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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (2) / Soir Sonnet〜  作者: 御子柴 流歌
2. 黄昏ロマンス

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2-11. ホームルーム、延長戦


「はーい、それじゃあとりあえず希望する競技の方に、各自名前を書いていってくださーい」


 学級委員長の上野(うえの)愛理(あいり)の号令に、クラスほぼ全員が黒板の方へと近寄っていく。

 ボクはその光景を、教室のやや後ろ側の席からぼんやりと眺めていた。


 今日は全クラスで、少しだけ帰りのホームルームが延長されることになっている。

 概ね16時くらいまでを想定しているらしいが、場合によってはそれより長くなっても可。

 ただし、定時制クラスの兼ね合いもあるので、17時前には退出を終えていることが絶対条件。


 その目的は、冬季体育祭の出場競技決めだった。


瑞希(みずき)、もう書いたの?」


「いや、まだだよ。玲音(れお)は?」


「僕もまだ」


 僕の席の方に近付いてきた玲音も、いっしょになって黒板前の喧噪を眺め始めた。

 どっちにしようか、いっしょにしようと、などと言い合っている。

 あれじゃあ、チョークが何本合っても足りない。


「だいたいの流れ見てからでもいいよね」


「そーだなー……」


 あの中に紛れていっしょになって考えるのもいいけれど、正直どちらでも良い。

 ただし、消極的な意味の『どちらでもいい』ではなくて、どっちかに決めかねているからの『どちらでもいい』だった。


「おふたりさーんっ」


「……ん?」


 声のする方を見れば、神流(かんな)亜紀子(あきこ)がこちらに戻ってくるところだった。


「いつの間に決めたの?」


「うーん……」


「そういうわけじゃなくてね」


 唸る玲音にサポート。


「なに。ふたりともまだ書いてなかっただけか」


「そ」


 机に突っ伏す。

 投げやりなのではない、わりときっちり悩んでいる。

 ――神流にはそう見えないかもしれないけれど。


「……どっちでもいいんだよねー」


「なぁによ、その煮え切らない感じは」


「……ふふ」


 仁王立ちでボクらを見下ろしてくる神流と、その様子を見てくすくすと笑う亜紀子。

 結局はよく見る光景だった。


 3月、修了式やクラス替えも間近に迫ったこのタイミングで、年間の最後に行われる全校行事――それが、月雁(つきかり)高校冬季体育祭だった。


 冬季と付くだけあって、夏季もある。

 こちらは夏休み終了直後くらいの8月末に行われる、陸上競技をメインにおきつつ屋外球技も同時開催するタイプの体育祭。

 それに対して、まだ雪が融け残っている冬季体育祭は屋内球技がメイン。

 2つの体育館を同時並行で使用しての、バスケットボールとバレーボールの2本立てだ。


 この学年での最後の行事なのは当然として、そもそも月雁高校は全校での大きなイベントがあまり多くはない。

 直近だと3年生を賑やかに送り出す予餞会(よせんかい)が1月にあったが、それ以前となると実は夏季体育祭が当てはまってしまう。

 その程度だ。秋には2年生の見学旅行が入ってくる上に、週末高頻度で割り込んでくる模試とか、それぞれの部活の大会などが入ってきたりするので仕方ないところはあるのだが。


「ちなみに、ふたりは?」


「私たちはバレー」


「あ、ふたりともなんだ」


 黒板をチラッと見れば、びっくりするほどに大きな『高島(たかしま)』という文字が見えた。

 思わず鼻で笑ってしまったが、神流はその反応に満足げだった。『ほら、どーだ』とでも言いたそうだ。


「なるほどねー……」


「……ねえねえ」


「うん?」


 くいくいっと学ランの袖が引かれた。

 亜紀子だ。


「球技って得意な方?」


「……どうかな。割とふつうくらいだと思うけど」


「ふぅん……」


 単純な興味、という感じの訊き方だった。

 当たり障りが無いというよりは中身が無い答えを返してしまった気がするが、どうだったのだろうか。


「……亜紀子は?」


 一瞬だけ周りの様子を見てから、彼女に話を振ってみる。

 ――小声で。


「私も、……まぁまぁかなぁ」


「なるほど」


 何だ、この探り合いみたいな雰囲気は。


「あ、でもキライじゃないよ? だって」


「『体育会系だもんね』」


「あ。……もう」


 言いそうな雰囲気を察して先回りしてみる。

 ちょっとふくれた頬と尖らせた唇が、思った以上に勝ち気だった。

 当初の亜紀子のイメージからすれば予想外だったのはこの辺だろうか。


「ラケット使う系の競技無くて残念だね」


 バドミントンとか、卓球とか、屋内のラケット系競技は、個人戦の様相が強いという理由で不採用だそうだ。

 テニス部所属の彼女ならちょっと寂しい思いをしていそうだが。


「んー……、正直そうでもないかも」


「あれ? そうなの?」


 意外な答えだった。


「中学の時にクラスの子とバドミントンやったんだけど、全然しっくりこなくて。しかもその後しばらくテニスのフォームに影響出ちゃって」


「へえ……、そんなこともあるんだ」


「他の子は平気だったんだけどねー」


 複数の楽器を同時並行で練習しようとすると、何となく覚える違和感とか、それと似たようなものだろうか。

 こういうのは個人差もあることだけれど、やっぱり訊いてみないと解らないことは多い。


「んー。……だったら僕もバレーにしようかなぁ」


「お! それは私たちがいるからかな!」


「……ねえ、瑞希もバレーにしようよ」


「話を聞けーぃ!」


「……うん?」


 何だか急に騒がしい。


 見れば玲音のところに男子バレー部の宇野(うの)海翔(かいと)くんが来ていた。

 亜紀子と話している間に、どうやら勧誘されていたらしい。

 たしかに玲音の長身なら当然か。


「あ。もしかして海江田(かいえだ)もまだ決めてなかった?」


「ああ、うん」


「だったら、ぜひバレーに!」


「おぅ、どーした」


 随分と熱心だ。


「実はさ――」


 ――と、彼の説明が意外に長かったので、一旦端折ることにする。


 冬季体育祭のチーム決めには、ひとつだけ条件があった。

 それは『それぞれの競技を専門にしている部員はそれぞれのチームに最大2人まで同時出場が可能』というルールだった。

 たとえばクラスに3人バスケ部員がいた場合は、その内ひとりはバレーに回るかベンチに座るかのいずれかになってしまう。

 戦力の偏りが出ると不公平、ということらしい。


 ちなみに我らが1年7組は、男子バスケ部がふたりに、男子バレー部がひとりだった。


 まさかの不足である。

 ルール適用以前の問題だった。


「――ってことなんだよ」


「なるほど」


 長身の生徒がほしい、と。


 それで、まだどちらかを決めていない、クラスではわりと背の高い方であるボクも抱き合わせで、玲音を誘ってきたというわけか。


「頼む! このとーり!」


 宇野くんはこちらに向けて手を合わせてきた。

 そこまで懇願しなくても――って、まさか、やる気がないところを無理に誘ってしまっているとか考えてないよね? 

 その可能性は高そうだけれど。


「そこまで頼み込まなくてもだいじょぶだってば。どっちにしようか迷ってただけだから。だったらバレーにするよ」


「マジか! ありがとう!」


 がっちりを握手を交わす――というか、思いっきり両の手を包み込まれた。


「いやー、ホントに助かるや。海江田、かなりヤれるから」


「あ! 海江田くんバレーにするのか!」


「まじでかー、ちょっと勧誘遅かったかー!」


「お前らはバスケ部ふたり居るから大丈夫だろー?」


「いやいや、そうは言うけどな?」


 遅れながらこちらに近付いてきたバスケ部所属ふたり――大堀(おおほり)くんと小林(こばやし)くん――が残念そうにしている。

 宇野くんはそんなふたりを笑いながら追い返した。


「あっぶねー。名前書いてないのに気が付いといて良かったぁ」


「そこまで戦力になれるかどうか」


「何を言いますやら。無回転サーブ、期待してんだから」


 宇野くんはボクに向かってサムズアップをかましつつ、なおも未練たらたらなバスケ部員ふたりに引き摺られていった。

 あ~れ~、なんて言って、わりと3人とも楽しそうだ。


「……モテモテだね」


「よせやぃ」


 玲音は基本的に悪意の無さそうな言い方をするから、余計にその言葉を払いのけにくい。

 とりあえず苦笑いしつついつもの調子であしらうと、何となくいつもとは違う視線を感じた。


「どした?」


「無回転サーブ?」


「っていうか、ミズキ、わりと出来る系?」


 神流と亜紀子のふたりが、意外そうな顔をこちらに向けていた。





 ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

 冬季体育祭篇、開始です。

 予定としてはいつも「ローマ数字篇」を2話含んでの10話構成です。

 なにとぞお付き合いのほど、よろしくお願いいたしますね。


 

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