偏差値30の俺は賢者を目指すことにしました
偏差値は30。運動もできない。趣味は妄想とゲーム。
賢太郎なんて名付けられてるが賢さの欠片もない。
そもそも賢いってなんだ。偏差値が高くてもバカはいっぱいいる。
この哲学的な問題に取り込む俺こそが賢者に相応しいのではないか。
そう考えた俺は賢者を目指すべく、まずは魔法使いになることにした。
魔法使いと僧侶を経験すると賢者になれる。俺がプレイしたRPGではそうだった。
男は30歳まで貞操を守れば魔法使いになると言われている。
今までゲームで得た知識で妄想をしてきたが、それはもう卒業だ。
俺はモテないんじゃない。目標のために女子と距離を置いてるだけなのだ。
「ねえねえ、賢太郎くん。もしかしてゴンスト好きなの?」
「ひゃ……しゅ、しゅき」
突然下の名前で慣れ慣れしく話し掛けてきたのはこのクラスのビッチ・狩野さんだ。
体のラインがわかりにくい制服を着ているにも関わらず、その胸部にはしっかりと膨らみが存在している。
黒くて長い髪からは理性を飛ばすような甘い香りが漂う。
「突然ごめんね。ペンケースにスライムのストラップが付いてたから」
「こ、こここ、これ……?」
2学期も半ばのこのタイミングで突然話し掛けてきた目的……きっと俺が魔法使いになるのを妨害する気だ!
「あ、チャイム鳴っちゃった。またあとでお話ししようね」
「う、うん」
そう言って立ち去る狩野さんの後ろ姿に思わず見惚れてしまう。
黒髪で隠されたお尻に妄想をかき立てられ……って、ダメ! 魔法使いに女は不要。
俺が人生を逆転するには賢者しかないんだ!
「聞いたよ。ゴンスト好きなんだって?」
次の休み時間に声を掛けてきたのはロリビッチこと小佐内さん。
狩野さんとは対照的に胸の膨らみはなく、そのくせボタンを外しているものだから服の隙間から水色のブラがチラリと見えてしまう。
「あ、うん……しゅきだよ」
「しゅきだって。かーわいー」
ブラが気になるのと緊張でまたしても噛んでしまう。小佐内さんはそれを可愛いと言うけどバカにしてるに違いない。
「またあとでゆっくり話そ。じゃーね」
ロリビッチはひとまず退散してくれた。
これがゲームなら二人の女の子の間で気持ちが揺れ動くんだろう。
だけどこれは現実だ。魔法使い、そして賢者になるために俺は負けない!
賢い者はこれが罠だってわかるんだ!