第八話 作戦と進行
……またなのか。
金髪の少年が悩んでるようだった。テーブルを挟んで彼の向かい側に座るドレス姿の少女と彼は二人きりでいた。
「あのさぁ。何で何度もここに来るの?」
怒り気味に少年が尋ねる。
「城より落ち着くからな。それに、君達とゆっくり話せる」
「そうかもしれないけどさぁ、リトニスは女王様なんだから城にいた方がいいよ」
『女王様』と言われてか、むっとした表情で少年に反論するリトニス。
「君は私が嫌いなのか?ロゼ」
「そうじゃなくて……」
はぁ、とため息をついてロゼは言う。
「騎士として、君を守るものとして、何かあってからじゃ遅いから注意してるんじゃないか。それに、国民からしたらおかしい事として噂になりかねない。その他、理由はあるけどね」
……ヴェルヴさんも大変そうだな。
ロゼはいくつかの理由を言うと、リトニスのお世話役の老騎士ヴェルヴの気持ちがわかった気がした。
「……とにかく、竜退治まで時間がない。ミソラにも教えないといけないことがいくつかあるのに……」
ロゼがぼそぼそと独り言を呟いていると、黒いショートヘアの少女と、金髪のミディアムヘアの少女が同時に階段を降りてきた。
「おはよう……ございます、兄さん……」
「おはよう、イヴ、ミソラ」
朝に弱いからか、脳が働いていない様子の美空。
弱々しく眠そうな声でイヴが問う。
「何でリトニスさんがここに……?」
「落ち着く上に僕達に話があるんだと」
美空は今にも眠りに付きそうな頭を無理矢理働かせて、イヴはコーヒーを片手に、ロゼは頬杖をついてリトニスの話を聞く。
「作戦?」
「ああ。参考になるかは分からんが、私の考えを聞いてくれ」
リトニスは城で色々と考えていた。ワイバーンについての資料を探したりもした。
「ワイバーン討伐にあたり、先に羽を落とし、後から足を攻撃して相手のバランスを崩す。その後、核を狙う、というのが私の考えだがどう思う?」
リトニスにロゼが質問する。
「何で羽から?」
「ワイバーンは強風を生むことがあるらしい。それで部隊が一掃されては困る。それに、逃げ道をなくすことができる」
理由を聞いたイヴが、リトニスのさっきの意見の感想を呟く。
「確かに、羽からなら利益はありますが、バランスを崩してから羽を落とした方が狙いやすくていいのでは?」
「それだと先に逃げられる可能性があるよ」
イヴの意見の穴を突いたロゼ。
「なら、目を先に攻めるのはどうかな?これなら、回りも見えなくなるし」
「ワイバーンの気を引くことができるのかな?それに、剣が届かない」
美空の考えの問題点を指摘するロゼ。
「無理ではなさそうだけどね」
と一言付け加えた。
「とりあえず、様子を見て作戦を変えよう」
リトニスがまとめる。
「まぁ、最初はリトニスの作戦で進めることになるけど、羽を落としても風を起こすようなら、目か足を攻めるって感じになると思うよ」
リトニスの伝えたかったことをロゼが簡単にしてまとめた。
―――ワイバーン討伐戦まであと一日―――