天界
あ…神様の名前が*表記なのは、ランクを現すことがメインで…。そもそも神言語(笑)の集合体で聞き取れない(設定な)ので。決して、考えるのが面倒…というわけではない…。は、ははは…
ここはどこだろうか……
白く薄く光を放つ床、壁、天井――
そして宙に数多くの、色とりどりの球体が浮かぶ部屋。
はっきり見える球体。薄い球体……これは一体? ある球体は、はじけ消え。ある場所では閃光と共に新たな球体が現れる……
その周りには大きなタブレット? を持った人々? といっても、人間のような姿の者、腕が6本あり、どこかの寺院の神像のような姿の者、大きな二本足で歩くトカゲのようなモノ、定型の容を持たないモノ……そのモノ達はいずれも白い同じデザインの服を着、宙に浮かぶ球体を見上げる。
『おい。***お前の管理してる”星”。もっと安定させとけよ。他所の星の世界と干渉してるぞ! おいおい! 早く動かせ! 軌道が交差するぞ!』
『しかし、座標軸、軌道軸にアラートが出ない? なぜだ? ?! ***、貴様! 何かしたか! *****よ! どうなってる?』
『はぁ? 何で私が?』
『***の直属の上司だろうが?』
大きな画面を見ていた”モノ達”が声を上げる。軌道線の交差。この場合は、物質的にではなく、霊的、アストラルな意味を示す。
地球に居ても、惑星が衝突――そう言った事例にはならない。が、最悪、地軸がずれたり、自転速度が変わったり、甚大な被害をもたらす事例がある。
『はぁ? そんなポンポン、”星”の軌道を動かせる訳ねぇだろ? *****。何百年単位で計算してんだぞ? 何処よ? 俺様の星の軌道と次元軸で交差する不届きな星はぁ! 我が星が吹き飛ばしてくれる!』
***と呼ばれた、痩せた青年が吠える!
『呼び捨てにすんな! 今は俺のが位が高いぞ! ***! どうにかしろ! それに、お前! なんか細工したな! アラートが寸前まで出ていない!』
*****と呼ばれた、少々不摂生? ぽっちゃり気味の青年が応える。
『知らん! 知らん! だぁ~かぁ~ら! *****! 相手は誰だ!』
再び吠える。
『……まぁいい。相手は……【地球】だぞ』
*****が厳かに宣言する。
『ああ。LV10000越えの惑星だぞ。【地球】は。***よ。交差すりゃ、お前さんの、そのちっぽけな星なんか跡形も無く消し飛ぶぞ』
『各次元でもっとも安定しているしな。それに*********様のお気に入りの星だぞ』
と、他の者も応える。
『…え? えええ?! ま、まじい! *********様が守護する星じゃねぇか! 不味い! き、軌道修正! 多少、天変地異が起きるが――仕方ねぇなぁ。クソ。またやり直しかあぁ!』
大急ぎで、タブレットをいじる***。
”かくん!”目の前に浮かぶ球体……”星”が、奇妙な動きを取る。
『ああ。早くしたほうがいい。【地球】にも多少影響も出てるかもしれんぞ! バレたらえらいことに。さっさと調査もしないといかんな。報告はしないと不味いだろうなぁ。ほれ、とりあえず一報を入れに行く 《……ほほぅ。私の星が邪魔……と? あの美しい星がかね?》 ……あ』
『げ……*********様ぁ、い、何時からここに?』
大きな画面、その向かいに、何時の間にか現れた女性? 男性? 最早そんなものは超越している。均整の取れた顔、そして床まで達する、滝の水粒が光を反射し、光輝くような長い銀髪。
《そうですねぇ。私の美しい【地球】を吹き飛ばすとかなんとか……。どこかの不届き者が戯れ言を放っていた辺りからでしょうか?》
『……(最初からじゃねぇか)』
……
《***よ。呆けていないで交差点の調査、被害、影響を上げよ。貴様の珍妙な星を消し飛ばしても良いが――そこに住まう”生命”のことも考えよ》
『は、はいぃ! 只今! *********様ぁ!』
”かちゃかちゃぴっぴ……”
***を中心に、慌ただしく動き出す、白い服を着たモノ達。者? いや? 人……なのか?
そう。ここは天界と呼ばれる場所。神々と呼ばれるモノが集う場所……
・その頃の深山村。
「かんいっつぁーーーん!」
「……」
いくら達也が井戸に向かって叫んでも反応はない。冷静なら気が付いたであろう。己の声の反響音も無いことを……。落ちたときの水音すらしなかったことを。
……この井戸、穴は何処に繋がっているのか……
「しかし、枯れ井戸か? 落ちた時、水音せなんだな……」
と、一人の猟師は気が付いたらしい。が、
「そんな訳ないのじゃがな。気のせいじゃろ?」
「お。おい! まさか生きている? ――井戸の壁さ、爪立てて?」
「の、昇って!」
猟師、村民の顔色が一気に変わる! あの化け物熊がまだ生きていて這い出て来るのか! と。
「うっ……仕方なしか。二さんには悪いが。……ふ、蓋を」
「い、いや、待てよぉ!」
「タツよぉ。気持ちはわかる」
「ああ、二さんは英雄じゃ。彼の言葉でもある。なぁ」
「かんいっつぁん……」
無念。その表情を顔に深々と貼り付けるタツ。
「あ、ああ。トタンさ、被せて……そうじゃ! 村の大きな耕運機あったじゃろ! そいつさ、乗せとこぅ!」
「おうよ」
「仕方あるまいよ。タツ」
と、タツの右肩に手を置く猟師。
「ああ。生き返って……。も、もしも、這い上がってきたら……」
「そうだ。タツ。……二さんの仕事も無駄になっちまう」
「あ、ああ。わかっているさぁ。相手はバケモンだ。すまねぇ……かんいっつぁんのおかげだよ。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。」
そっと手を合わせる達也。
……
トタン板のみならず、重機の足場用の鉄板(建築重機がぬかるみにはまらないように敷く養生用の鉄板)も運び込まれ、厳重に井戸が塞がれれることになった。もちろん、大きな耕運機やら、鉄板を持ってきた小型のパワーショベルも用心で自衛隊等の調査が入るまでのせられることに。
井戸の周りをパワーショベルで均していく。鉄板を置いた時に隙間が極力できぬようにと。
その作業の様子を見ながら……
「そろそろ、警察も本店から来るだろさ。自衛隊は明日か?」
「いや、ヘリ出す言ってたわ。直だろさ。酒井さん等のところにゃ、無線では知らせてあるが、物資持っていってくるわ。そうだ、重症のも連れてこんとなぁ」
「が、まだここも鉄砲持ちが足りねぇぞ」
「しかたあるめぇなぁ。警察待ちかぁ」
「猟師で手ぇ空いてるの手伝ってくれぇ!」
バタバタ動き出す、猟師と村民たち。
「かんいっつぁん……あ! クマ! ハナぁ! ダメだぁああ!」
その時、駆け出す、二の愛犬のクマ、ハナ。
タツの制止など気にも留めず一切の迷いなく穴に飛び込む二頭のハスキー犬。
達也の咄嗟に伸ばした手も届かない。主人に殉じるように……。
「なんてこった……」
二の形見ともいえるこの二頭の犬を引き取ろうと思っていた達也を残して。




