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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (2) / Soir Sonnet〜  作者: 御子柴 流歌
2. 黄昏ロマンス

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2-1. 三月のトラブル


 雪国の街である星宮(ほしのみや)市。

 その街のやや北寄り、比較的静かな住宅街の中に位置する月雁(つきかり)高校。

 新しい校舎が落成してからはまだ日が浅いこともあり、防寒設備に関しては事欠かない。

 たとえば廊下の窓もそうだ。

 雪国の定番である二重構造。

 サッシも分厚い。

 担任教師に話を聞けば、以前の校舎の廊下は隙間風のオンパレードで、体育館付近の渡り廊下に至っては雪が吹き込んでくるくらいだったそうだ。


 ――しかし、である。


「寒いモンは寒いんだよね」


「そうそう」


 三月も中旬と呼ばれる頃合いになったが、ここにきてまかさの寒の戻りが発生。

 外では季節外れの粉雪だ。

 もう少しで吹雪と言われても仕方ないくらいの降り方だった。


「それにしても、瑞希(みずき)が昼に購買って珍しいよね」


「まぁねえ……」


 今は昼休み。

 同じクラスの高畠(たかばたけ)玲音(れお)といっしょに階段を降りている真っ最中。

 目的地は校舎中央付近1階の購買。

 ボクの目的は飲み物を買うためだった。


 ここ最近は家の近くのスーパーでまとめ買いをしたペットボトルのお茶を必ずカバンに入れてきていたのだけど、今日は少し起きるのが遅く慌てて準備をしたせいで持ってくるのを忘れてしまった。

 どうにかなるかと思ったけれどもそんな予想は甘かった。

 暖房が効いている教室で飲み物なしで過ごすなんて、やはり無茶だった。


「もう少し余裕をもって起きないとダメだなぁ……」


「何時起き?」


「今日は、6時半くらいだったかな」


「……僕、その時間、まだ寝てたんだけど」


 玲音がため息交じりに苦笑いを浮かべた。

 けれど、それはやっぱり人それぞれだ。

 ボクの場合は家が星宮市の南寄りに在るし、途中地下鉄の乗り換えを挟んだりするので、自然と玲音よりは登下校に時間が必要だった。


 購買は、いくらか人が少ないような気がした。

 何故かと一瞬だけ考えたがすぐに自己完結。

 そりゃあそうだ。

 3年生の先輩方が卒業して、今学校には2学年分の生徒しかいない。

 人口密度が下がるのは当然だった。


 昼ご飯選びに向かった玲音と健闘を誓う意味合いを込めたグータッチをしつつ、ボクは裏手にある自販機へ向かう。

 とりあえずランチタイムを乗り切れるくらいのサイズでいいので、適当に何か――――。


「あ、ミズキだ!」


 大声が鼓膜を突き破ろうかという勢いで飛び込んでくる。

 さらに、声と同時に、その主までいっしょに飛び込んできた。


「……何だ。誰かと思えば」


 声の主の名前は水戸(みと)祐樹(ゆうき)

 1年2組、野球部所属。

 同じく野球部所属の玲音を通じて知り合い、わりと仲は良い――はずだ。


 そして、彼こそが、ボクの幼なじみである御薗(みその)聖歌(せいか)の彼氏だった。


 あえて、胸の痛みには気が付かないフリをしておく。


「何だ、ってなんだよー」


「いやいや。いきなり名前叫ばれて飛びつかれたらそうなるでしょ」


 ほら、どう見たって周囲の視線を独り占めだ。

 勘弁してほしい。


「アレ? 祐樹じゃん、どしたの?」


 ため息を吐く直前、玲音が来てくれた。

 助かる。

 本当に彼は出来る人だ。


「良いの買えた?」


 敢えて祐樹を無視して、玲音の方に話を振ってみることにした。


「うん、見てこれ」


「……おお」


「この時期は買える確率高いっていうけど、マジだね」


「あー、それ聞いたことあるわ」


 ハムカツサンドにたまごサンド。

 さらには焼きそばパン。

 玲音も含めた購買ヘビーユーザーから話には聞いている『コレを買えたらスゴい』リストに含まれている商品だった。

 思わず唸ってしまう。

 1年生の教室は購買から遠いところが多い。

 誤差の範囲だとは思うけれど、それでも1組や9組など校舎の端の方だと微妙に格差があったりする。


「あ、レオも居るんじゃん!」


「祐樹か。誰かと思えば」


 へこたれない祐樹は、ボクと玲音の会話に潜り込んできた。


「玲音、わりと気付いてたでしょ?」


「まぁね」


 あそこまで人目を引いたところに話しかけるのは、わりと根性が必要だったりする。

 そしてもちろん、他人のフリをするという作戦も選択肢には入ってくるものだ。


「で? 何か僕に用事?」


「レオにっていうよりは、ふたりにだな」


「ん?」


 ボクまで対象になるということは、部活の話では無さそうだ。

 またノートを見せてくれとか、コピーを取らせてくれとか、そういう話だろうか。

 でも、その可能性は低いだろう。

 次の模試は来月アタマの頃合い。

 ——それに、言っちゃ悪いが祐樹のことだ、良くても来月になるまでそんな話はしてこないだろうし、何なら直前まで棚上げだろう。


 そうなると、一体?


「相談が、ある!」


「だが断るっ!」


「ぶっ!」


「なんで!?」


 ノータイムで拒否すると、玲音は盛大に噴き出すし、祐樹は会計待ちの列を少し振り向かせるくらいで驚いた。


「……いや、まぁ、ノリってやつだ」


「心臓に悪いっての」


「イイ予感がしなかったからだ。仕方ない」


 習性みたいな雰囲気だった。


「納得いかないけどなぁ」


「相談事、聞いてやらんけど。それでもいいなら」


「すみませんごめんなさいなんでもないですお願いします」


 矢継ぎ早に謝罪と懇願を投げつけてくる祐樹。


「……いいけどさ。で? おなか減ってるから手短にね」


「いや、そうしたいのは山々なんだけど、ちょっとここでは……」


 何故かもじもじとする祐樹。

 ——ああ、これは本当に。


「余計に嫌な予感しかしないんだけど。わりとマジで」


 こういう言い方をしちゃいけないのかもしれないけれど、男子ならもう少しビシッと言ってほしい。

 自分のことをわりと棚上げしたのは内緒だ。

 面倒なことこの上ないが、これ以上ゴネられるのもそれはそれで困る。何なら迷惑だった。

 不承不承という態度はあまり隠さないようにして、人並みから少し外れたところへ移動した。





「はい、どーぞ」


「手短にね」


 ボクと玲音のふたりで廊下の壁にもたれて、祐樹を見下ろすように促す。

 身重差の都合上、こうなってしまうのは仕方がない。

 これで壁側に祐樹が立っていたら、傍目に見ればカツアゲだった。


 大きめにひとつ咳払いをした祐樹は、いつもよりは重そうに口を開いた。


「……ほら、そろそろさ、ホワイトデーじゃん」


「おつかれさまでしたー」


 ほら、来た。

 やっぱりそうなると思った。

 気が重くなる。それでも軽いノリで返せただけ今までの自分よりはマシだと思った。

 そして不本意なことに、嫌な予感の的中率の高さは今日もきっちり上限値をキープ出来てしまった。


 もう面倒だ。

 捨て台詞のようなモノを残して、さっさと自分の教室へ——。


「ちょ、ちょっと待って! 結構マジの相談!」


「……そりゃあそうだろうけどさ」


 そんな上っ面の扱いだったら。



 ——。


 ————。



 ————だったら、何なんだ?




「ミズキ?」


「……ああ、ごめん。何でもない」


 祐樹に問われて我に返る。

 何となくくすぶっているようなところに、思い切り水を掛けてもらえたような感じだった。


「それで? ホワイトデーが、何だって?」


「何を渡したらいいのか、って」


 ——知るかよ。


 思わず口からそんな言葉が出そうになる。

 でも、これではあまりにもストレートすぎる。

 ふと隣を見て、冷静になる。

 横に立っているのは、高畠玲音。


「だったら、玲音に訊け。こっちに訊くな。カノジョ持ち同士でやっててくれ」


 吐き捨てるように言う。

 回りくどいが、最初に感じたことと大体同じ事は言えたと思う。

 ——何となく周囲のざわつきが大きくなった気がするが、これは気のせいだろう。


「いやさ。なんつーか、ミズキって慣れてそうだし、詳しそうだし」


「何でだよ、どういうイメージだよ」


「ああ、それは僕も理解できるなぁ」


「だろ! レオもそう思うだろ!」


 突然、玲音に梯子を外されてしまった。

 意外に頼りにならない。

 思わずため息をついてしまう。


 正直、祐樹に訊きたいことはある。

 だけどそれは、今このタイミングで訊くべきでは無いとも思っていた。


 ——『お前、幼なじみからのバレンタインデーに、お返しはしてなかったのかよ』だなんて、訊けるわけがなかった。







ここまでお読みいただきましてありがとうございます。


……第2部、いきなりめんどくさい展開です。

というわけで、ホワイトデーのお話と、月雁高校では年度末に開催される冬季体育祭にまつわるお話になります。

恋愛パートと青春パート的な。

そんな感じです。

よろしくです。


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