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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (2) / Soir Sonnet〜  作者: 御子柴 流歌
3. 四月は風の旅人

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3-6. 歓迎される者たち


「初日から何人来てくれるかなーっていうのは、やっぱりドキドキするんだよねえ」


「今年は去年以上に好感触な感じするよね」


 放課後――と言ってもいつもよりかなり早い時間帯。

 何となく違和感もあったりする陽の高さ。

 先輩たちはそんなことを言いながら、早々に今日の活動の準備をしていた。


「こんにちはーっす」


「やぁやぁ、今日からチミも先輩だねぃ」


 ――あ、これはウザい日だ。


 この感情が顔に出ていないかちょっと心配になるが、とりあえず薄っぺらい笑顔をうわ被せにする。

 こういう日の神村(かみむら)春紅(はるか)先輩に対して、無視は厳禁。

 だけど過度に触れるのは絶対に避けるべきなわけで。


「昼休みのアレでようやく実感湧いてきましたよ」


「いいことよー」


「……春紅先輩が去年余計なこと言い放ったことも、しっかり思い出してしまいましたしね」


「……ふっふーん」


 どこ吹く風。そんな顔をする先輩だった。


 高校入学直後。

 クラスメイトはどんな子たちだろうかと探る前に、こちらの素性が大方バラされるとか、悪夢以外の何物でも無かった。

 少しだけ静かな暮らしが出来るかと思っていたのだけれど、春紅先輩のお陰で、クラスでの立ち位置がちょっとだけだけど狂ってしまった感は否定できなかった。

 でも、最終的には去年のクラスはいろんな行事も楽しく過ごせたし、先月の体育祭で華々しく解散となったわけで。

 今になって思えば、少なくとも悪いことでは無かった。


「先輩たちも止めてくださればよかったのに」


「ふっふーん」


 止める気、無かったんですね。

 春紅先輩と連んでいる時点で大体予想はついてたけどね。


「おつかれさまです」


「こんにちはー!」


 購買に寄ってから来ると言っていた和恵(かずえ)さんや早希(さき)、その他いつものメンバーが徐々に集まってくる。


海江田(かいえだ)、おつかれさん」


「それを言うなら佐々岡(ささおか)くんも」


 パシっと軽くグータッチ。

 音楽室だろうと、廊下だろうと、最近の彼との挨拶では何故かこれをするようになっていた。


「俺、まだみんなが何組が把握しきれてなかったんだけどさ。海江田は何組だったっけ?」


「3組。えーっと、和恵さんとか早希が同じクラス」


「私とエリーが8組」


 とくに訊かれてもいなかった神流(かんな)が話に混ざってきた。

 それを聞いた佐々岡くんは、わざとらしいくらい眉間に皺をよせた。


「お前らが? 同じクラス?」


「……何よ」


「問題児だらけじゃ」


「鉄槌!!」


「ぐへっ」


 佐々岡くんのおなか辺りに神流の拳が食い込んだ。

 よろよろと後ろの壁にもたれていく佐々岡くん。

 言わずにいられない性分なのはわかるが、もう少し体勢を整えてからそういうセリフを言うモノだぞ。


「あれ? 瑞希くんと神流ちゃん、別のクラスなの?」


「そーなんですよー」


 一撃を食らわせて満足そうな神流に、春紅先輩が近付いてきた。


「なんすか、そのニコイチみたいな言い方」


「あれ? ミズキ、なんか文句ある?」


「いえいえ、別に何もこれっぽっちも」


 握りこぶしをこちらに見せつけてくる神流には、素直に頭を下げておくに限る。

 そこらへん、無駄なプライドを振りかざすのは意味が無い。

 折れるところで折れておくのが、重要なところで折れないために必要だった。


「君らのコントみたいな会話のクオリティが下がっちゃわないか心配だわ」


「そこっすか」


 むしろ先輩は、ボクと神流をそういう雰囲気で見ていたんですね。初耳です。


 新クラスなら、すみれ・大輔(だいすけ)のコンビがその役割を担ってくれそうな気がしているので、個人的には全く気にしていない。

 ――というか、安心だった。


「さて、と。そろそろ新入生ちゃんたちも来てくれるタイミングかなぁ」


 春紅先輩が壁に掛けられている時計を見上げる。

 今日の1年生は他の学年よりも放課になるのが少し遅くなっている。

 ホームルームが長く設定されているせいなのだが、そのおかげで在校生はこうして部活動の準備を進めることもできるし、玄関付近で行う宣伝活動のスタンバイもできるわけだ。

 吹奏楽部も3年生の一部を宣伝役として生徒玄関に派遣している。


「やっぱり、ちょっと威厳みたいなのがありますよー、的な雰囲気の方がいいのかな?」


「……そういうことを言ってる時点で、威厳なんて無いような気がするんですけどね」


「えー、そうかなぁ?」


 そんなことを言いつつ、春紅先輩は腕組みをしてみたり、顎に手をあててみたりと、本人が思う『威厳を見せられる』風のポーズを取っている。

 連続写真で撮ったら面白そうだな、なんて思えるくらいには威厳なんてない。

 明るく楽しそうな雰囲気を全身から放出しているような春紅先輩は、何をしていても楽しそうだった。


「威厳とかいらないっしょ? ふつうでいいの、ふつうで」


「ほら、部長もそう言ってるじゃないですか」


 開け放されたドアの向こうから、藤林(ふじばやし)香奈(かな)部長が苦笑いを浮かべつつやってきた。


「そもそもアンタに威厳はない!」


「ひどっ! 香奈、ひどっ!」


 容赦なく切り捨てた。


「ほら、そんなこと言ってるから、もうそこで新入生たちが笑ってるでしょ?」


「え? ……あ」


 春紅先輩の威厳を見せつける作戦は、始める前から終わっていた。

 聞けば藤林部長は、こちらに向かってくるときにこの子たちから音楽室はどこかと訊かれたらしい。

 合唱部の見学か、それとも吹奏楽部の見学かと訊き返せば、吹奏楽部の見学に行きたいということで、だったらとそのまま連行してきたという話。

 どちらの立場にしてもラッキーだった。


 部長が連れてきたのは合わせて5人。いきなり大収穫――なんて言い方をしたら失礼か。

 でも、幸先が良いのは間違いないと思う。


 けれど、見覚えのある子もちょっと混ざっているような気がするけれど。


 そんなことを思っているうちに、ほぼ全員が見学に来てくれた子たちを半ば取り囲むようにお出迎えする。

 ボクは完全に出遅れてしまった。

 ギリギリで顔が見えるくらいだが、まぁいい。


「えーっと、……今日は部活動見学をさせていただきます。よろしくお願いします!」


 横並びになった5人。

 そのうちの真ん中に立っていたミディアムショートの子が、何やら右隣の子に突かれつつも、挨拶をしてくれた。


「……初々しい」


 うっとりとした様な声を出す神流。

 そうだな、お前にはそんな時期は無かったな。


「カワイイ……」


 じゅるり、なんて不穏な効果音を自ら付け足すエリー。

 ちょっと怖いからやめて。


「いいねえいいねえ。……君たち、どこ中? あいだっ!?」


 ナンパをかます佐々岡くん。

 しまった、コイツをどこかに隠しておくべきだったかもしれない――なんて思っていたら誰かにお尻あたりをつねられたらしい。

 奇声を上げる佐々岡くん。


「あれ? ちょっと待って!」


 それに負けず劣らずの声量で叫んだのは春紅先輩だった。


有希(ゆき)ちゃん! 有希ちゃんだよね!」


「あ! 春紅先輩!!」


 ――有希ちゃん?


 そして、何となく聞き覚えのある声になったように思えた。

 しかし、そちらの様子がこここからでは少し見えづらい。


「っていうか、よく見たらみずほちゃんと咲良(さくら)ちゃんでしょ! ウチに来てくれたんだ!」


「そうなんですよー! 絶対に月雁(つきかり)に行くって、がんばったんですよ!」


 ハイテンションで同窓会が繰り広げられている。

 ここまで来たらさすがにボクでも完全に思い出せた。

 もはや見て確認する必要も無い。

 ボクと同じ中学校出身の春紅先輩のことをよく知っている、有希・みずほ・咲良と来れば――。


「やあ」


「あ、海江田(かいえだ)先輩もいるよ!!」


「え? あ、ほんとだっ!!」


「もごご……」


 春紅先輩の腕の中――というか、もはや胸の中に完全に収っている子はともかくとして、残りふたりにがっしりと手を掴まれた。


 ――一瞬、空気が凍ったような気がしたのは、気のせいであってほしかった。



 ここまでお読みいただきましてありがとうございます。


 後輩、登場。

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