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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (2) / Soir Sonnet〜  作者: 御子柴 流歌
2. 黄昏ロマンス

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2-XX. 新たな幕開けは春の嵐


 春休みになったところで、ほとんど毎日学校へ行くのも音楽室へ行くのも変わりがない。

 相も変わらず部活に明け暮れる毎日だった。


 最近の練習曲は新入生歓迎会での部活紹介で歌うための曲。

 数年前に卒業し、現在は音楽大学に在学中である人が作詞・作曲をしたという曲だ。

 タイトルは『New Journey』。

 門出を迎えた生徒たちに贈るにはぴったりだった。


 それにしても、もうすぐであたしたちも後輩になる子たちから『先輩』と呼ばれるだなんて、まだちょっと実感が湧かない。

 1年前の3月まではたしかにそう呼ばれていたけれど、何だか遠い昔の話みたいに思えてきて、ちょっとだけ不思議だった。

 これは他の人たちも同じようで、美里(みり)もなんとなくくすぐったそうな表情を浮かべていた。


 だけど、今朝。

 練習前に合唱部顧問の小早川(こばやかわ)真央(まお)先生が「今日から学年がひとつ上がるけど、みんな間違えないようにね」と言った矢先に、先生自身が真っ先に間違えるというハプニングが起きるとは思っていなかった。

 顔を真っ赤にして誤魔化そうとしても、もう遅い。

 図らずも、合唱部の部員全員が腹筋トレーニングを完了させてしまった。

 真央先生曰く、「言わないように、言わないようにって気を付けようと思ったら、逆にそう思いすぎたみたい」ということだった。


 上の階にある第2音楽室からは、吹奏楽部のパート練習が薄らと聞こえてきている。

 外からもきっと、運動部の元気な声が聞こえてくるだろう。

 野球部は練習試合があるということで、朝早くから星宮の隣の市に向かっていった。

 モーニングコールをお願いされたけれど、彼の声は明らかに寝ぼけたような雰囲気だった。

 無事に辿り着いたか、少し心配。


 ――そんなわけで、どこの部活も新年度を迎える前後は忙しく、普段から顔を合わせられるのは同じ部活に所属している子たちくらい。

 部活の時間がそれぞれ午前と午後で別れていたり、私たちみたいに1日通しでやったりするので、こういうことは仕方が無いところだった。


聖歌(せいか)!」


「うん?」


 昼休憩のタイミングになって、美里に呼ばれる。

 しっかり声を出せていたのだろう、あたしを呼ぶ声がものすごく通って聞こえた。


 いつもより少し早い昼休憩。

 普段なら12時を過ぎてからキリの良いタイミングで休憩に入るけれど、今日はまだ12時前だった。


「下、行くでしょ?」

「あ、行く! ちょっと待って」


 言いながら階下を指差す美里。

 持っていた楽譜やペンケースを自分のカバンに一旦詰め直して、ドアのところでニコニコしながら待っている美里のもとへと小走りで駆け寄った。





 屋内で活動する他の部活の人たちの姿も今日は割と多く感じる。

 その全員が、今は同じ方向に向かって歩いている。

 何だか全校集会とかをするときに体育館へ移動しているような雰囲気もあるけれど、今回の目的地は体育館ではない。

 ――生徒用玄関だ。


 既にかなりの数の生徒が玄関前に集まっていた。

 いちばん多いのは、吹奏楽部員だろうか。

 そういえば、楽器の音が止むのは早かった気がする。

 少なくとも合唱部よりも早いタイミングで、お昼の休憩に入っていたようだった。

 その他にも屋外の部活の子たちも、ついでにここに立ち寄っているような雰囲気だった。


 目的は、新クラスの発表。

 オンラインでも後から確認は出来るけれど、最速でチェックできるのがこの日の12時丁度、玄関前。

 そういうことで、既に校内に居るとか、今日学校に来る予定がある生徒はほぼ全員集合のような感じになっていた。


 合唱部の昼休憩が少し早まったのは、発表の時間に合わせてみんなで見に行きたいという要望に応えたというお話だった。


「同じだったら良いねー」


「ねー! 今年は見学旅行もあるしねー。いっしょに回りたいー!」


 美里の言葉に嬉しくなってしまう。

 彼女に面の笑みでそう言われて、喜ばない子なんているわけがないとも思ってしまえるくらいだった。

 それにしても、今から秋の頃の話題になるとは思っていなかったけれど、言われるとあたしもやっぱり今から楽しみになってしまう。


 予想通り、すでにたくさんの生徒が集まっている玄関前。

 靴を履き替えて、と思う前に美里が何かに気付いた。


「えー! ちょっと! まだ早いじゃん!」


 そのまま彼女は文句ありげに叫んだ。

 各学年ごとの入り口のガラスにコピー用紙を貼り付けていく先生の姿。

 時計を見ればまだ12時にはなっていないのに。


「ちょっと、せんせー! まだ12時なってないっしょ!」


「いや、だって、君らが下でうるさいんだもの。『もういいよ、見せちゃえ』ってことになってさ」


「もー!」


 最後の用紙を貼り付け終わった数学の岩滝(いわたき)先生に文句を言う美里。

 そういえば、岩滝先生は美里のクラスの担任だった。


「ねえ、先生。私何組?」


「それはお前、今から見ればいいだろー」


「ケチー」


「ケチで結構」


 ほら、早く見に行けよ、とばかりに美里を手で払いのけるようにして、岩滝先生は職員室の方へと向かっていった。


「ま、いっか。行こっ」


「うん」


 口を尖らせながら岩滝先生を見送っていた美里だったが、それもやっぱりパフォーマンス的なモノだったようで、直ぐさま機嫌も元通り。

 去年までの美里のクラスの雰囲気をなんとなく察しながら、あたしたちは玄関の外に出た。


 玄関の中からも充分すぎるくらいに声は聞こえていたけれど、外に出れば比べものにはならない。

 そりゃあ先生もちょっとフライング気味に貼り出すよね、なんてことを思いつつ集団の後ろにくっつくことにした。


 本当に徐々に少なくなっていく人の波に乗りながら、ようやく文字が見えるくらいのところまでやってくることができた。

 こういうときはとくに、もう少し背が大きかったら良かったのにな、なんて思う。


「……あ」


 1組から順に見て、わりと早いタイミングで見つけられた。

 3組だった。数字的には1年生のときと変わらない。

 今までのクラス替えの時はクラス番号が必ず変わっていたので少し新鮮だった。


 自分を見つけたら、今度はクラスメイトのお名前確認。

 自分の名前の少し上には、既に花村(はなむら)すみれの名前は見つけていた。

 良かった、仲の良い子が居るとやっぱりほっとする。

 とくにすみれちゃんならいろんな意味で安心だ。

 残念だったのは、平松(ひらまつ)美里の名前を同じクラスには見つけられなかったことだった。


 吹奏楽部の子も見つかった。

 勉強会だったりパフェ会だったりでお話もしたメンバーの子だった。

 パフェ会で言えば、すみれちゃんとダブルスを組んでいる子も同じクラスになるようだ。


「あっ!」


 そこまで見たところで後ろから少し押されてしまい、バランスを崩す。

 何とか体勢を立て直そうとして、転びはしなかったけれど、最後の最後で誰かの背中にぶつかってしまった。


「うぉっと、大丈夫……?」


「ご、ごめんなさいっ……?」


 上から、ものすごく、聞き覚えのある声がした。


「あれ? 聖歌?」


「みずきくん……」


 ぶつかった相手が彼で良かったのか悪かったのか、あまりよくわからなかった。


「今来たの?」


「うん。さっき来たとこ」


 彷徨(さまよ)う彼の視線。

 何となく意識がこの周辺に無いような気がしてしまう。


「みずきくん、何組?」


 知りたかったのは、もちろんある。

 だけどそれ以上に、無言になるのが怖かった。


 少しの間が出来たものの、彼は答えてくれた。


「……3組」


「え」


「聖歌と、同じ」


 ――同じ?


 弾かれるように男子の方の名簿を見る。

 上の方に『海江田(かいえだ)瑞希(みずき)』の名前をたしかに見つけた。


「同じ、だね」


「うん」


「久々、だよね」


「……そう、だな」


 どこを、見ているんだろう。

 不安になって、あたしももう一度名簿を見る。


 ――わりと簡単にその理由がわかってしまう。


 3組の男子の名簿、その下の方。


 彼の名前――『水戸(みと)祐樹(ゆうき)』の名前も、あった。




 ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。


 第2部、完結。

 やっと同じクラスになったよ。「みんなが」ね。

 

 ということで、次は第3部。

『四月は風の旅人』というタイトルでお送りします。

 今度は松田聖子さまの楽曲タイトルです。


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