馳走さまです。ガハルトさん」

 イザークも滅多にこれないレストランで食事ができこれまた大満足だ。

 

 「いや、構わんさ。美味い酒だった。で、この後、カンイチはどうすんだ?」

 「ま、このままボチボチ、フィヤマさ帰ろうかと思ってる」

 「そうか……。その割には随分と軽装だな」

 「うん? ああ、”収納”あるからの。内緒じゃぞ」

 

 短い付き合いだが、ガハルトならば良いだろうと。変に隠し事をして、折角の付き合いをおじゃんにしたくない。そう思わせる漢っぷりだ。

 

 「ほう。なるほどな。その腕、そして”収納”か。まさに、期待の新星だな」

 「しゅ、”収納”の恩恵持ち……」

 思考が止まるイザーク。が、ちゃんと足は歩を進める。

 ”収納”のスキルは誰しもが羨む恩恵スキルだ。勿論、己自身を守る力が要るが。

 

 「おっと、イザークさんもおったな。内緒で頼むわい」

 いるのは知っていた。もちろんこの男も信用できると。

 「お、おう……羨ましいよ、カンイチ」

 「ふぅむ。よし! 折角だ、山に行こうぜ! 山に! なぁ! カンイチ! 一緒に狩に! クマたちもいるし! 魔猪狩ろうぜ! 魔猪を! 何でも最近フィヤマで……ん! お前か。カンイチ」

 「あ、ああ! 確か新人が……って? ま、まさか……」

 「うむ。運がよかったのぉ」

 「ならどうだ?」

 期待の眼差しでカンイチの瞳を覗き込むガハルト。

 腰に刺さっているナイフの柄をギュウと握る。

 

 「ふむ。面白そうじゃな。その間、冒険者の基本イロハをワシに教えてもらえると助かる」

 「ああ、任せろ! てか、カンイチ。基本? お前に必要か? じゃぁ、明日、朝からでいいか? 朝一で2~3日分の食い物買って……後は山で獲ればいいか」

 

 ――そんな簡単な……。サバイバルじゃな。ま、上位冒険者であろう彼に従うか

 

 「構わんが。あ! 今から宿、空いてるだろうか。行ってみるか」

 

 さらに一頭増えてしまった。益々、宿泊できる施設に制限がかかる。

 本来であれば、この町、アカリノの冒険者ギルドなら、安く泊まれる施設があるのだが。アレだけの騒ぎになっては。もっともここにいる者皆、そういった施設の存在は知らない。

 フィヤマの町より後からできた後発故の施設と言っていい。より多くの冒険者を呼び込むための。

 

 「うん? なら、俺の所にこい。小さいが一軒家を借りている。庭もある」

 「そうか。なら世話になろう」

 「よし! じゃぁ帰って一杯だな!」

 「その前に、テントやら寝袋なんか売ってるところに案内してくれ」

 野営ともなれば必要だと思い立つ。フィヤマに帰るのなら徹夜で走ればいいと思っていたカンイチ。

 「わかった。うん? ここまでどうしたんだ」

 「走って来た。一日で」

 「な……。化け物め。じゃ、行くか」

 ガハルトの眉がピクリと上がる。馬だって一日で駆けるのは不可能な距離だ。

 「い、一日で? あ、あのぉ、お、俺も。荷物持ちでも何でもします! 連れて行ってください!」

 「う~~ん。自己責任じゃ。死んでも知らんぞ。それに”収納”あるから荷物持ちは要らん」

 「あ……」

 がっくりと肩を落とすイザーク

 「ま、良いだろうさ。カンイチ。この稼業を選んだんだ。覚悟はできてるだろうさ」

 「いや、そうは言うがの。並の相手ではないぞ。たかが猪と思えば即、あの世行じゃ」

 「……」

 黙り込むイザーク。

 「うん? 怖気づいたか、イザークよ? 相手が相手だ。それも良し!」

 「い、いえ! 連れて行ってください! ガハルトさん!」

 「ま、良いじゃろ」

 「おう。しっかりついて来いよ」

 ……

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