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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (2) / Soir Sonnet〜  作者: 御子柴 流歌
2. 黄昏ロマンス

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2-12. 無軌道な会話と意外な顛末


 訝しげな視線を遮るように言葉を発したのは、玲音(れお)だった。


「あれ、知らないの? 瑞希(みずき)ってかなり球技得意だよ?」


「え。なにそれ初耳なんだけど。どういうこと?」


「言うシチュエーションが無かったし。っていうか玲音、それは話を盛りすぎだと思うぞ?」


 疑問文が飛び交っているような光景。

 さも当然というような顔をする玲音。

 完全に困惑している神流(かんな)

 そして、無言のままこちらを見つめている亜紀子(あきこ)

 現場は大混乱だった。


「盛ってないと思うけどなー。この前の体育のバレーのとき、すっごい盛り上がったじゃん」


「あれは……」


 たしかに、盛り上がりはしたけれど。


「え。いや、ちょっと待って。だってミズキ、夏の体育祭のとき全然目立ってなかった……」


「……いや、あれはさすがに相手が悪かったし」


 中距離走に出たら、予想外に各クラスが本気のメンバーを出してきていて、結果として真ん中よりやや下とかいう毒にも薬にもならないような順位を取り、最終的には悪目立ちも良い目立ちもしなかったという顛末だ。

 しかも、ほぼ同じタイミングでフィールド競技として走り幅跳びをやっていて、ほとんどの視線がそちらの方に向かっていたという始末。

 気が付かないのも当たり前だった。


「実はサッカーとか、野球とかもできるとか?」


 そう訊くのは亜紀子だった。


「野球は未経験だなぁ……」


 体育の授業でやらない限りは、基本的にノータッチだ。


 ウチの方にはわりと有名なシニアリーグのチームがあったり、少年団も強かったりして、わりと野球人口は多かったが、ボクはそれには入っていなかった。


「今度、教えてあげよっか? 案外、ピッチャーとか向いてるかもよ?」


「ははは」


「あ、ごまかした」


 玲音はいったいボクをどうしたいんだ。

 野球部への勧誘は勘弁してほしい。


「ところで、無回転サーブって……」


「それは、偶然の産物っていうか」


 亜紀子の質問には、曖昧にしか答えられない。


 なんとなくでオーバーハンドで打ったボールが、誰もその軌道を予測できない風に飛んでいったという話だ。

 みんなが『今のなにー!?』と訊いてきたが、そんなの打った本人がいちばん知りたがっている。

 行き先はボールに訊いてくれ、とかいうフレーズがあったような気がするが、まさにあの通りだ。

 打った本人がわからないんだから、ボールに訊くしかないわけだ。


「ってことは、体育祭ではミズキとレオくんのスーパープレイが見られる、と?」


「僕はわかんないけど、瑞希は期待していいんじゃない?」


「玲音、頼むから無責任な言い方はしないでくれって。っていうか、玲音のスパイクの方が明らかに見栄えするからな」


「あ、コラ」


 良いだろう、たまには反撃くらいさせてくれ。


 そんなことを思いつつ女子ふたりに視線を送れば、何だか期待に満ちた表情で楽しそうにしていた。

 神流はともかくとして、亜紀子も案外負けん気の強さを持っているのを思い出した。


「とりあえず、神流。突き指には注意な」


「あ、たしかに」


「……お前な」


 わりと大事なポイントだぞ。

 運指に影響が出かねない。


「ま、大丈夫っしょ?」


「何とかはなるけどね」


 とはいえ、偉そうな口を叩いてるボクだけれど。


「……ま。そう言ってる本人が、昔やらかしたことがあって、ちょっと指曲げちゃってんだけど」


 言いながら、人差し指を見せる。

 左右並べるとよくわかる。

 右手の方がちょっと歪んでいる。

 中学の時、休み時間にバスケットボールで遊んでいて、リバウンドを取り損ねた際にできたものだ。


「ミズキぃ……?」


「だから気を付けろ、ってことだ」


 恨みがましい神流の視線を封じ込めた――と思いきや、神流はボクの目の前に小指を晒してきた。


「ま、私も手遅れだけどね」


「……あるある」


「ちなみにふたりは?」


「僕も」


「私も」


「ですよねー」


 締まらない話の落ち方だった。









 無事に全員の出場種目が決まった。

 ほぼ予定通りの時間。

 廊下に出てきているクラスがまだ少ないところを見ると、希望が偏ったりしているのかもしれない。


 今日は教室の掃除当番が回ってきている。

 この後はいつも通りに部活もある。

 出来れば早く終わらせたいところだった。


海江田(かいえだ)ー」


「うん?」


 箒を持ったところで廊下から声が掛かった。

 誰かと思えば宇野(うの)くんだ。


「今度の土日あたりに、バレー参加者で練習しようかと思ってるんだけど、来れるか?」


「うーん……」


 歯切れの悪い反応をしてしまう。


「あー、そっか。よく考えりゃ、吹奏楽部だ」


「あ。察した?」


「オレらが部活で出てきたとき、大概演奏してる音聞こえてくるからなー」


 余程のことがない限り、ウチの部活は土日もフルタイムで活動がある。


「いや、でも、出来たらで良いんだ。部活があったり用事があるヤツは無理しないで、っていうことで。一応報告した」


「こっちこそ、行けたら行くよ」


「……それ、体のイイ断り文句じゃあないか」


「いやいや」


 不意にそうなってしまっただけだ。

 折り合いがつけば行くし、行きたい気持ちもある。


「あ、そうだ。ひとつ言い忘れてた」


「……ん? 何?」


 宇野くんはちょいちょいと小さく手招きをする。

 何だ、小声でしか言えない内容なのか。


「なにさ」


「これは実に重要なことなんだが。……もちろん、男女合同だぞ?」


「……そーかい」


 薄々そうなんじゃないかとは思っていたけれど、案の定だった。

 顔を寄せたときに一瞬だけ、男子高校生らしい顔つきになったのを見逃すわけがない。


「あれー? 意外とツレナイなぁ。……ああ、そうか。()()()に苦労はしていない、と」


「待て待て」


 また不穏なウワサを流されかねない。

 ここはすぐに弁解の必要が――――。


「ミズキっ!」


「ぅわ!?」


「おおっ」


 突然真後ろから両肩をがっしり掴まれ、さらに体重をかけられた。

 さらに腹式呼吸がしっかり使われていそうな大声。

 こんなことをするヤツなんて、ひとりしかいない。


「神流……さすがにビビるからそれは止めて」


「あはは、ごめんごめん」


 本当に気にするような素振りがないから質が悪い。

 その流れで宇野くんを見れば、『ほら、そういうところだよ』とでも言いたいような顔をしていた。

 違う、違う。

 断じて違う。

 違うのだが、ここで神流を放っておくのも間違っているような気がした。


「で? 何か話持ってきたんだろ?」


「そうそう。次の週末、部活休みだからね」


「んぇ、マジで?」


 職員室に寄ってくる用事があった神流は、神村先生からチラッと話を聞いたその勢いのまま教室に戻ってきたらしい。特ダネを掴んだテンションとは恐ろしい。


「『体育祭の練習に使うなり好きにしたらいい』ってことで」


「ふーん……?」


 随分とストレートな物言いに、少しだけ違和感を覚えた。

 ――が、その答え合わせはすぐに行われてしまう。


「あ。言い忘れてたけど、体裁としては部活動顧問会議があるから指導できない、っていう()()らしいよ」


「設定、って。そんな身も蓋もないことを……」


「だって、先生が言ってたし。細かいことは気にしちゃダメ」


 言うほど細かくないし。

 というか、それ、もう黒じゃん。

 そうじゃないって白状しちゃってるじゃん。

 相手が神流だからってノリで言ったとしか思えないんだけど。


 しかし。

 行事の数があまり多くないから忘れていたけれど、この高校の教職員って行事大好きな人間の集まりだ。

 一応は進学校という側面はあるけれど、基本的には高校生活は満喫するものだという認識が共有されていた。


 降って湧いたような休息日。

 部活を念頭に置いていたので、当然ながら予定など組まれていない。


「あれ? ……ってことは、高島さんも海江田も」


「ばっちり!」「だいじょうぶ」


「ぃよっしゃ!」


 ガッツポーズを残して走り去る宇野くんを見送ったタイミングで、神流が口を開いた。


「ミズキ、こういうときの部活は休みになるって話、知らなかったんだ?」


「そこまで興味持ってなかったわ」


「許されないわぁ。私は一応、先輩たちからチラッとだけ聞いてたのに」


「そうは言うけどさぁ……」


 だって、こういうイベントは何だか気疲れするから。

 家に帰り着いたあとの疲労感が、普段とは全然違う種類のものだから。

 だから、体育祭とかの行事が苦手になっていたのは事実だった。






ここまでお読みいただきましてありがとうございます。


学生諸君、学びに生きて遊びにも生きろ。

そんな心意気なんです、瑞希たちの学校の教員は。


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