表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (2) / Soir Sonnet〜  作者: 御子柴 流歌
2. 黄昏ロマンス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/71

2-4. 引率者をからかう者たち


「お疲れさまでしたー」


「おっつー」


「おつかれー」


 今日も、いつも通りの練習三昧。

 全体での合わせが少し白熱したせいで、いつもより15分ほど押してしまっていた。

 手早く荷物をまとめて音楽室を飛び出した。


 薄暗い階段を、1段飛ばしをしてみたり、踊り場近辺では大きめにジャンプしてみたり、少々手荒く先を急ぐ。

 少し遅れるかもしれないとは伝えていたが、これ以上遅れるのはさすがに申し訳ない。

 親しき仲にも礼儀あり、と言う話である。


 生徒玄関前まで来たが、人の姿はまばらだ。

 吹奏楽部と、今日は下のフロア――第1音楽室を使っていた合唱部、それとどこかで見覚えがあるあの子は美術部だっただろうか。

 でもそれくらいだ。

 今日もまだ寒い。

 日が落ちればなおさらだ。

 手早く靴を履き替えて玄関を出ようとしたところで、ふたりの陰を見た。


「待たせた!」


「あ、来た来た」


 ボクの声に気が付いて、こちらに向かってゆるやかに手を振るのは玲音(れお)


「こっちー!」


 そして、祐樹(ゆうき)


 今日の待ち合わせ相手は、野球部所属のこのふたりだった。


「ごめんごめん、ちょっと練習が盛り上がっちゃって」


「いえいえ、大丈夫ですよ海江田(かいえだ)センセ」


「その言い方はやめれ、めんどくさい」


 祐樹のおどけたような言い方には、パシッと軽くツッコミを入れておくことにする。


「結構待ったんじゃない?」


「いや、こっちも片付けとかでいろいろ時間かかるんだ」と、祐樹。


「部室の方に寄ってからこっちに戻ってきたから、……3分も待ったかな?」


「固茹でのカップ麺くらいだな」


「そっか」


 祐樹は巧いんだか巧くないんだかよくわからないたとえ方をした。

 完全に安心ということではないけれど、そこまで待たせていないのなら良かった。

 ただ、タイムロスを食ってしまったのは事実だったりするわけで。


「……それじゃあ、待たせた人間が言うのもおかしい気がするけど、行こう」


「おっけー」


「どこまでも着いていきやすゼ、兄貴」


「センセはどこ行ったんだよ」


「あ、間違えた」


「言ってろ」


 しょうもない言い合いが、案外いちばんラクだったりするんだよな――。


 そう考えていることこそが、それほどラクできていない証拠でもあった。









 学校から帰るルートを辿りながらの途中下車。

 降りた駅は星宮(ほしのみや)中央(ちゅうおう)駅。

 星宮市はだいたいこの駅か、ここから2駅先の三番街(さんばんがい)駅で降りれば、だいたいのモノは網羅できると思う。

 少し歴史のあるような百貨店とか、細かい専門店ならば三番街駅。

 最近のトレンドを意識するのなら中央駅。

 一応はそんな棲み分けが出来ていた。


「それにしても新鮮な感じ」


「ん? 何が?」


 改札を抜けつつ首だけで振り返って言うと、玲音が反応してくれた。


「あんまり他の部活の連中とこういうところに来ないから」


「なるほどねー」


 人好きのしそうな微笑みで納得したような声を出した玲音だが、彼はすぐさま苦笑いを浮かべた。


「まぁ、それを言われちゃうと、僕らは部活終わりにどこかに行くっていうアイディアがそんなに……。ねえ?」


「だな」


「あ、そうなの?」


 運動部だとそんなもんなのだろうか。

 ボク自身は運動部所属の経験がないからよくわからない。

 玲音からも時々、最近は野球部の練習もかなりタフになってきていると聞いていた。

 家と学校を往復するだけの生活、というヤツだろうか。

 ――その点については、ボクもあまり他人のことは言えないかもしれないけれど。


「むしろ、吹部が珍しいんじゃない? しかも男女いっしょでしょ?」


「え、そうなん?」


「むしろ祐樹、知らなかったの?」


「おお」


 玲音はため息だけを返した。

 何かを諦めたらしい。


「良いなぁ。こっちなんて間違ってもマネージャーといっしょに遊ぶとか無いわ」


 ――良いなぁ、って祐樹(オマエ)


 眉間にしわが出来そうになるのを、何とか我慢する。

 疲れ目アピールをするようにまぶたの上の方を押さえるようなポーズで、こっそりとマッサージをしてみた。


「まぁ、ウチのクラスには言い出しっぺというか、仕切り屋が居てくれてるからな。玲音が知ってて祐樹が知らないのも無理はないな」


「あはは、たしかに」


 きっと玲音の脳裏にはその『言い出しっぺ兼仕切り屋』の顔と声が思い浮かんでいるはずだ。

 顔を見れば簡単に解る。


「じゃあ、とりあえずおふたりさん」


「ん?」


「行きましょう」


「どこに?」


「ついてくりゃわかる」


 説明するのもちょっと面倒。

 実際に見てもらった方が早い。








 改札から地下街を通り過ぎ、辿り着いたのは駅直結の百貨店。

 その地下。いわゆるデパ地下。

 しょっちゅう利用するほどの余裕は無いけれど、たまに足を運ぶこともある。


 入り口付近にある荷物台。

 その傍らにあるパンフレットを3部いただいて、ひとつずつ手渡す。

 思いっきり突き出したのでふたりは一瞬面食らったようだが、理解は早かった。


「なるほどなー」


「あ、これ美味しそう」


 祐樹は感心したように表紙を眺めている。

 玲音は早速ぱらぱらのページをめくりながら吟味を始めた。

 このままでは通路の妨げになりそうだったので、ふたりをそっと端の方へと寄せておく。


「いろんなところのオススメがそれには載ってるから、あとは好みに合わせるとか、自分の予算に合わせるとか。いろいろ方法はあると思うから、君たち次第。……ほら、部活の道具も同じだろ、たぶん」


「なるほどなぁ」


「慣れてるなぁ」


「見に来る用事があるから知ってるってだけだ」


 何だってどいつもこいつも、ヒトを(こな)れたヤツ扱いするのか。


「スーパーとかよりはもちろんいろいろいあるけど、……値段も結構だね」


「まぁ、そりゃあねえ」


 ここは百貨店である。

 高校生男子が手を出せる範囲なんて高が知れている。

 ――だけど、ムダに嘆く事なかれ。


「だったら、そのパンフの後ろ側をどーぞ」


「……おお」


 ちょっとお手頃な、『学生さんでもご安心を』とアピールをしているようなリストが並んでいる。


「たしかにこの辺なら……」


「でしょ?」


「さすが」


「だから、よしなさいっての」


 ――玲音、君は解っててやってるね?


 そんなことを視線だけで伝えようとしてみると、にんまりとした笑顔が返ってきた。

 ――間違いない、彼は理解している。

 そして、ボクのリアクションを楽しんでいる。


 というか、さっきから祐樹が静かなのが気になった。


「……おっと」


「わ。わりと真剣」


「……んぁ? ああ、ごめんごめん。何かあった?」


「いや、別に」


 そこまでガチに読み込もうとするとは思っていなかったから、少し驚いただけだ。


 いろいろと違う感情も生まれ落ちてきそうだったが、何とか我慢して、そのままデパ地下の暖房の風に散らしてしまう。


「ちなみに、予算は?」


「あんまりよくわかんなかったけど、とりあえず2000円くらい」


「僕は2500円」


「いや、上出来」


 むしろ、予想外。

 ギリギリお札が出てくるくらいかと思っていた。

 そりゃあ上を見てしまえばキリは無い。

 バレンタインデーの時なんて、その傾向が顕著だ。

 プラリネが10も入らないようなモノが危うく10,000円を超えてしまいそうな場合もある。

 ホワイトデーはそもそものターゲットがその手の物に疎い人を含めているため、先月の催事に比べれば控えめだった。


「ちょっとお高いモノっていうか、イイヤツは上の方の催事場メインでやってる。今、祐樹が見てたようなモノは地下の方にあるよ」


「だからここで話をしたってことなんだ」


「そういうこと」


 納得いただけたらしい。


「じゃあ、見に行くぞー。早くしないともっと混んでくる」


「あれ? ミズキもそれ持つの?」


「どれ? ……あ、コレ?」


 行こうかと思ったところで足止めをされる。

 祐樹は、ボクの手の中に1部だけ残っていたパンフレットを指差す。

 変なところでめざといヤツだ。


「これは説明のために」


「あれ? もしかして、やっぱり、誰か渡す宛てがあるってコト?」


 そして、玲音のイジりが飛んできた。





ここまでお読みいただきましてありがとうございます。


いっそのこと、口に出して言ってしまえば、楽になるとも思うんですけどね。

それを知らない側からすれば、まぁ、そうなりますよね、という話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ